2026年9月28日公開
日本公認会計士協会は、2023年11月20日に業種別委員会研究資料第2号「Web3.0関連企業における監査受嘱上の課題に関する研究資料」(以下「本研究資料」という。)を公表した。本研究資料は、はじめに研究資料を公表する経緯の説明の後、大きく2部構成になっている。第1部では、監査受嘱に際しての留意事項及び会計処理等の判断が難しいと考えられているトークン発行に係る監査上の課題について言及している。第2部では、その他の監査上の課題について広く記載するため、トークン保有上の課題、NFT(Non-Fungible Token)及びSAFT(Simple Agreement for Future Token)等に関連する論点並びにその他の論点について、事例とともに言及している。第2部ではまた、ブロックチェーンの技術的な仕組み及び関連する固有リスクを紹介し、関連する内部統制や監査手続実施に当たっての留意事項を紹介している。
その後、我が国では、電子決済手段・暗号資産サービス仲介業(以下、総称して「暗号資産仲介業等」という。)の創設や、投資事業有限責任組合契約に関する法律(LPS法)の改正等、関連制度の整備が相次いでいる。さらに、上場企業グループによるIEO(Initial Exchange Offering)1を通じた資金調達の実施、バリデータ運用/ステーキング等のWeb3.0特有のビジネスの拡大、電子決済手段等取引業者が電子決済手段の取扱いを開始する動き、ブロックチェーン技術を活用し、現実世界の資産や権利をトークン化するRWAトークンの活用事例の増加など、Web3.0ビジネスは一層多様化している。これらの環境変化を踏まえ、日本公認会計士協会は、最近の法改正等の動向及び新たなビジネスに関し会計・監査上の論点となり得る事項の解説を拡充するため、2026年6月12日に本研究資料を改正し、以下の項目が追加され、それ以外の項目でも一部記載を拡充した。
改正により追加・拡充された事項に下線を引いて示しながら、本研究資料の概要を2回に分けて解説する。第1回の本稿では、本研究資料の第1部に加え第2部のバリデート/ステーキングの箇所までを解説する。第2回では第2部の残りの箇所を解説する。
本研究資料の対象であるWeb3.0ビジネスに明確な定義はないが、本研究資料では、Web3.0ビジネスの特徴について、パブリック型ブロックチェーンを基盤として、暗号資産やNFT(Non-Fungible Token)などのトークン(電子的な記録・記号)を、金銭的なインセンティブ、財又はサービスの利用の対価、財産権を表章する手段として活用するビジネスである点に言及している。
トークンの類型に関して、我が国における法律上の定義との関係では次頁図表1のように整理することができる。
Web3.0関連企業の監査受嘱が進まないという声を受け、日本公認会計士協会は、会員への実態調査を行い、Web3.0特有の監査上の課題を認識した。また、日本公認会計士協会は、「Web3.0関連企業の会計監査に関する勉強会」の一環で実施した企業等からのヒアリングを踏まえ、監査受嘱に当たり監査人がどのような観点で受嘱を検討しているかについて、事業者とのコミュニケーションが不足しているのではないかという課題を認識した。そのため、日本公認会計士協会は、本研究資料の公表を通じて、Web3.0企業に特有の監査上の課題を明らかにすることで、監査人が監査受嘱を検討する上での一助にするとともに、監査人が経営者とのコミュニケーションに本研究資料を利用することで事業者との対話を深め、事業者と監査人の相互理解が促進されることを期待している。
本研究資料は、監査受嘱に際しての留意事項として、Web3.0企業に特有のものを以下のとおり示している。これらの事項は、監査を実施する際にも留意すべき事項と考えられる。
Web3.0ビジネスは、比較的新しいビジネスで様々な形態が存在するため、適用される法規制が明確ではない場合5がある。そのため、監査人は、監査受嘱に当たり、経営者が、適切な法律専門家等の起用を通じて、関連する法規制を把握し、法規制を遵守する体制を構築しているか、また、実際に遵守しているか評価する必要がある。
また、トークンの性質上、日本国外の取引先とのトークンの売買やトークンでの決済等のクロスボーダー取引(国際間取引)が容易に実行可能である。そのため、監査人は、クロスボーダー取引の重要性が高い状況などにおいて、トークンの発行者が、国内だけでなく諸外国の法規制を遵守しているか、評価を行う必要がある点に留意する。
さらに、トークンが資金決済法の暗号資産に該当する場合、当該トークンを業として売却又は他の暗号資産と交換する行為は、暗号資産交換業に該当し、暗号資産交換業者としての規制対応が必要になる(金融庁事務ガイドライン16.暗号資産交換業者関係Ⅱ―2-2-8-1)。暗号資産交換業者は、テロ資金供与やマネー・ローンダリングといった組織犯罪等への利用を防止するための体制整備等も要求されることになる。また、一般社団法人日本暗号資産等取引業協会の「新規暗号資産の販売に関する規則」は、調達した資金の使途の透明性を確保する観点等から、トークン発行時及び発行後の継続的な情報開示、調達資金の適切な管理等の規制をトークンの発行者に課している。
なお、日本においては、IEOという形態が利用されるケースがあるが、この制度では、トークンの発行者は、暗号資産交換業者にトークンの販売を委託することになる。そのため、トークンの発行者の監査人は、監査受嘱に当たっては、トークンの販売者である暗号資産交換業者が事務ガイドラインや「新規暗号資産の販売に関する規則」等を遵守しているかどうか理解する必要がある点に留意する。
Web3.0ビジネスに関連するトークンの発行や保有に関する会計処理を行う場合に困難性を伴うことがある。例えば、実務対応報告第38号においては、資金決済法上の暗号資産の発行の会計処理が定められていない(第3項)。適用する会計基準の定めがない場合には、企業は、取引の経済的実態に応じて会計処理を決定する必要がある。そのため、企業は、適切な法律専門家や会計専門家を活用して、トークンの発行者や保有者(一次所有者、二次流通以降の購入者)など関係者の権利及び義務をホワイトペーパー、発行者と保有者の契約書、トークン利用規約等で明確化し、当該権利及び義務は法的に強制力があるのかどうか評価し、適切に会計処理を実施する体制を整備する必要がある。監査人は、かかる体制が整備されているかどうか評価する必要がある。
監査人は、適正な財務報告を実施するための情報システムを含めた内部統制の整備及び運用、適切な内部監査の体制等が整備されていることを確認する必要がある。加えて、監査人は、企業のサイバー・セキュリティ管理体制、秘密鍵の管理体制、ブロックチェーンの記録を適切に収集し、トークンの取引や残高を記録する体制などを評価し、監査の実施可能性を検討する必要がある。また、企業が、例えば、システム開発や運用のため、あるいは、カストディアンとして、外部委託先を利用する場合にも、監査人は、企業の外部委託先管理体制を評価し、監査の実施可能性を検討する必要がある。
賭博性のある事業や公序良俗に反する可能性がある事業、違法行為ではないが何らかの法令・規制逃れを目的として設計している場合、その他経営者の誠実性に疑念が抱かれる場合には、監査の受嘱が困難になる。
Web3.0ビジネス企業の監査においては、上述のような課題の検討に時間を要することが想定され、監査工数の見積りに当たって十分な時間の確保が必要となる。監査人は、企業の理解を得るために必要な監査工数についての丁寧な説明とコミュニケーションを実施することが望ましい。
上述のとおり、Web3.0企業の監査受嘱を難しくしている理由の一つにトークン発行に係る会計処理の判断の困難さが挙げられる。そのため、本研究資料では、2022年3月15日にASBJから公表された「資金決済法上の暗号資産又は金融商品取引法上の電子記録移転権利に該当するICO6トークンの発行及び保有に係る会計処理に関する論点の整理」(以下「論点整理」という。)において識別された論点並びに権利及び義務の特定に関する論点を示している。
論点整理においては、ICOトークンの会計処理を検討するに当たり、発行者が何ら義務を負担していない場合と発行者が何らかの義務を負担している場合に分類した上で、それぞれの会計処理の考え方を示している(第29項)。
① ICOトークンの発行者が何ら義務を負担していない場合の会計処理
ICOトークンの発行者が何ら義務を負担していない場合の会計処理については、認識すべき負債は存在せず、対価の受領時にその全額を利益に計上するという考え方が示されている(第31項)。
② ICOトークンの発行者が財又はサービスを提供する義務を負担している場合の会計処理
ICOトークンの発行者が財又はサービスを提供する義務を負担している場合の会計処理については、ICOトークンの発行取引の実態をどのように捉えるのかが論点であるとしており、(a)契約自由の原則の下で自発的に発生した独立第三者間取引においては経済的に等価交換が成立しているものとして取り扱うとする考え方(第34項)と、(b)提供する財又はサービスの価値が調達した資金の額に比して著しく僅少であるケースの存在をICOトークンの発行取引の実態を示す特徴の一つとして捉え、当該取引を会計上適切に描写するため、等価交換が常に成立しているものとしては取り扱わないとする考え方(第35項)が示されている。
(a)の考え方においては、例えば現金など客観的に信頼性をもって測定可能なものを対価としてICOトークンを発行する場合、発行者が負担する義務に係る負債を対価の時価で測定することになり、その結果、発行時において差額としての利益(又は損失)が生じることはない(第34項)。
(b)の考え方においては、契約によって生じた権利及び義務をそれぞれ独立に時価で評価し、それぞれの評価額に差がある場合に当該差額を発行時に利益(又は損失)として計上することになる(第35項)。
また、論点整理に対して各種団体及び個人から寄せられたコメントが公表されているが、発行者が何らかの義務を負担している場合の会計処理については、様々な意見が記載され、(a)の考え方を支持する意見、(b)の考え方を支持する意見の双方があった。また、(a)と(b)の考え方を取引の実態に応じて適用すべきとの意見や、原則として(a)の考え方を支持しながらも(b)の考え方で会計処理することが適切なケースがあるかどうかについて分析が必要との意見があった。
上述の(a)及び(b)のいずれの考え方を採用するにしても、会計処理を検討するに当たっては、発行者と保有者の権利及び義務(関連する法令の適用を含む。)を特定する必要がある。
この点、資金決済法上の暗号資産に該当するICOトークンの発行においては、発行者がトークンの性質やプロジェクトの内容の詳細を説明することを目的としたホワイトペーパーが公表される事例が多いが、様々な免責事項が記載される事例がある。そのため、ホワイトペーパーの法的な強制力の問題から、発行者と保有者の権利及び義務の特定が難しいという実務上の課題がある。
発行者と保有者の権利及び義務の特定に当たっては、ホワイトペーパーの法的強制力の評価及びホワイトペーパー以外に発行者や保有者の権利及び義務を定める契約の識別等を実施した上で、例えば、以下の事項を明確化する必要がある。
監査人は、識別された権利及び義務がホワイトペーパーやその他の契約及び法律専門家による見解書などによって裏付けられることや、識別された権利及び義務に基づく経営者による会計判断が適切であることを検討する。また、取引段階から会計処理に必要な権利義務関係を明確にすることを可能とする内部管理体制の整備及び内部統制の構築がなされていることを確認する。
近年、国内において上場企業グループによる資金決済法上の暗号資産に該当するトークンの発行事例が見受けられ、会計処理及び監査上の主要な検討事項の記載に関する事例が提供されている。
ゲーム会社である株式会社コロプラの100%子会社である株式会社Brilliantcryptoはゲーム内で利用することができる暗号資産を2024年に発行した。同社の有価証券報告書の収益認識関係の注記においては、IEOによる調達資金の会計処理において、関連する会計基準等の定めが明らかでないため、企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」(以下「収益認識会計基準」という。)に準じて検討することで、IEOによる調達資金を前受金に計上し、ゲーム内における暗号資産の利用に応じて収益に振り替えている点に言及されている。
情報通信業である株式会社メタップスは、自社グループが提供するデジタルサービスの利用において割引を受ける権利を有する暗号資産を2017年に発行した。IFRS適用会社である同社の有価証券報告書の重要な会計方針の注記並びに重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断に関する注記において、暗号資産の発行に関連する開示を行っている。これらの注記において、発行したトークンの会計方針の検討のために、ホワイトペーパーに記載されているトークン発行者やトークン保有者の権利と義務に基づいてICOの会計処理を行っている点を読み取ることができる。すなわち、まず、IAS第32号「金融商品:表示」及びIFRS第9号「金融商品」に基づき、発行したトークンが金融負債の定義及び資本性金融商品の定義を充たすのか検討を行っている。そして、金融負債でも資本性金融商品でもないと判断した後に、同社グループはIFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」を適用することで、発行したトークンの対価受領時に契約負債として認識し、ホワイトペーパーに記載されている義務の履行に応じて関連する収益を計上している。また、権利と義務の検討の前提として、適用される法規制の理解及び評価の必要性を読み取ることができる。
株式会社コロプラの有価証券報告書の監査上の主要な検討事項において、IEOに関係した会計方針の妥当性を監査上の主要な検討事項とした理由として、「ホワイトペーパーにトークンセールの概要や資金使途が記載されているものの、個別性が強く、当該会計方針の決定については、経営者による経済実態と会計方針の整合に関する重要な判断を伴う」ことが挙げられている。また、会計方針の妥当性を検討するために実際に閲覧した具体的な証憑として、発行会社の会議体議事録、トークンの利用規約、ホワイトペーパー及び暗号資産取引所との販売委託契約書等が挙げられている点は、監査人がどのような監査証拠を入手すべきか検討する際の参考となると考えられる。また、法律に関する内部専門家を利用し、受領した金銭に対応する貸方科目の性質及び履行義務について検討した旨が記載されている。経営者の契約及び法令の解釈の検討に当たり、監査人自身も法律を専門とした内部専門家を利用する必要がある可能性がある点については留意すべきと考えられる。
資金決済法上の暗号資産の保有者の会計処理及び開示については、実務対応報告第38号に定められている。しかし、自己の発行した暗号資産の保有や資金決済法上の暗号資産以外のトークン(金融商品取引業等に関する内閣府令に定める電子記録移転有価証券表示権利等及び改正資金決済法上の電子決済手段を除く。)については、会計基準等の定めが明らかでなく、経済的実態等に応じて既存の会計基準等を参考に、企業が会計処理を決定することになる。ここでも、トークン発行における課題と同様に、ホワイトペーパーの法的有効性の解釈や記載内容等に基づいて私法上の権利等を整理することが難しいという課題がある。法的権利等の権利についてはJCBAより公表されている「RWA(現実資産等)トークンの利活用に関するガイドライン」が参考になる。現状発行されている多くのトークンは、何等かの現実資産や無形資産(以下「現実資産等」という。)に係る財産権を表章していることがあり、該当する法的形態を参考として会計処理を検討することが有用となる。また、同ガイドラインでは、次頁の図表4のとおり、利益の分配の有無、決済手段等の経済的機能の有無などの性質に基づき、適用され得る金融規制についても示されている。
① 論点整理の考え方及び寄せられたコメント
自己が発行した資金決済法上の暗号資産の保有に関する会計処理は、上述の論点整理の第38項及び第39項において、自己の発行したICOトークンを自己に割り当てた場合及び第三者から取得した自己発行のICOトークンの会計処理の考え方を、以下のとおり紹介している。
論点整理に対しては、第三者から取得した自己発行トークンを再度売却した場合の取扱いなど、様々な論点に対するコメントが寄せられた。また、発行者が負う義務の性質や発行後に第三者から取得する目的などを踏まえて更なる分析が必要であるという意見もあった。
② 監査上の課題
トークンの発行時と同様に、監査人は、識別された保有者や発行者の権利及び義務が、ホワイトペーパーやその他の契約、法律専門家による見解書などによって裏付けられることや、識別された権利及び義務に基づく経営者による会計判断が適切であることを検討する。
また、監査人は、企業が発行したトークンを自己が保有していることに対して、自己で保有していることの理由を理解し、その理由が企業の事業戦略に従ったものであるかどうかを評価し、何らかの理由により、企業が意図しない保有が生じている場合には、監査上追加で識別すべきリスクがないか、監査計画に影響がないか検討する。
企業は、財又はサービスの対価として暗号資産を受領することがあり、例えば、以下のようなケースが考えられる。
収益認識会計基準は、資金決済法における定義を満たす暗号資産及び金融商品取引業等に関する内閣府令における定義を満たす電子記録移転有価証券表示権利等に関連する取引については、収益認識会計基準の適用範囲から除外しているが(収益認識会計基準第3項(7)、第108-2項)、暗号資産そのものの売買ではなく、財又はサービスの対価として暗号資産を受け取る場合は、当該収益について収益認識会計基準に従って検討が行われている実務がある。
この場合、収益認識会計基準に定める5つのステップ(契約の識別、履行義務の識別、取引価格の算定、履行義務への取引価格の配分、履行義務の充足による収益の認識)に従って会計処理を検討するに当たり、監査人は、具体的な履行義務の識別、いつの時点で収益を認識するのか、いつの時点の市場価格で収益を測定するのか等の点に関して、契約や事実関係に基づく整理を企業に説明を求めることになる。
なお、収益認識会計基準第59項に基づき、現金以外の対価を時価により算定することから、実務対応報告第38号第5項及び第6項に記載のとおり、対価として受領する暗号資産に活発な市場が存在する場合には、収益認識時の暗号資産の市場価格に基づく価額より取引価格を算定している実務がある。
他社発行の暗号資産を保有している場合、その暗号資産に活発な市場がある場合は市場価格に基づく評価となり、活発な市場がない場合は原則として取得原価で評価することになる(実務対応報告第38号第5項及び第6項)。活発な市場が存在する場合とは、「継続的に価格情報が提供される程度に十分な数量及び頻度で取引が行われている場合」とされている(実務対応報告第38号第8項)。活発な市場が存在するか否かは、実態に基づき判断するが、例えば、合理的な範囲内で入手できる複数の価格情報が著しく異なっていると認められる場合や、売手と買手の希望する価格差が著しく大きい場合には、通常、市場は活発ではないと判断される(実務対応報告第38号第47項)。活発な市場の検討に当たっては、例えば、DEX(Decentralized Exchange:分散型取引所)が活発な市場であるかどうか留意が必要である。国税庁によるFAQ「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて」では、DEX等が活発な市場の要件を満たす可能性が示されているが、会計上及び監査上は、活発な市場か否かにつき、慎重な判断が必要となる。
なお、取引所によっては、外部の流動性プロバイダーやマーケットメイカーの関与により価格が形成されている場合があり、形式的な取引価格が独立第三者間の需給を必ずしも反映していない可能性がある。そのため、特定の取引所が提供する価格を時価評価の基礎とする場合には、その流動性や価格形成の合理性を踏まえ、活発な市場における価格として適切かを慎重に判断する必要がある。
活発な市場に関連して、例えば、以下の場合に、監査上の論点となる。
① 保有していた暗号資産が取引所に上場した場合又は販売所で販売され始めた場合
暗号資産が上場又は販売所で販売され始めた場合、市場価格に基づく評価を行った場合には、多額の評価益が出ることが想定され、活発な市場の有無について、会計上及び監査上慎重な判断が求められる。例えば、以下の点は判断要素として考えられる。
② 市場価格に基づく評価をしていた暗号資産について取引が縮小してきた場合
もともと活発な市場があると判断されていたものの、取引の数量や頻度の縮小によって売手と買手の希望する価格差の広がりが識別された場合に、活発な市場が認められないとして、市場価格に基づく評価から取得原価に基づく評価に会計処理を移行する事例がある。
企業は暗号資産取引所に上場していない、例えば、以下のようなトークンを取得することがある。
監査人は、トークンが資金決済法に規定する暗号資産に該当するかどうかについて、企業による検討を確認する。暗号資産該当性は、法律の解釈を伴う場合もあるため、監査人は、法律専門家による見解書の入手やその検討を行うことも考えられる。監査人は、企業がトークンを取得する目的や合理性も併せて検討する。
トークンの期末における評価方法については、当該トークンに活発な市場が存在するか否かの判断が重要となり、前述の「(3)活発な市場の有無の判断」における考え方が参照される。これを踏まえ、取得価額をもって貸借対照表価額とする実務や備忘価額まで減額する実務が見られる。
また、国内では未上場であるものの、海外で発行・流通しているトークン等を取得するケースも考えられる。この場合においても、当該トークンの流通状況を踏まえ、活発な市場が存在するか否かについて検討が行われる。
本稿執筆時点ではNFTに関する固有の法規制はなく、トークンがそれぞれに固有の権利を表章し非代替的な性質を持ち、金融商品取引法や資金決済法等の既存の金融規制が適用されないトークンが一般的にNFTと認識されている。法規制上の定義はなく、会計基準等の明確な定めはないことから、NFTが表章する権利や発行者、一次保有者及び二次保有者などの取引当事者間の権利及び義務等の実態を踏まえ、既存の会計基準等に照らした検討を実施する必要がある。そのため、NFTがどのような権利を表章しているのか、取引当事者間でどのような権利及び義務があるのか等を利用規約や譲渡契約等で明確にすることが会計処理を行うために必要となる。
NFTの利用事例としては、例えば以下のようなものが挙げられる。
NFTは流通市場が多数存在しており、二次流通市場においてNFTが転々流通することが想定されることも特徴となっている。
① 自己発行NFTの一次流通
企業が発行したNFTを販売する会計処理の決定においては、収益認識会計基準の適用範囲となるかの検討が必要になる。NFTが金融商品取引法や資金決済法等の金融規制の適用を受けない場合、収益認識会計基準に従って処理される事例が見られる。
収益認識会計基準の適用範囲となった場合、履行義務の識別が課題となる事例が見受けられる。例えば、NFT の保有者に対してトークンの受け渡し後においても様々な権利(例えば、NFT保有者にイベントへの入場権利を与えるケース)を付している事例がある。このように顧客に約束した財又はサービスが複数ある場合には、企業は、別個の財又はサービスかどうかを評価し、別個であれば、それぞれの履行義務を識別し、取引価格の配分及びそれぞれの履行義務の充足する時点又は期間の検討を行うことになる。
企業がこの検討を適切に行うための前提として、発行者及び保有者の権利及び義務が利用規約や譲渡契約等において具体的に明記されることが必要となる。
なお、JCBAより公表されている前述の「RWA(現実資産等)トークンの利活用に関するガイドライン」において、権利義務関係を明確にするという観点から、一定のユースケースを前提とする利用規約に盛り込むべき事項を示した利用規約のひな形が公表されている。
② 二次流通ロイヤリティの収受を含むNFTの自己発行
NFTの二次流通市場で第三者間での売買が行われた際に、売買代金の一定割合を発行者が受領する事例が見受けられる。このような二次流通ロイヤリティの会計処理に当たって、企業は、二次流通ロイヤリティは発行者のどのような財又はサービスの提供に基づいた対価なのか、誰から受領するものなのか(第三者間の売買における販売者から受領するものなのか、購入者から受領するものなのか)を利用規約や二次流通市場の販売サイトにおいて明確化することが必要となる。収益認識会計基準第127項に基づき、個々の契約の実態とそれに係る顧客の合理的な期待を分析することが必要な場合もある。
監査人は、二次流通ロイヤリティの裏付けとなる監査証拠の入手可能性に留意する必要がある。二次流通プラットフォーム上での第三者間のNFT売買に伴うNFTの受渡及び代金決済並びにNFTの発行者への二次流通手数料の支払いがブロックチェーン上に記録される場合がある。一方、二次流通プラットフォームの利用者がNFTを当該プラットフォームに預託し、オフチェーンでNFTの売買、受渡及び代金決済並びに二次流通手数料の支払いが行われる場合もある。このようにNFT関連取引の記録方法には様々なケースが存在することから、監査人は、発行者がNFTの出品を許可した二次流通プラットフォームそれぞれについて、取引の記録方法や入手可能な監査証拠を理解し、監査の実施可能性を検討することが必要となる。ブロックチェーン上の取引履歴だけでは二次流通ロイヤリティが第三者間の実在する売買取引に基づくものであることを裏付けることができない場合には、二次流通プラットフォーム上のデータベースに記録された取引履歴の入手が必要となる場合も想定される。
① 保有するNFTの法的性質に基づく会計上の取扱いの検討
他社の発行したNFTを保有する企業は、NFTが表章する権利及びNFTの保有目的を考慮して会計処理を検討することになると考えられる。企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」(以下「棚卸資産評価会計基準」という。)第3項の棚卸資産の定義に該当すると判断し棚卸資産として計上する事例と、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」第27条(無形固定資産の範囲)に列挙されたいずれかの項目の権利を表章する目的で保有するトークンと判断し、無形固定資産として計上する事例が見られる。そのため、会計処理の判断に当たりNFTがどのような権利を表章するものであるか、発行者との契約書等で明確にされていることが必要となる。
他社の発行したNFTを棚卸資産として計上した場合、期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額を貸借対照表価額とし、その差額は費用として処理される(棚卸資産評価会計基準第7項)。市場価格が観察できない時は、期末前後での販売実績に基づく価額等、合理的に算定された価格を売価とする(棚卸資産評価会計基準第8項)。NFTはその非代替的な性質から、参考となる市場価格を観察できなかったり、NFT市場は黎明期にあり十分な流動性があるとは言えないことから、正味売却価額の見積りが困難となる場合がある。
他社の発行したNFTを無形固定資産として計上した場合、例えば定額法で償却を行う際には、耐用年数の合理的な見積りが問題となる。ブロックチェーン上で記録される場合にはトークン自体は技術的にはほぼ永続的に存在し得るものと考えられるが、NFTをどの程度の期間ビジネスで利用するかについての実績が乏しいことから、耐用年数の見積りを合理的に説明することが難しい事例が見受けられる。また、NFTを利用したビジネスは、収益性やライフサイクル等のデータの蓄積も十分でなく詳細な中長期計画を立てることができず、固定資産の減損会計の適用に当たり、割引前将来キャッシュ・フローの見積りを合理的に説明することが難しい事例が見受けられる。回収可能価額の算定に正味売却価額を利用する場合には、棚卸資産の場合と同様に、正味売却価額の見積りが困難となる場合がある。
② 自己の発行したNFT
上記6.(1)①で述べた自己に割り当てた自己発行ICOトークンの会計と同様の論点が生じると考えられる。
諸外国におけるトークン関連の資金調達事例では、以下のとおり、SAFT等の形態が見られる。我が国においてはSAFT等を通じた資金調達事例は見られないが、国内企業が運営する在外ファンド等を通じてSAFT等へ投資する事例は見受けられる。
① SAFT
将来発行が予定されるトークンの割安購入権。
② SAFTE(Simple Agreement for Future Tokens or Equity)
将来発行が予定されるトークンの割安購入又は発行体株式への転換を選択できる権利。
③ SAFE(Simple Agreement for Future Equity)
あらかじめ定められた金額を支払うことで、将来の新株発行時に所定の転換価額に基づき当該新株に転換できる権利であり、将来発行が予定されるトークンの有償又は無償での配布を受ける権利であるトークンワラントを組み合わせた形式の契約も見られる。
上述のように我が国においては、SAFT等を通じた資金調達の事例は見られないが、今後のWeb3.0ビジネスの多様化の中で、上記で解説した「3.Web3.0企業の監査受嘱上の留意事項」を考慮して実務上の検討が必要となることも考えられる。
この場合、「3.Web3.0企業の監査受嘱上の留意事項」にて解説した事項を検討することが必要になると考えられる。
① SAFE
保有するSAFEの会計処理を検討する場合には、SAFEの法的性質やデリバティブに該当するかどうかの検討が必要と考えられる。SAFEは将来発行される株式に自動的に転換される性質を有しており、SAFEの保有者がSAFEの発行者に対して新株を発行させることはできないと考えられている。そのため、以下の商品に該当するかどうかを、個別に検討した上であるべき会計処理を検討する必要があると考えられる。
② SAFT
SAFTについても、会計処理の入り口として、その法的性質の検討が必要と考えられる。SAFTの条件は実務上多様な設計が行われていることが想定されるが、米国では、いわゆるHoweyテスト8によりSAFTが米国証券法の証券に該当するケースがあるものと考えられる。また、SAFTは、将来のトークン発行が所定の日までに行われない場合には調達資金を出資者に返還する条項が付される場合があるが、このような返還義務も会計処理の判断において考慮する必要があると考えられる。さらに、金融商品会計に関する実務指針第6項で定めるデリバティブの定義に該当するかどうかの検討も必要と考えられる。
ブロックチェーンのブロック承認プロセスであるコンセンサス・アルゴリズムが、PoS(Proof of Stake)やDPoS(Delegated Proof of Stake)等の方式を採用している暗号資産においては、流通する暗号資産を一定量預け入れた者がブロック作成権者となる。このブロック作成権者を始め、自らバリデータノード9を運用する事業者は、「バリデータ」と呼ばれる。バリデータは自身が保有する暗号資産又は他者から預かった暗号資産をブロックチェーンネットワークにステーク(預入れ)し、作成したブロックが適正と承認されることで、ブロックチェーンネットワークから報酬を得ることができる。この暗号資産をブロックチェーンネットワークに預け入れ、ブロックチェーンネットワークの運営や取引の承認に参加し、報酬を得る仕組みを「ステーキング(Staking)」という。ステーキングの仕組みは多様であるが、一般的にはステークする資産の量が多く、かつ長期間ステークされているほど、次回の検証者として選ばれる可能性や報酬額が高くなる。
暗号資産保有者が既にバリデータノードを運用している者に対して、直接又は間接的にステーキングを実施したい暗号資産を預け入れて委任(デリゲート)することで、ステーキングに参加することも可能である。また、暗号資産交換業者等は、サービス利用者からの申込みに基づき、必要に応じて自己が保有する暗号資産(借入暗号資産を含む。)と合わせてバリデータに暗号資産を預け入れ、預け入れた数量に応じてバリデータから分配を受けた報酬をサービス利用者へ付与する行為を、ステーキングサービスとして提供している場合もある。それぞれのケースに関する会計処理の検討は(2)にて後述する。ただし、ブロックチェーンネットワークによってステーキングの仕組みは異なり、それぞれの取引条件、報酬構造、リスク管理等、各ブロックチェーンネットワークの具体的な事実や状況に応じて会計処理の結論が異なる可能性がある点に留意が必要である。
ステーキングではブロックチェーンネットワークからバリデータノードに対して報酬が発生する、又はバリデータから報酬の一部が分配されることから、企業は当該報酬について収益として会計処理を行う必要がある。
一般に、顧客と約束した財又はサービスに関する会計処理、すなわち、顧客との契約から生じる収益については、収益認識会計基準に従って検討を行うが、収益認識会計基準において、資金決済法における定義を満たす暗号資産に関する取引は適用対象外とされている(第3項(7))。また、暗号資産のステーキングから生じる報酬は、実務対応報告第38号の範囲に含まれていないことから、既存の会計基準、実務慣行を参考に個々の企業が独自に会計方針を定める必要があり、実務上は収益認識会計基準に準じた形で会計方針を定めているケースが見られる。この場合、重要な会計方針に関する注記の開示目的に照らして、重要な会計方針としての注記の要否の検討が必要となる(企業会計基準第24号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」第4-2項)。
以下、企業が自らバリデータとなる場合、他の第三者にノード運用を委任(デリゲート)する場合の会計処理の留意事項を紹介する。
① 企業が自らバリデータとなる場合のバリデータの会計処理
前述のとおり、収益認識会計基準に準じて会計方針を定める実務が見られるが、論点となり得る事項を以下に例示する。
a.契約の識別
バリデータがブロックチェーンネットワークに参加する際に、バリデータとブロックチェーンネットワーク又はブロックチェーンネットワーク参加者との間で書面等により契約が締結されることは少ない。そのため、バリデータの権利や義務を識別するためには、当該ブロックチェーンネットワークのホワイトペーパーでその仕様などを理解することが必要となる場合がある。
b.履行義務の識別及び総額・純額表示の検討
バリデータは、取引の検証及び承認を実施する必要があり、その結果としてネットワークからステーキング報酬を得ることとなる。バリデータが自己の保有する暗号資産を自己のノードにステーキングする場合と、暗号資産保有者から委任(デリゲート)を受けて自己のノードにステーキングする場合とでは、契約内容や実態に基づき、顧客の特定や履行義務の範囲に異なる捉え方が生じる可能性がある。暗号資産保有者から委任を受けて自己のノードにステーキングする場合、暗号資産保有者との間でバリデータとして報酬を得る取引が、本人としての取引か、代理人としての取引かも論点となる可能性があるため、バリデータにおいて収益を総額で計上するか、純額で計上するかを検討する必要がある。
c.取引価格の算定
バリデータが受領する報酬のうち、契約上の定めや実務運用に基づき、暗号資産保有者に帰属する部分とバリデータ自身の収益との間での合理的な配分方法を検討する必要がある。
d.収益認識のタイミング
例えば、バリデータとしてブロックチェーンネットワーク上で取引の検証及び承認行為を実施した時点、ステーキング報酬がブロックチェーン上で発生した時点、暗号資産保有者への分配が確定した時点などの一時点で履行義務が充足したものとするべきか、又は、暗号資産の種類によっては一定数量のブロックをまとめた一定期間(ターム)ごとにステーキング報酬が算定されるケースもあることから、その場合には一定期間にわたって履行義務が充足したものとすべきか、契約内容や実態に即して判断する必要がある。
② 他の第三者にノード運用を委任(デリゲート)する場合
a.暗号資産保有者がバリデータに委任(デリゲート)する場合の暗号資産保有者の会計処理
暗号資産保有者(デリゲータ)がバリデータから受け取るステーキング報酬について、収益認識会計基準を準用する場合、バリデータとデリゲータのいずれがブロックチェーンネットワークに対する検証等のサービスを提供しているのか(いずれが本人、代理人なのか)の判断が必要になり、その結果、暗号資産保有者は、ブロックチェーンネットワークから受け取る報酬を総額か、あるいは、純額かで計上することになる。
b.暗号資産交換業者等がサービス利用者からの申込みに基づき、デリゲータとしてステーキングサービスを提供する場合の暗号資産交換業者等の会計処理
例えば、収益認識会計基準の準用に際して、以下の論点が想定される。
ステーキングに関連する暗号資産の管理には、預り暗号資産の管理リスクに加え、例えば、以下のリスクが想定される。
ステーキングの仕組みには、利用者が暗号資産を事業者に寄託し、事業者が利用者に代わってステーキングを行う「カストディ(寄託)型」と、利用者が暗号資産を事業者に貸し付け、事業者が自己の裁量で運用を行う「レンディング(消費貸借)型」が存在する。暗号資産の種類や約款の内容によって、分別管理の対象となる寄託か、対象外となる消費貸借かが異なる場合があるため、監査人は個々の契約の法的性質を慎重に識別する必要がある。
一般的な特徴として、レンディング(消費貸借)型では、事業者が運用に関し相対的に広い裁量を持ち、ステーキングに伴う経済的リスク・リワードが事業者側に偏りやすく、本人取引・総額表示寄りの要素を有する一方、事業者に分別管理義務は生じない。一方で、カストディ(寄託)型では、暗号資産が利用者名義で分別管理され、事業者は利用者の計算で代行し手数料を受領するにとどまりやすいため、代理人取引・手数料のみの純額表示寄りの要素を有する。上記はいずれも一般的な整理であり、契約条項、分別管理の有無、事業者の裁量、リスク・リワードの帰属関係等を総合的に勘案し、適用基準及び実務慣行との整合を踏まえて個別に判断することが望ましい。
1 IEOとは、トークンの発行者が暗号資産交換業者に投資家へのトークンの販売を委託することで資金調達を行うものである。この場合、トークンの発行者は暗号資産交換業のライセンス取得を要しない。
2 暗号資産取引に係る規制については、資金決済法から金融商品取引法へ移管し、利用者保護の枠組みを強化する金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律が2026年7月23日に公布され、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行される見込みである。この点については第2回で解説予定である。
3 ここでいう暗号資産はcrypto-assetの日本語訳であり、改正資金決済法第2条第14項に規定する暗号資産より広い意味合いで用いられている。
4 資金決済法等の改正を受け2026年8月17日に、ASBJより、実務対応報告第45号の改正案として実務対応報告公開草案第74号「資金決済法における特定の電子決済手段の会計処理及び開示に関する当面の取扱い(案)」が公表されている。
5 例えば、米国では、トークンが米国証券法の証券に該当するかが論点になる。Securities and Exchange Commission(以下「SEC」という。)は、2020年12月に暗号資産XRPは米国証券法の証券に該当するため、無登録の証券を販売したとして販売者に訴訟を起こすなど(その後、機関投資家向けの販売は証券取引に該当し、暗号資産取引所での一般公開取引(リテール販売)は証券取引に該当しないとの判決が下され、最終的に2025年8月に両者は和解している)、トークンを証券であるとSECが評価する事例が複数存在する。米国における証券への該当性については、SECよりガイダンス(SEC.gov|Framework for “Investment Contract” Analysis of Digital Assets(https://www.sec.gov/corpfin/framework-investment-contract-analysis-digital-assets))が公表されており、判定手法としてHoweyテストに言及されている。Howeyテストとは、1946年のHowey社を被告とした訴訟において、同社による土地販売行為が1933年証券法第2条(a)(1)に定める「投資契約(investment contract)」に該当するか否かが争点となった際に、裁判所が複数の判断基準を定めた上で行った判定方法であり、米国でトークン等の発行者が法律専門家から入手する意見書において、トークン等が有価証券に該当するか否かの判断をする際に使用されている実務がある。なお、Howeyテストが現代のブロックチェーン技術に適していないという意見もあり、本研究資料改正日時点で、SECにてHoweyテストの適用に関して見直しが行われている。
6 ICOはInitial Coin Offeringの略称である。研究会報告書によれば、ICOについて明確な定義はないが、一般に、企業等がトークンと呼ばれるものを電子的に発行して、公衆から法定通貨や仮想通貨の調達を行う行為を総称するものとされている。論点整理では、図表1の資金決済法上の暗号資産に該当するICOトークンを対象として、その発行及び保有に関する論点について取り扱っている(第7項)。
7 2023年度税制改正要望において金融庁と経済産業省の共同要望として「ブロックチェーン技術を活用した起業等への阻害要因を除去し、Web3推進に向けた環境整備を図る観点から、法人が発行した暗号資産のうち、当該法人以外の者に割り当てられることなく、当該法人が継続して保有しているものについては、期末時価評価課税の対象外とすること」が出されていることを受け、ASBJに対して、自己に割り当てた自己発行ICOトークンの会計処理について質問が寄せられた。これを受けて、2022年11月7日開催の第490回企業会計基準委員会にて、自己に割り当てた自己発行ICOトークンの会計処理について審議が行われた。論点整理で紹介した考え方のいずれを採用すべきか結論は出していないが、いずれの場合も時価評価しないという考え方が示された。
8 Howeyテストは、脚注5を参照。
9 ブロックチェーンネットワークに参加するコンピュータをノードと呼ぶ。