2026年8月20日公開
2026年7月7日、企業会計基準委員会(以下「ASBJ」という。)は、以下の企業会計基準、企業会計基準適用指針、実務対応報告及び移管指針(以下、合わせて「改正法人税等会計基準等」という。)を公表した1。なお、審議の内容に鑑み、企業会計基準第27号の名称が「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」から「法人税等に関する会計基準」に改称された。
また、ASBJは、改正法人税等会計基準等が適用される際に、実務に資するための情報を提供することを目的として、補足文書「我が国における課税対象利益を基礎とする税金及び税効果会計における税率に関する取扱いについて」(以下「本補足文書」という。)を公表した1。
改正前の法人税等会計基準は、具体的な税金を挙げて、当該税金について規定する税法を参照することにより適用対象となる税金を特定して会計処理及び開示について定めていたことから、個別の税金の創設を受けて都度改正を行ってきた。2024年年次改善プロジェクトの審議の過程において、その適用対象となる税金に関して、原則的な定めを置き具体的な税金を特定しない方法に見直すことを検討してはどうかとの意見が聞かれた。当該意見を踏まえて、ASBJは、2024年11月の公開草案「2024年年次改善プロジェクトによる企業会計基準等の改正(案)」の公表時に、法人税等会計基準の適用対象となる税金を特定する方法を見直すことについて、市場関係者からコメントを募集したところ、概ね支持するコメントが寄せられた。これを受けて、ASBJは、2025年5月より審議を開始し、2026年1月に企業会計基準公開草案第94号「法人税等に関する会計基準(案)」等を公表した。
改正法人税等会計基準等は、2026年1月に公表された公開草案に対して寄せられたコメントを踏まえて検討が行われ、当該公開草案の内容を一部修正したうえで公表されたものである。
なお、令和7年度税制改正により防衛特別法人税が創設され、2026年4月1日以後に開始する事業年度から課されることに伴い、ASBJは、2025年2月20日に、防衛特別法人税に関する税効果会計の取扱いを明確にすることを目的として、補足文書「2025年3月期決算における令和7年度税制改正において創設される予定の防衛特別法人税の税効果会計の取扱いについて」を公表した。その後、法人税等会計基準等の改正については、一定の周知期間又は準備時間を確保する観点から、ASBJは、2026年2月27日に、税効果会計だけではなく当期税金の取扱いも明らかにすることを目的として、実務対応報告第48号「防衛特別法人税の会計処理及び開示に関する当面の取扱い」(以下「実務対応報告第48号」という。)を公表した。
実務対応報告第48号は、防衛特別法人税が課される2026年4月1日以後に開始する連結会計年度及び事業年度に備えて短期的な対応を行うために公表されたものであるため、改正法人税等会計基準等の適用により、その適用を終了する(改正法人税等会計基準21-2項及び49項)。
個別の税金が税制改正により創設される都度、法人税等会計基準を改正する場合、税制改正から適用までの短期間で会計基準等の改正を行う必要があり、場合によっては上述したように、補足文書で対応することもあった。
改正法人税等会計基準では、個別の税金が税制改正により創設されてもその都度会計基準等を改正しなくてもよいよう、具体的な個別の税金に関する会計処理及び開示を定めることを目的とするのではなく、主として法人税その他の課税対象利益を基礎とする税金に関する会計処理及び開示を定めることを目的としたうえで、課税対象利益を基礎とする税金と課税対象利益を基礎とする税金に該当しないものに区分し、各々の取扱いが定められている。
ここで、改正法人税等会計基準では、「課税対象利益」と「課税対象利益を基礎とする税金」が以下のとおり定義されている。
なお、課税対象利益は、課税年度の法人所得に対して課される税金の課税標準となるものであり、課税対象利益に該当するものの例として、法人税法における「所得の金額(又は欠損金額)」が挙げられている(改正法人税等会計基準28-3項)。また、ある税金が課税対象利益を基礎とする税金に該当するかどうかは、税金が課される対象ごとに、基本的に課税標準ごとに判断されると考えられる(改正法人税等会計基準28-4項及び企業会計基準公開草案第94号「法人税等に関する会計基準(案)」
等に対するコメント5))。
課税対象利益を基礎とする税金と課税対象利益を基礎とする税金に該当しないものの会計処理と開示の概要は【図表1】のとおりである。なお、【図表1】では、当事業年度に生じたものの会計処理及び開示の取扱いを記載しており、更正等の取扱いは記載していない。
会計処理等に影響が生じる可能性のある改正内容として、以下が挙げられる。
改正法人税等会計基準において「課税対象利益を基礎とする税金」が定義されたことを受け、「税効果会計に係る会計基準」(1998年10月企業会計審議会)(以下「税効果会計基準」という。)の「第一 税効果会計の目的」の定めにおける法人税等の定義が改正されている(税効果会計基準一部改正2項及びBC2項)。税効果会計基準一部改正による一部改正前の税効果会計基準(以下「一部改正前の税効果会計基準」という。)との比較は【図表2】を参照いただきたい。改正税効果適用指針においても、税効果会計基準一部改正にあわせて法人税等の定義が見直されたが、法人税等に該当する税金は従来と同様であり、税効果会計の対象となる税金に関して変更を意図するものではないとされている(改正税効果適用指針4項(2)及び91項並びに税効果会計基準一部改正BC3項)。
改正前の税効果適用指針では、法定実効税率の具体的な算式が定められていたが、改正税効果適用指針では、法定実効税率を課税対象利益に対する法令上規定された税率に基づく税負担の比率と定義し(改正税効果適用指針4項(11))、具体的な算式は後述の本補足文書にて示されている。また、改正法人税等会計基準において、同会計基準の適用範囲についての原則的な定めを置き具体的な税金を特定しない方法に見直されていることから、改正税効果適用指針は国税と地方税を定義(改正税効果適用指針4項(12)及び(13))したうえで、繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる税率の定めにつき、課税主体に着目した税金の分類により文言の見直しがされている(改正税効果適用指針46項、47項及び150-3項)。
加えて、改正前の税効果適用指針において示されていた「[設例10]法定実効税率の算定」、「[設例11]改正地方税法等が決算日以前に成立し、当該改正地方税法等を受けた改正条例が当該決算日に成立していない場合の法定実効税率の算定」が削除され、後述の本補足文書にて示されている。
改正法人税等会計基準において適用対象となる税金の定め方の見直しを行ったことを受け、改正実務対応報告第42号の目的をグループ通算制度を適用する場合における法人税などのグループ通算制度の対象とされている税金及び税効果会計の会計処理及び開示の取扱いを明らかにすること(改正実務対応報告第42号2項)としたうえで、これに整合するよう表現の見直しがされている(改正実務対応報告第42号36-2項)。
また、「[設例5]繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる税率」が削除され、後述の本補足文書で示されている。
改正法人税等会計基準において「課税対象利益を基礎とする税金」が定義されたことを受け、キャッシュ・フロー作成基準一部改正では、法人税その他の課税対象利益を基礎とする税金が法人税等と定義されている(キャッシュ・フロー作成基準一部改正2項及びBC2項)。
キャッシュ・フロー作成基準一部改正による一部改正前の「連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準」(1998年3月企業会計審議会)(以下「一部改正前のキャッシュ・フロー作成基準」という。)との比較は【図表3】を参照いただきたい。
改正キャッシュ・フロー実務指針では、住民税(均等割)は「営業活動によるキャッシュ・フロー」に含まれるキャッシュ・フローではあるが、事業税(付加価値割)及び事業税(資本割)と同様に「法人税等の支払額」に含めてはならないとされている(改正キャッシュ・フロー実務指針10項及び35-2項)。これは、改正法人税等会計基準において、住民税(均等割)の損益計算書における表示に関して、事業税(付加価値割)及び事業税(資本割)と整合的な取扱いとしたため、キャッシュ・
フロー計算書においても、事業税(付加価値割)及び事業税(資本割)と取扱いを整合させたものである。
改正法人税等会計基準等では、適用時期について以下のように定められている(改正法人税等会計基準20-7項及び47項、改正税効果適用指針65-6項、改正実務対応報告第42号33-2項、改正キャッシュ・フロー実務指針26-9項、税効果会計基準一部改正5項及びBC6項並びにキャッシュ・フロー作成基準一部改正3項及びBC3項)。
改正法人税等会計基準等の適用初年度において、改正法人税等会計基準等を適用することによりこれまでの会計処理と異なることとなる場合、適用初年度の期首より前に新たな会計方針を遡及適用した場合の適用初年度の累積的影響額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減し、当該期首から新たな会計方針を適用することができるとされている(改正法人税等会計基準20-8項)。
また、企業会計基準第24号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」14項の定めにかかわらず、適用初年度の比較情報について、新たな表示方法に従い組替えを行うことを要しないとされている(改正法人税等会計基準20-9項及び改正キャッシュ・フロー実務指針26-10項)。
改正法人税等会計基準では個別の税金ごとの具体的な取扱いを示さずに、個別の税金ごとの具体的な取扱いは本補足文書で示されている。本補足文書には、以下の項目に関して記載されている。
この点、改正前の税効果適用指針及び実務対応報告第42号から削除された税効果会計における税率に関する取扱いについての設例は、本補足文書の別紙に記載されている。改正前の税効果適用指針及び実務対応報告第42号と本補足文書の別紙の対応関係は【図表4】のとおりである。
改正法人税等会計基準等の適用により、住民税(均等割)の取扱いを除けば、従来からの取扱いに大きな変更が生じることは想定されていない。もっとも、「課税対象利益を基礎とする税金」の用語の新設や「法人税等」の定義の見直しに伴い、住民税(均等割)の取扱い以外についても個別の検討を要する可能性がある点にご留意いただきたい。
なお、改正法人税等会計基準等では、適用対象となる税金に関して、原則的な定めを置き具体的な税金を特定しない方法に見直しがされているため、どのような税金がその定めに合致するかの判断は実務にゆだねられることになると考えられる。この点、本補足文書は、企業会計基準等の一部ではないが、企業会計基準等を適用するにあたり、実務に資するための情報を提供するものとなっている。今後税制改正によって個別の税金の創設又は廃止が行われたときには、本補足文書の変更により機動的に情報提供されることで、実務上の利便性を向上させることが期待される。
1 リンク先のASBJのホームページを参照のこと。
(https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards/y2026/2026-0707.html)