2026年6月20日公開
本稿では、2027年3月期決算の第1四半期決算(2026年4月1日から2026年6月30日まで)の会計処理及び開示に関する主な留意事項について解説を行う。
2027年3月期に適用される新会計基準等には、下記ⅠからⅣがある。
【2027年3月期に適用される会計基準等】
Ⅰ 改正移管指針第9号「金融商品会計に関する実務指針」
Ⅱ 実務対応報告第47号「非化石価値の特定の購入取引における需要家の会計処理に関する当面の取扱い」
Ⅲ 実務対応報告第48号「防衛特別法人税の会計処理及び開示に関する当面の取扱い」
Ⅳ 企業会計基準第37号「期中財務諸表に関する会計基準」等
なお、上記のほか、2027年3月期に早期適用が可能な会計基準等として、企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」等がある。本誌2024年11月号(Vol.579)12月号(Vol.580)及び2026年2月号(Vol.594)において解説しているため、そちらをご参照いただきたい。
また、「譲受人が特別目的会社である場合の金融資産の消滅範囲の明確化」に関して、2026年6月2日に、改正企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」等が公表されている。当該改正基準等は、早期適用が認められ、早期適用については、2026年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首以後実施される金融資産の譲渡から適用することができるとされているため、2027年3月期第1四半期決算においても適用時期によっては影響する可能性があり留意を要する。
企業会計基準委員会(以下「ASBJ」という)は、2025年3月11日に、改正移管指針第9号「金融商品会計に関する実務指針」(以下「本実務指針」という)を公表した。
本実務指針第132項では、企業が投資する組合等への出資の評価に関して、当該組合等の構成資産が金融資産に該当する場合には企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」(以下「金融商品会計基準」という)に従って評価し、当該組合等への出資者である企業の会計処理の基礎とするとしている。この点、金融商品会計基準は、市場価格のない株式について取得原価をもって貸借対照表価額とする(金融商品会計基準第19項)としているため、企業が投資する組合等の構成資産が市場価格のない株式である場合、これらについても取得原価で評価することとなる。
当該定めに関して、近年、ファンドに非上場株式を組み入れた金融商品が増加しており、これらの非上場株式を時価評価することによって、財務諸表の透明性が向上し、投資家に対して有用な情報が開示及び提供されることになり、その結果、国内外の機関投資家からより多くの成長資金がベンチャーキャピタルファンド等に供給されることが期待されるとして、ベンチャーキャピタルファンドに相当する組合等の構成資産である市場価格のない株式を時価評価するように速やかに会計基準を改正すべきとの要望が聞かれた。
こうした状況を受けて、ASBJで検討が行われ、本実務指針の公表に至った。
本実務指針では、本実務指針第132項の定めにかかわらず、一定の要件を満たす組合等への出資は、当該組合等の構成資産に含まれるすべての市場価格のない株式(出資者である企業の子会社株式及び関連会社株式を除く)について時価をもって評価し、組合等への出資者の会計処理の基礎とすることができるとされている(本実務指針第132-2項)。
この点、ASBJの審議の過程では、対象となる組合等の範囲に関して、ベンチャーキャピタルファンドに相当する組合等を定義するか否かについて議論がなされたものの、最終的に直接的な定義は行われていない。
(結論の背景)
対象となる組合等の範囲に関して、ベンチャーキャピタルファンドに相当する組合等とそれ以外の組合等を明確に区分することは困難と考えられたため、ベンチャーキャピタルファンドに相当する組合等を直接的に定義することは行わないこととした(本実務指針第308-3項)。
一方、組合等の構成資産である市場価格のない株式の時価の信頼性を担保するために、対象となる組合等の範囲に関して、次の要件が設けられている(本実務指針第132-2項)。
① 組合等の運営者は出資された財産の運用を業としている者であること
② 組合等の決算において、組合等の構成資産である市場価格のない株式について時価をもって評価していること
(結論の背景)
要件①は、市場価格のない株式の時価の信頼性を担保するためには、組合等の構成資産である市場価格のない株式の評価者に十分な能力が備わっている必要があると考えられることから、組合等の運営者が市場価格のない株式に対する投資を業として行っている者に限定すべきとして設けた要件である。ここで「組合等の運営者」とは、我が国におけるベンチャーキャピタルファンドの多くで用いられている投資事業有限責任組合の形態においては、無限責任組合員が該当すると考えられる。また、他の法形態に基づく組合等については、投資事業有限責任組合における無限責任組合員と類似の業務を執行する者が該当すると考えられる。
要件②は、我が国の実務における市場価格のない株式の時価評価に関する体制の整備状況についての懸念が監査人、財務諸表作成者及び財務諸表利用者から聞かれている中、組合等の決算において、組合等の構成資産である市場価格のない株式について時価をもって評価している場合には、市場価格のない株式の時価評価に関する体制の整備がなされていることが期待できることから、時価評価に関する懸念を一定程度緩和できるとして設けた要件である。ここで、「時価をもって評価している」場合とは、組合等が適用している会計基準により市場価格のない株式について時価評価が求められている場合のほか、市場価格のない株式について時価評価する会計方針を採用している場合が含まれると考えられる。また、時価評価の方法としては、企業会計基準第30号「時価の算定に関する会計基準」に基づいた時価で評価する場合のほか、国際財務報告基準(IFRS)第13号「公正価値測定」又はFASB Accounting Standards Codification(米国財務会計基準審議会(FASB)による会計基準のコード化体系)のTopic 820「公正価値測定」に基づいた公正価値で測定している場合が含まれると考えられる(本実務指針第308-3項)。
(本実務指針第132-2項の定めを適用する組合等の選択に関する方針)
本実務指針第132-2項の定めの適用にあたり、組合等への出資者である企業は、当該定めを適用する組合等の選択に関する方針を定め、当該方針に基づき、組合等への出資時に当該定めの適用対象かどうか決定することとされており、当該定めを適用することとした組合等への出資の会計処理は、出資後に取りやめることはできないこととされている(本実務指針第132-3項)。
なお、当該方針については、原則として継続適用であるが、大きな状況の変化により見直すことはあり得るとされている。見直す場合、見直し後の方針は、方針を見直す前に出資された組合等には適用せず、方針を見直した後に出資された組合等に適用することとされている。
(結論の背景)
審議において、組合等の構成資産である市場価格のない株式の時価評価について、範囲に含まれるすべての組合等を適用対象とするか、組合等の単位で選択できるようにするかについて議論を行った。この点、組合等への出資の目的や性質が異なる場合があると考えられることから、範囲に含まれるすべての組合等について一律に適用対象とするのは必ずしも適切でないと考えられる。このため、組合等への出資者である企業が本実務指針第132-2項の定めを適用する組合等の選択に関する方針を定め、当該方針に基づき、組合等への出資時に本実務指針第132-2項の定めの適用対象かどうか決定することとした。
また、企業の意思により自由に本実務指針第132-2項の適用を終了することを認めることは、会計処理の透明性や比較可能性の観点から適切ではないと考えられるため、本実務指針第132-2項の会計処理を出資後に取りやめることはできないこととした。
なお、本実務指針第132-2項の定めを適用する組合等の選択に関する方針については、原則として継続して適用すると考えられるものの、従来行っていなかった種類の組合等への新規の出資や重要な企業結合など、大きな状況の変化により見直すことはあり得ると考えられる。ここで、組合等への出資時に本実務指針第132-2項の定めの適用対象かどうか決定することとしていることから、見直し後の方針は、方針を見直す前に出資された組合等には適用されず、方針を見直した後に出資された組合等に適用されると考えられる(本実務指針第308-5項)。
(組合等が別の組合等に出資しているケース)
企業が直接出資する組合等について本実務指針第132-2項の定めを適用することを選択しており、かつ、ファンド・オブ・ファンズのように組合等が別の組合等に出資しているケースにおいては、組合等が出資する別の組合等ごとに、上述の本実務指針第132-2項の2要件を満たすか判定を行い、要件を満たした別の組合等についてのみ、その構成資産に含まれるすべての市場価格のない株式(出資者である企業の子会社株式及び関連会社株式を除く)について時価をもって評価し、その組合等への出資者の会計処理の基礎とすることになるとされている(本実務指針第308-5項)。
(出資者である企業の子会社株式及び関連会社株式)
組合等の構成資産に出資者である企業の子会社株式及び関連会社株式が含まれる場合、その組合等への出資者の会計処理の基礎とするにあたり、これらの株式を時価をもって評価するかどうかが問題となるが、本実務指針では、時価をもって評価する対象からは除かれている(本実務指針第132-2項)。
(結論の背景)
本プロジェクトにおいて、組合等の構成資産に出資者である企業の子会社株式及び関連会社株式が含まれることは想定しておらず、また、子会社株式及び関連会社株式については取得原価をもって貸借対照表価額とすることとされていること(金融商品会計基準第17項)を踏まえ、出資者である企業の子会社株式及び関連会社株式は時価をもって評価する対象から除くことを明確化した(本実務指針第308-5項)。
(組合等が連結子会社又は持分法適用会社に該当する場合の連結上の取扱い)本実務指針第132-2項の定めを適用する場合において、組合等が連結子会社又は持分法適用会社に該当するときの連結上の取扱いについては明確化されていない。これは、本実務指針第132-2項の定めを適用する企業として主に想定されているのはリミテッド・パートナーシップ出資者であること、及び本実務指針の改正のプロジェクトは国内外の機関投資家からより多くの成長資金がベンチャーキャピタルファンド等に供給されること等が副次的な目的とされており、できるだけ速やかに会計基準を開発することが期待されていたことが理由とされている(「移管指針公開草案第15号(移管指針第9号の改正案)『金融商品会計に関する実務指針(案)』に対するコメント」の「論点の項目」5)から8)についての「コメントへの対応」参照)。
(「総額法」及び「折衷法」の取扱い)
本実務指針第132-2項の定めは本実務指針第132項のいわゆる「純額法」の定めを前提としている。いわゆる「総額法」及び「折衷法」の取扱いについては、組合等が連結子会社に該当する場合の連結上の取扱いと密接に関連するものであることから、上記のとおり組合等が連結子会社に該当する場合の連結上の取扱いを明確化しないことに合わせて、取り扱わないこととされた(上記「コメントへの対応」参照)。
上記(1)に記載のとおり、本実務指針では、本実務指針第132項の定めにかかわらず、一定の要件を満たす組合等への出資は、当該組合等の構成資産に含まれるすべての市場価格のない株式(出資者である企業の子会社株式及び関連会社株式を除く)について時価をもって評価し、組合等への出資者の会計処理の基礎とすることができるとされている(本実務指針第132-2項)。
(結論の背景)
組合等の解散までに現金で清算されることが見込まれるため、組合等への出資者の貸借対照表において、組合等の構成資産である市場価格のない株式について時価をもって評価したものを組合等への出資者の会計処理の基礎とするのは、最終的に得られるキャッシュ・インフローの予測に資する観点から有用と組合等への出資者である企業が判断する場合があると考えられる(本実務指針第308-4項)。
ここで、組合等への出資者である企業が、最終的に得られるキャッシュ・インフローの予測に資する観点から有用と判断する場合もあれば、企業によってはそのような判断を行わない場合もあると考えられることから、時価評価の適用は強制ではなく、オプションとされている(「移管指針公開草案第15号(移管指針第9号の改正案)『金融商品会計に関する実務指針(案)』に対するコメント」の「論点の項目」26)についての「コメントへの対応」参照)。
また、評価差額の持分相当額は、当期の損益として処理せず、純資産の部に計上することとされている(本実務指針第132-2項)。
(結論の背景)評価差額の持分相当額を当期の損益として処理するか又は純資産の部に計上するかについては、両者とも支持する意見が聞かれた。審議の結果、その他有価証券に関する会計処理など、他の現行基準との内的整合性を重視する観点から、市場価格のない株式の評価差額の持分相当額を純資産の部に計上することとした(本実務指針第308-4項)。
本実務指針第132-2項の定めを適用する場合の組合等への出資の会計処理のイメージは【図表1】のとおりである。
(本実務指針第132-2項の定めを適用する場合の減損処理)
第132-2項の定めを適用する組合等の構成資産である市場価格のない株式については、市場価格のない株式等の減損処理に関する定め(本実務指針第92項)に代わり、時価のある有価証券の減損処理に関する定め(本実務指針第91項)に従って減損処理を行い、組合等への出資者の会計処理の基礎とすることとされている(本実務指針第132-4項)。
(結論の背景)
本実務指針第132-2項の定めを適用した場合についてのみ適用する減損処理に関する新たな定めを設けるのは過度な対応と考えられることから既存の定めを活用するとして、本実務指針第132-2項の定めを適用する場合、組合等の構成資産である市場価格のない株式については、時価のある有価証券の減損処理に関する定め(本実務指針第91項)に従って減損処理を行い、組合等への出資者の会計処理の基礎とすることとした(本実務指針第308-6項)。
本実務指針第132-2項の定めを適用する組合等への出資については、企業会計基準適用指針第31号「時価の算定に関する会計基準の適用指針」(以下「時価算定適用指針」という)第24-16項で定める事項の注記に併せて、次の事項を注記することとされている。なお、連結財務諸表において注記している場合には、個別財務諸表において記載することを要しない(本実務指針第132-5項)。
① 本実務指針第132-2項の定め(組合等の構成資産に含まれるすべての市場価格のない株式(出資者である企業の子会社株式及び関連会社株式を除く)について時価をもって評価し、組合等への出資者の会計処理の基礎とする定め)を適用している旨
② 本実務指針第132-2項の定めを適用する組合等の選択に関する方針
③ 本実務指針第132-2項の定めを適用している組合等への出資の貸借対照表計上額の合計額
(結論の背景)
開示に関して、時価算定適用指針第24-16項は、貸借対照表に持分相当額を純額で計上する組合等への出資(本実務指針第132項及び第308項)については、時価の注記を要しないこととし、その場合、注記していない旨及び時価算定適用指針第24-16項の取扱いを適用した組合等への出資の貸借対照表計上額の合計額を注記することとしている。
ここで、本実務指針第132-2項の定めを適用する場合には、これらの注記に併せて、当該定めを適用した影響を財務諸表利用者が理解できるように、本実務指針第132-2項の定めを適用している旨、当該定めを適用する組合等の選択に関する方針、及び当該定めを適用している組合等への出資の貸借対照表計上額の合計額を注記することとした。なお、本実務指針第132-2項の定めを適用している組合等への出資の貸借対照表計上額の合計額は、時価算定適用指針第24-16項の取扱いを適用した組合等への出資の貸借対照表計上額の合計額の内数に該当すると考えられる(本実務指針第308-7項)。
① 適用時期
本実務指針は、2026年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することとされている。
(結論の背景)
本実務指針第132-2項の定めを適用するにあたり、組合等への出資者である企業が定めた当該定めを適用する組合等の選択に関する方針によっては、方針に合致するすべての組合等を対象として、その構成資産に含まれるすべての市場価格のない株式(出資者である企業の子会社株式及び関連会社株式を除く)について時価をもって評価し、組合等への出資者の会計処理の基礎とする準備を行うのに時間を要する可能性があると考えられる。このため、十分な準備期間を確保するように、本実務指針については、2026年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することとした(本実務指針第357項)。
② 経過措置
本実務指針の適用初年度において、組合等の構成資産である市場価格のない株式について本実務指針第132-2項の定めを適用する場合、適用初年度の期首時点において組合等への出資者である企業が定めた方針に基づいて当該定めを適用する組合等を決定し、次の会計処理を行うこととされている(本実務指針第205-2項)。
ⅰ. 適用初年度の期首時点において、本実務指針第132-2項の定めを適用する組合等の構成資産に含まれるすべての市場価格のない株式(出資者である企業の子会社株式及び関連会社株式を除く)について時価をもって評価し、組合等への出資者の会計処理の基礎とする。この場合、適用初年度の期首時点での評価差額の持分相当額を適用初年度の期首のその他の包括利益累計額又は評価・換算差額等に加減する。
ⅱ. 適用初年度の期首時点において、本実務指針第132-2項の定めを適用する組合等の構成資産に含まれるすべての市場価格のない株式(出資者である企業の子会社株式及び関連会社株式を除く)について時価のある有価証券の減損処理に関する定め(本実務指針第91項)に従って減損処理を行い、組合等への出資者の会計処理の基礎とする。この場合、減損処理による損失の持分相当額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減する。
(結論の背景)
組合等への出資者である企業が定めた方針に合致する組合等を過去に遡って決定することを求めるのは、実際には行っていなかった判断を事後的に求めることになることから、適切でないと考えられる。このため、本実務指針の適用初年度においては、本実務指針の適用初年度の期首時点において、組合等への出資者である企業が定めた方針に基づいて第132-2項の定めを適用する組合等を決定することとした。
会計処理の遡及適用に関しては、市場価格のない株式の時価の算定には見積りの要素が多く含まれ、事後的判断を利用せずに市場価格のない株式の時価を遡及的に算定することは実務上困難であると考えられること、及び過去に遡ってどの時点で時価のある有価証券の減損処理に関する定め(本実務指針第91項)に基づく減損処理が必要であったか識別することは困難であると考えられることから、本実務指針については、遡及適用を求めず、適用初年度の期首から将来にわたって適用することとした。この場合、本実務指針の適用後の当期純利益等への影響が適切となるように、経過措置を設けることとした(本実務指針第358項)。
ASBJは、2025年11月11日に、実務対応報告第47号「非化石価値の特定の購入取引における需要家の会計処理に関する当面の取扱い」(以下「実務対応報告第47号」という)を公表した。
近年、多くの企業が脱炭素、低炭素化に向けた取組みを活発化させており、当該取組みの1つとして、いわゆるバーチャル電力購入契約(Virtual Power Purchase Agreement)(以下「バーチャルPPA」という)により取得した非化石価値と別途調達する再生可能電力でない電力を組み合わせることで実質的に再生可能電力を調達したことと同じ効果を得られる手法がみられる(実務対応報告第47号BC1項)(【図表2】参照)。
今後も各企業の環境意識の高まりとともに、バーチャルPPAの利用がさらに拡大することが見込まれる中、バーチャルPPAに関する会計上の取扱いが明確ではないとして、ASBJで検討が行われ、2025年11月11日に、実務対応報告第47号「非化石価値の特定の購入取引における需要家の会計処理に関する当面の取扱い」が公表された。
(対象とする者)
実務対応報告第47号では、非化石価値の特定の購入取引における需要家の会計上の取扱いを定めている(実務対応報告第47号第1項)。需要家とは、以下の(適用する契約)に掲げる特徴を有する契約を締結する者のうち、非化石価値を自己使用目的で購入する者をいう(実務対応報告第47号第5項(2))。
(結論の背景)
企業会計基準諮問会議に寄せられたテーマ提案では、以下の(適用する契約)に掲げる特徴を有する契約の当事者である需要家及び発電事業者の双方の会計上の取扱いを検討する場合には一定の時間を要することが予想される中、早期の対応が必要であることに鑑み、より広範囲に影響があると考えられる需要家の会計上の取扱いのみを検討することが提案された。これを踏まえて、ASBJは、実務対応報告第47号において需要家の会計上の取扱いを定めることとし、発電事業者の会計上の取扱いは定めないこととした(実務対応報告第47号BC5項)。
(適用する契約)
① 発電事業者と需要家の相対の契約
実務対応報告第47号は、非化石価値取引において需要家による非化石価値の転売(子会社又は関連会社への融通を除く。以下同じ)が想定されておらず、発電事業者から需要家に電力の取引を伴わずに非化石価値を移転する契約のうち概ね次の特徴を有するものに適用する(実務対応報告第47号第2項)。
ⅰ. 発電事業者と需要家の相対の契約である。
ⅱ. 需要家は、発電事業者との間で、契約で指定された再生可能電力発電設備の発電量に応じた量の非化石価値を購入する契約を締結する。
ⅲ. 需要家は、当該非化石価値を買い取る義務を負う。
(結論の背景)
企業会計基準諮問会議からの提言は、実務対応報告第47号の開発時点の我が国におけるバーチャルPPAに関する実務を考慮して当面の取扱いを定めた上で、実務の進展や国際的な会計基準の審議の動向を注視し、国際的な会計基準における取扱いがより明確になったこと等を契機として必要に応じて見直しを行うというものであった。これを踏まえて、ASBJは、当面の取扱いを検討するにあたって、現在我が国において行われているバーチャルPPAの一般的な取引形態において需要家が取得する非化石価値の性質や取引条件等を基礎として、実務対応報告第47号を適用する契約の範囲について整理を行うこととした(実務対応報告第47号BC10項)。
② 特定卸供給事業者等と需要家の契約
実務対応報告第47号の開発時点の制度上、需要家は、発電事業者から購入する場合のほかに、電気事業法(昭和39年法律第170号)で規定された特定卸供給事業者1との直接取引においても非化石価値を購入することが認められている。特定卸供給事業者(これに準ずる者を含む)との取引についても、次の特徴を有する契約に実務対応報告第47号を適用する(実務対応報告第47号第3項)。
ⅰ. 特定卸供給事業者等と需要家の相対の契約である。
ⅱ. 需要家は、特定卸供給事業者等との間で、再生可能電力発電設備で発電を行う者の再生可能電力発電設備を契約で指定し、当該再生可能電力発電設備の発電量に応じた量の非化石価値を特定卸供給事業者等から購入する契約を締結する。
ⅲ. 需要家は、当該非化石価値を買い取る義務を負う。
(結論の背景)
特定卸供給事業者との取引はさまざまな類型があるが、特定卸供給事業者と需要家の相対で締結された非化石価値の移転に関する契約で、再生可能電力発電設備で発電を行う者の再生可能電力発電設備を指定した上で、当該再生可能電力発電設備の発電量に応じた量の非化石価値を特定卸供給事業者から需要家が購入し、需要家が当該非化石価値を買い取る義務を負う場合には、実務対応報告第47号を適用して会計処理を行うことが考えられる。したがって、実務対応報告第47号第3項に列挙した特徴を有する契約に実務対応報告第47号を適用することとした。
ここで、需要家が非化石価値の移転に関する契約を締結する相手方になり得る者として、電気事業法における特定卸供給事業者の定義を満たす者のほか、電気事業法上の特定卸供給事業者の定義は満たさないが、複数の再生可能電力発電設備を束ねることで再生可能電力発電設備の発電変動を吸収し、安定した供給力として卸電力市場などへ電力の供給を行う者も挙げられる。このため、実務対応報告第47号では、このような役割を担う者を特定卸供給事業者に準ずる者として、特定卸供給事業者とまとめて「特定卸供給事業者等」と定義した上で、実務対応報告第47号を適用するにあたり、「発電事業者」を「特定卸供給事業者等」と読み替えるものとする定めを置くこととした。
また、実務対応報告第47号の開発時点の制度上、特定卸供給事業者等は電気事業法上の発電事業者から非化石価値を調達するほか、それ以外の発電者から非化石価値を調達することも想定されているため、再生可能電力発電設備で発電を行う者は電気事業法上の発電事業者に限らないこととしている(実務対応報告第47号BC14項からBC16項)。
<【参考】非化石価値取引の概要>
実務対応報告第47号の開発時点において、上述した(1)範囲-(適用する契約)-①発電事業者と需要家の相対の契約のiからiiiの特徴を有する契約に基づく非化石価値取引は、概ね以下から構成される(実務対応報告第47号BC23項)。
① 非化石価値を受け取る権利及び対価の支払義務需要家は、非化石価値を受け取る権利について、契約で指定された再生可能電力発電設備による発電が行われ、かつ、金額を信頼性をもって測定できる時点(遅くとも国による電力量の認定時点)において、費用処理を行うとともに、対価の支払義務に係る負債を計上する(実務対応報告第47号第6項及び第7項)。
(結論の背景)
実務対応報告第47号を適用する契約では、需要家が契約で指定された再生可能電力発電設備の発電量に応じた量の非化石価値を購入することをあらかじめ約束しているため、発電により将来非化石価値を受け取る権利及び対価の支払義務が需要家に生じていると考えられる。これを考慮すると、発電時点において需要家が非化石価値を受け取る権利及び対価の支払義務の会計処理を行うことが考えられる(実務対応報告第47号BC25項)。
しかしながら、国による電力量の認定時点より前は非化石価値の量が確定していないことや、発電時点では発電事業者から需要家に発電量の通知が行われていない可能性があることから、発電時点において会計処理を行うことが実務的に困難な場合があることが想定されることから、発電が行われ、かつ、金額を信頼性をもって測定できる時点において会計処理を行うことを明確化した(実務対応報告第47号BC26項及びBC28項)。
一方、国による電力量の認定時点では、非化石価値の量が確定することとなり、契約内容や卸電力市場価格等に基づき価格についても情報を得ることができると考えられるため、遅くとも当該時点においては金額を信頼性をもって測定できるものとして取り扱うこととした(実務対応報告第47号BC28項)。
また、非化石価値及び非化石価値を受け取る権利は、会計上、資産を認識するという考え方があると考えられるが、将来の経済的便益の流入又は経済的資源の流出の削減を間接的にしか捉えることができず、将来の経済的便益の流入又は経済的資源の流出の削減をもたらすかどうかについて不確実性があると考えられることから、費用処理することとした(実務対応報告第47号BC34項)。
② 対価の差金決済を行う場合
対価の差金決済を行う場合において、卸電力市場価格が契約上の固定価格を上回ることにより、需要家が対価を受け取ることとなるときは、当該対価を費用から減額する(実務対応報告第47号第8項)。
(結論の背景)
対価の差金決済を行う場合において、契約上の固定価格と卸電力市場価格の差額に電力量を乗じて得た金額を対価として決定することが一般的であると考えられることを考慮すると、需要家が支払う対価がマイナスとなるのは、卸電力市場価格が当該契約上の固定価格を上回る場合であり、電力量がマイナスとなって需要家が発電事業者に対して非化石価値を引き渡す義務を負うことはない。このことを踏まえると、需要家は常に非化石価値を取得しており、その対価はプラスにもマイナスにもなり得るものと考えられる。このため、非化石価値を受け取る権利について費用処理することとしていることから、需要家が支払う対価がマイナスとなる場合には、マイナスの対価を費用から減額することとした(実務対応報告第47号BC37項及びBC38項)。
③ 子会社又は関連会社への非化石価値の融通
需要家がその子会社又は関連会社に融通する目的で非化石価値を購入する場合、需要家は、子会社又は関連会社へ融通する分も含めて費用処理を行った上で、需要家と子会社又は関連会社の取引について取引の経済実態を適切に表すように両者の合意内容に基づき会計処理を行う(実務対応報告第47号第9項、BC39項及びBC40項)。
実務対応報告第47号では、開示に関する定めは設けられていない。
(結論の背景)
非化石価値を自己使用目的で取得するという実務対応報告第47号の範囲では、次の理由から、特段の開示を求めないこととした。
① 実務対応報告第47号を適用する契約では、自己使用目的の下、自社の電力の消費量の範囲で非化石価値を購入するものと想定される。実務対応報告第47号の開発時点で観察される契約における非化石価値の金額は、電力料金に比べて相対的に少額であり、財務諸表において、電力関連費用を区分して開示していない実務が多い中、非化石価値に関してのみ開示を求めた場合には、電力関連費用の一部のみが開示されることとなり、有用性は乏しいと考えられる。
② 自己使用目的で財又はサービスを購入する長期契約(例えば、商品や材料を購入する長期契約)については、実務対応報告第47号の開発時点の実務において特段の開示は求められていないと考えられる。
③ 実務対応報告第47号を適用する契約では、対価の差金決済を行う場合、卸電力市場価格が下落したときは、需要家の支払額が増加することとなるが、支払額は契約上の固定価格が上限となると考えられる。
ただし、実務対応報告第47号を適用する契約が財務諸表全体の観点から重要であり、利害関係者が企業集団又は企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する適正な判断を行うために必要と認められる場合には、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和38年大蔵省令第59号)等に基づき、追加情報として開示することとなると考えられる(実務対応報告第47号BC43項からBC45項)。
① 適用時期
実務対応報告第47号は、2026年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することとされている。ただし、公表日(2025年11月11日)以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することができる(実務対応報告第47号第10項)。
(結論の背景)
実務対応報告第47号の適用開始日より前に締結されている契約については、実務対応報告第47号の適用により会計処理の変更が生じる場合があると考えられる。したがって、一定の準備期間を確保するために、実務対応報告第47号については、2026年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することとした。ただし、企業会計基準諮問会議に寄せられたテーマ提案では、早期に会計処理を明確化することが要望されており、できるだけ速やかに適用可能とすることへのニーズは一定程度あると考えられることから、公表日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することができることとした(実務対応報告第47号BC46項)。
② 経過措置
適用初年度において、実務対応報告第47号を適用することによりこれまでの会計処理と異なることとなる場合、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱い、次の会計処理を行う(実務対応報告第47号第11項)。
(結論の背景)
実務対応報告第47号を遡及適用する場合、どの時点で金額を合理的に見積ることが可能となるかを判断することになるが、当該判断にあたり用いた情報が対象となる過去の財務諸表が作成された時点で入手可能であった情報か、又はその後に判明した情報であるかどうかを判断することが困難な場合があることから、実務対応報告第47号の適用にあたっては、遡及適用を求めないこととし、適用初年度の期首時点で国による電力量の認定時点が到来しているものに係る金額は、適用初年度の期首の利益剰余金に加減する金額に含めることとした(実務対応報告第47号BC47項及びBC48項)。
ASBJは、2026年2月27日に、実務対応報告第48号「防衛特別法人税の会計処理及び開示に関する当面の取扱い」(以下「実務対応報告第48号」という)を公表した。
2025年3月31日に成立した「所得税法等の一部を改正する法律」(令和7年法律第13号)において、「我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法」(令和5年法律第69号)が改正され、防衛特別法人税は法人税に対する付加税として、2026年4月1日以後に開始する事業年度から課されることとされた(実務対応報告第48号BC2項)。
この点、ASBJは、企業会計基準第27号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」(以下「法人税等会計基準」という)等について、適用対象となる具体的な税金を挙げて当該税金について規定する税法を参照することにより特定するのではなく、適用対象となる税金に関する原則的な定めを置き具体的な税金を特定しない方法に見直すことにより、防衛特別法人税のような新たな税金の創設に対応することとし、基準開発を進めていた(実務対応報告第48号BC3項)。
この見直しの審議において、一定の周知期間又は準備時間を確保する観点から、改正後の法人税等会計基準等については、順調に最終化されたとしても、早くとも2027年4月1日に開始する連結会計年度及び事業年度の期首からの適用になることが考えられ、防衛特別法人税が課される初年度の2026年4月1日に開始する連結会計年度及び事業年度において、防衛特別法人税の会計処理及び開示に関して準拠すべき会計基準等が存在しないこととなると考えられた(実務対応報告第48号BC4項)。
このため、防衛特別法人税の取扱いについては、法人税等会計基準等の見直しに係る改正後の会計基準等とは別に、実務対応報告を公表することで短期的な対応を行うこととし、ASBJは、実務対応報告第48号を公表した(実務対応報告第48号BC5項)。
防衛特別法人税に関する会計処理及び表示については、地方法人税と同様に行うものとして、法人税等会計基準の定めに従う(実務対応報告第48号第7項及び第13項)。
(結論の背景)
防衛特別法人税は、法人税額から基礎控除額を控除した額を課税標準として課すこととされているため、法人税に対する付加税という点において、地方法人税と共通の性質を有していると考えられる(実務対応報告第48号BC7項)。
防衛特別法人税に関する表示については、防衛特別法人税が地方法人税と共通の性質を有していることを考慮し、地方法人税と同様に行うものとして、法人税等会計基準の定めに従うこととした(実務対応報告第48号BC12項)。
防衛特別法人税について、繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる税率は、地方法人税と同様に取り扱うものとして、企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」(以下「税効果適用指針」という)第46項の定めに従う(実務対応報告第48号第8項)。
また、法定実効税率(税効果適用指針第4項(11))については、地方法人税率と同様に防衛特別法人税率を考慮して算定する(実務対応報告第48号第9項)。
(結論の背景)
防衛特別法人税は、法人税に対する付加税として課されるものであることから、法人税その他利益に関連する金額を課税標準とする税金である法人税等に該当すると考えられるため、税効果会計の対象となる税金に含まれると考えられる。また、法定実効税率の定義並びに繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる税率に関する定めについては、適用対象となる税金に関して具体的な税金を挙げて定めている(実務対応報告第48号BC8項)。
なお、ASBJが2025年2月に公表した補足文書「2025年3月期決算における令和7年度税制改正において創設される予定の防衛特別法人税の税効果会計の取扱いについて」に記載されている防衛特別法人税率を考慮した法定実効税率の算式は、以下のとおりである(同補足文書第13項)2ᅠ3。
① 防衛特別法人税に関する会計処理
グループ通算制度を適用する場合において、防衛特別法人税に関する会計処理については、地方法人税と同様に行うものとして、実務対応報告第42号「グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い」(以下「実務対応報告第42号」という)の定めに従う(実務対応報告第48号第10項)。
個別財務諸表において、防衛特別法人税に係る通算税効果額は、当事業年度の所得に対する防衛特別法人税に準ずるものとして取り扱う(実務対応報告第48号第11項)。
(結論の背景)
防衛特別法人税はグループ通算制度の対象となり、地方法人税と共通の性質を有していることを考慮し、グループ通算制度を適用する場合の会計処理については、地方法人税と同様に行うものとして、実務対応報告第42号の定めに従うこととした(実務対応報告第48号BC9項)。
また、防衛特別法人税に係る通算税効果額については、防衛特別法人税の額に相当する金額として、益金の額又は損金の額に算入されない金額であるため、個別財務諸表において、防衛特別法人税に係る通算税効果額は、当事業年度の所得に対する防衛特別法人税に準ずるものとして取り扱うこととした(実務対応報告第48号BC10項)。
② 税効果会計に関する会計処理
グループ通算制度を適用する場合において、防衛特別法人税に係る税効果会計に関する会計処理については、地方法人税と同様に行うものとして、実務対応報告第42号の定めに従う。
また、税効果会計に関する会計処理における防衛特別法人税に係る通算税効果額の取扱いについては、通算税効果額のうち地方法人税に係るものの取扱いと同様に実務対応報告第42号の定めに従う(実務対応報告第48号第12項)。
(結論の背景)
グループ通算制度を適用する場合において、防衛特別法人税に係る税効果会計に関する会計処理については、防衛特別法人税が地方法人税と共通の性質を有していることを考慮し、地方法人税と同様に行うものとして、実務対応報告第42号の定めに従うこととした。
また、防衛特別法人税は地方法人税と共通の性質を有しており、防衛特別法人税に係る通算税効果額が損益通算や欠損金の通算等により生じるものであることは、通算税効果額のうち地方法人税に係るものと同様であるため、防衛特別法人税に係る通算税効果額の取扱いについては、通算税効果額のうち地方法人税に係るものの取扱いと同様に実務対応報告第42号の定めに従うこととした(実務対応報告第48号BC11項)。
③ グループ通算制度を適用する場合の表示及び注記事項
グループ通算制度を適用する場合の防衛特別法人税に関する表示及び注記事項については、基本的に地方法人税と同様に行うものとして、次のとおり実務対応報告第42号の定めに従う(実務対応報告第48号第14項から17項及びBC13項からBC16項)。
実務対応報告第48号は、2026年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する(実務対応報告第48号第18項)。
(結論の背景)
防衛特別法人税は2026年4月1日以後に開始する事業年度から課されることから、実務対応報告第48号についても、2026年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することとした(実務対応報告第48号BC17項)。
ASBJは、2025年10月16日に、企業会計基準第37号「期中財務諸表に関する会計基準」(以下「期中会計基準」という)及び企業会計基準適用指針第34号「期中財務諸表に関する会計基準の適用指針」(以下「期中適用指針」という。また、以下、期中会計基準と合わせて「期中会計基準等」という)4を公表した。
金融商品取引法上の四半期報告書制度の廃止に伴い、2024年3月に、ASBJは、企業会計基準第33号「中間財務諸表に関する会計基準」(以下「中間会計基準」という)及び企業会計基準適用指針第32号「中間財務諸表に関する会計基準の適用指針」(以下「中間適用指針」という。また、以下、中間会計基準と合わせて「中間会計基準等」という)を公表した。この中間会計基準等の検討にあたり、中間決算と四半期決算は同じ会計基準等に基づいて行うべきであるとの意見が聞かれたため、ASBJは、中間会計基準等の公開草案公表時に、今後の基準開発の方向性として中間会計基準等と企業会計基準第12号「四半期財務諸表に関する会計基準」(以下「四半期会計基準」という)及び企業会計基準適用指針第14号「四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針」(以下「四半期適用指針」という。また、以下、四半期会計基準と合わせて「四半期会計基準等」という)を統合した会計基準等の開発を行うかについて意見を募集した。寄せられた意見を踏まえ、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下「連結財務諸表規則」という)第1条第1項第2号に規定する第一種中間連結財務諸表及び「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下「財務諸表等規則」という)第1条第1項第2号に規定する第一種中間財務諸表(以下「第一種中間財務諸表等」という)と金融商品取引所の定める規則に基づく第1四半期及び第3四半期の四半期連結財務諸表及び四半期個別財務諸表(以下合わせて「四半期財務諸表」という)の両方に適用可能となるように、中間会計基準等と四半期会計基準等を統合した会計基準等として、ASBJは、期中会計基準等を公表した(期中会計基準BC2項からBC6項)。
期中会計基準等は、年度より短い期間の企業集団又は企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況について報告するために期中財務諸表を作成する場合に適用する。期中会計基準等の適用対象となる期中財務諸表には、金融商品取引法に基づく半期報告書において開示される第一種中間財務諸表等が含まれる(期中会計基準第3項及びBC21項)。
このため、上場会社(上場特定事業会社5を除く)においては、金融商品取引法に基づく第一種中間財務諸表等並びに金融商品取引所の定める規則に基づく第1四半期及び第3四半期の四半期財務諸表に期中会計基準等を適用することになる6。
一方、金融商品取引法に基づく半期報告書において開示される第二種中間連結財務諸表及び第二種中間財務諸表(以下合わせて「第二種中間財務諸表等」という)については、従来から「中間連結財務諸表作成基準」、「中間連結財務諸表作成基準注解」、「中間財務諸表作成基準」及び「中間財務諸表作成基準注解」(以下合わせて「中間作成基準等」という)が適用されており、中間作成基準等及び中間作成基準等の一部改正が適用される(期中会計基準第3項ただし書き)ことから、期中会計基準等の適用対象となる期中財務諸表には、第二種中間財務諸表等は含まれない。
このため、上場特定事業会社においては、金融商品取引法に基づく第二種中間財務諸表等に中間作成基準等及び中間作成基準等の一部改正を適用し、金融商品取引所の定める規則に基づく第1四半期及び第3四半期の四半期財務諸表に期中会計基準等を適用することになる。
期中会計基準等は、改正後の金融商品取引法に基づく第一種中間財務諸表等と、金融商品取引所の定める規則に基づく第1四半期及び第3四半期の四半期財務諸表の両方に適用可能となるように、中間会計基準等と四半期会計基準等を統合することを目的としているため、次のことを前提としている(期中会計基準BC13項)。
① 中間会計基準等と四半期会計基準等の統合
期中会計基準等は、個別に検討を行ったもの(後述の②から④)を除き、基本的に中間会計基準等と四半期会計基準等の定め及び考え方を引き継いでいる(期中会計基準BC17項)。本稿では、個別に検討を行ったもののみ、以下解説する。
(結論の背景)
金融商品取引法改正後の特定事業会社以外の上場会社においては、金融商品取引法に基づく第一種中間財務諸表等と金融商品取引所の定める規則に基づく第1四半期及び第3四半期の四半期に係る財務情報の作成が求められている。この場合、期首から6か月間を1つの会計期間(中間会計期間)として第一種中間財務諸表等を作成したときと、四半期会計基準等に従い第1四半期決算を前提に第2四半期の会計処理を行ったときとで差異が生じる可能性があるが、同じ企業が作成する期中財務諸表であるにもかかわらず金融商品取引法と金融商品取引所の定める規則のいずれに基づくかにより会計処理に不整合が生じることは適切ではないと考えられる(期中会計基準BC15項)。
このため、金融商品取引法に基づく第一種中間財務諸表等と金融商品取引所の定める規則に基づく四半期に係る財務情報の会計処理が同一の結果となるように、企業の報告の頻度(年次、半期、又は四半期)によって、年次の経営成績の測定が左右されてはならないとする原則を採用することが考えられる。この原則を採用した場合に会計処理に影響が生じる可能性のある項目は、中間適用指針において経過措置として定められた次の項目である(期中会計基準BC16項)。
(1) 有価証券の減損処理及び棚卸資産の簿価切下げに係る方法
(2) 一般債権の貸倒見積高の算定及び未実現損益の消去における簡便的な会計処理
② 有価証券の減損処理及び棚卸資産の簿価切下げに係る方法
期中会計期間末に計上した有価証券の減損処理に基づく評価損の戻入れ及び期中会計期間末における棚卸資産の簿価切下げについては、期中洗替え法による。
ただし、期中適用指針の適用前に中間適用指針又は四半期適用指針に基づき切放し法を適用していた場合には、継続して切放し法を適用することができる。この場合に、当期中会計期間を含む事業年度において、当期中会計期間末より前の期間に期中適用指針に基づき期中切放し法を適用しているときは、減損処理後の帳簿価額又は簿価切下げ後の帳簿価額を取得原価として当期中会計期間末に期中切放し法を適用する。期中切放し法を適用する場合には、その旨を注記する(期中適用指針第4項及び第7項)。
(結論の背景)
期中会計基準等では、企業の報告の頻度(年次、半期、又は四半期)によって、年次の経営成績の測定が左右されてはならないとする原則を採用している。当該原則は、洗替え法とは整合していると考えられるが、企業の報告の頻度によって会計処理の結果が異なることになると考えられるため中間切放し法及び四半期切放し法とは整合しないと考えられる。このため、期中適用指針では期中洗替え法を原則とした(期中適用指針BC13項)。
一方、従前から期中会計期間末に切放し法を適用していた企業においては、これまで会計方針の選択にあたり年度と同様の会計方針を採用していたものであり、前項の理由により期中洗替え法が原則となるとしても、これまでの会計方針の選択の判断が必ずしも否定されるものではないと考えられる(期中適用指針BC14項)。
また、期中切放し法を認めないとした場合には、従前から切放し法を適用していた企業について、期中洗替え法への変更により追加的な負担が発生する可能性もあると考えられるが、コストの削減や開示の効率化という金融商品取引法の改正の趣旨を踏まえると、企業の追加的な負担が生じないように例外的な取扱いを認めることも必ずしも否定されるものではないとも考えられる(期中適用指針BC15項)。
③ 一般債権の貸倒見積高の算定における簡便的な会計処理
期中会計期間末における一般債権に対する貸倒見積高は、次のように算定することができる(期中適用指針第3項)。
④ 未実現損益の消去における簡便的な会計処理
連結会社相互間の取引によって取得した棚卸資産に含まれる期中会計期間末における未実現損益の消去にあたっては、期中会計期間末在庫高に占める当該棚卸資産の金額及び当該取引に係る損益率を合理的に見積って計算することができる。また、次のように計算することができる(期中適用指針第31項)。
⑤ 他の会計基準等についての修正
(他の会計基準等についての修正の方針)
従来、中間会計基準等及び四半期会計基準等以外の他の企業会計基準及び企業会計基準適用指針(以下「他の企業会計基準及び企業会計基準適用指針」という)の一部において、四半期財務諸表又は第二種中間財務諸表等の取扱いが定められていた。会計基準の改正等に伴う他の会計基準等の改正又は修正については、用語の置き換え等により対応することが一般的であるが、期中会計基準等の開発にあたり個別のテーマに関する企業会計基準及び企業会計基準適用指針については年度の会計処理及び開示を取り扱うものと整理し、他の企業会計基準及び企業会計基準適用指針において定めている四半期財務諸表の取扱いを期中会計基準等に取り込むこととした(期中会計基準BC19項)。
一方、実務対応報告は「企業会計基準がない分野についての当面の取扱い、緊急性のある分野についての実務上の取扱いなど」7とされており、移管指針は「日本公認会計士協会が公表した企業会計に関する実務指針及びQ&Aを形式以外の変更を行わずに委員会に移管したもの(移管後、改正又は修正を行ったものを含む)」7とされているため、実務対応報告及び移管指針において期中財務諸表に関する取扱いが定められている場合は、期中会計基準等及び中間作成基準等には取り込まず、実務対応報告及び移管指針についての修正等を行うこととした(期中会計基準等の「公表にあたって」参照)。
(他の企業会計基準及び企業会計基準適用指針が定める四半期の取扱いの期中会計基準等への取り込み)
上述の方針に従い、他の企業会計基準及び企業会計基準適用指針において定めている四半期財務諸表の取扱いを期中会計基準等に取り込むにあたっては、次のとおりとすることとした(期中会計基準BC19項)。
(他の企業会計基準及び企業会計基準適用指針が定める中間の取扱いの期中会計基準等への取り込み)
他の企業会計基準及び企業会計基準適用指針において第二種中間財務諸表等の取扱いを定めていたもののうち四半期財務諸表及び第一種中間財務諸表等の取扱いを定めていない取扱いについては、次のとおり期中財務諸表における取扱いを明らかにし、期中適用指針に取り込むこととした(期中会計基準BC20項)。
① 適用時期
期中会計基準等は、2026年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の最初の期中会計期間から適用する(期中会計基準第34項及び期中適用指針第72項)。早期適用の定めはない。
(結論の背景)
期中会計基準等は、できるだけ速やかに適用可能とすることへのニーズがあると考えられる。また、中間会計基準等と四半期会計基準等を統合しているため、個別に検討を行った取扱いを除き、基本的に中間会計基準等と四半期会計基準等の定め及び考え方を引き継いでおり、基本的に従前の取扱いを踏襲することになると考えられる。
ただし、個別に検討を行った取扱いのうち、有価証券の減損処理及び棚卸資産の簿価切下げに係る方法については、期中洗替え法が原則とされたことに伴い、従来切放し法を適用していた会社が期中適用指針の適用時に期中洗替え法に変更する場合には、会計方針の変更に該当すると考えられる。しかしながら、有価証券の減損処理及び棚卸資産の簿価切下げに係る方法として期中適用指針の適用前から中間適用指針及び四半期適用指針に基づき切放し法を適用していた場合には、継続して切放し法を適用することができるとしているため、会計方針の変更が行われる場合は限定的であると考えられる。
以上を踏まえ、2026年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の最初の期中会計期間から適用することとした(期中会計基準BC45項からBC46項)。
② 経過措置
期中会計基準等の適用初年度において、期中会計基準等の定めに従い会計方針を変更する場合には、新たな会計方針を適用初年度の最初の期中会計期間から将来にわたって適用する(期中会計基準第35項及び期中適用指針第73項)。
(結論の背景)
期中適用指針の適用に伴い、有価証券の減損処理又は棚卸資産の簿価切下げに係る方法を切放し法から期中洗替え法に変更する場合、新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用するときは、過去の期中会計期間に行った切放し法による計算を期中洗替え法により再計算することとなる。過去の期中会計期間について有価証券の銘柄ごと、又は棚卸資産の品目ごとに再計算することの実務負担を考慮し、有価証券の減損処理及び棚卸資産の簿価切下げに係る方法について期中洗替え法に変更する場合、期中適用指針の適用初年度においては、遡及適用をせず、適用初年度の最初の期中会計期間から将来にわたって適用することとした(期中適用指針BC32項)。
補足文書8は、実務において参考となるように、実務対応報告及び移管指針において定めている期中財務諸表における会計処理及び開示に関する定めの内容を提供している。
期中会計基準等では、実務対応報告及び移管指針において期中財務諸表に関する取扱いが定められている場合は、期中会計基準等又は中間作成基準等には取り込まず、実務対応報告及び移管指針についての修正等を行うこととした。この点、審議の過程において、「期中会計基準等をみれば期中の会計処理や注記が分かるように、実務対応報告や移管指針で定められている期中の取扱いについても期中会計基準等に取り込むか言及すると、より使いやすい基準等になると考える」との意見が聞かれた。
検討の結果、実務において参考となる情報を提供することを目的として、補足文書を公表し、実務対応報告及び移管指針において定めている期中財務諸表における会計処理及び開示に関する定めの内容を提供することとした。
以 上
1 特定卸供給事業者とは、電気事業法第2条第1項第15号の4に規定する特定卸供給事業を営むことについて同法第27条の30第1項の規定による経済産業大臣への届出をした者をいう(実務対応報告第47号第5項(5)参照)。
2 防衛特別法人税の課税標準の計算において法人税額から基礎控除額として500万円を控除することが予定されているが、この算式においては考慮されていない。
3 ASBJが2026年1月に公表した補足文書(案)「我が国における課税対象利益を基礎とする税金及び税効果会計における税率に関する取扱いについて(案)」第9項においても、同様の算式が示されている。
4 このほか、企業会計基準第38号「『中間連結財務諸表等の作成基準』の一部改正」(以下「中間作成基準等の一部改正」という)並びに関連する企業会計基準及び企業会計基準適用指針の改正が公表されている。
5 企業内容等の開示に関する内閣府令(昭和48年大蔵省令第5号)(以下「開示府令」という)第18条第2項に定める事業を行う会社を以下「特定事業会社」という(開示府令第4号の3様式の記載上の注意(5)a)。
6 金融庁は、2026年3月31日に、期中会計基準を連結財務諸表規則第1条第3項及び財務諸表等規則第1条第3項に規定する一般に公正妥当と認められる企業会計の基準として指定している。また、日本取引所グループにおける「四半期財務諸表等の作成基準」(2026年4月1日以後に開始する事業年度又は連結会計年度の最初の四半期会計期間又は四半期連結会計期間から適用)においても、期中会計基準に準拠することとされている。
7 「企業会計基準及び修正国際基準の開発に係る適正手続に関する規則」第11条参照。
8 補足文書は、実務において参考となる情報を提供することを目的としており、企業会計基準、企業会計基準適用指針、実務対応報告及び移管指針を追加又は変更するものではなく、企業会計基準等の適用にあたって参考となる文書である。