企業会計基準委員会(以下「ASBJ」という。)より、2026年1月9日に、企業会計基準公開草案第94号「法人税等に関する会計基準(案)」(以下「法人税等会計基準案」、現行の基準を「法人税等会計基準」という。)が公表された1。
これに関連して以下の公開草案等も合わせて公表されている。
これらの公開草案等に対するコメント募集の期限は2026 年3月9日(月)である。
また、2025年11月20日に実務対応報告公開草案第72号「防衛特別法人税の会計処理及び開示に関する当面の取扱い(案)」(以下「実務対応報告公開草案第72号案」という。)が公表された2。
この公開草案に対するコメント募集は2026年1月20日(火)を期限として行われた。
法人税等会計基準は、具体的な税金を挙げて、当該税金について規定する税法を参照することにより適用対象となる税金を特定して会計処理及び開示について定めていたことから、個別の税金の創設を受けて都度改正を行ってきた。2024年年次改善プロジェクトの審議の過程において、その適用対象となる税金に関して、具体的な税金を挙げて当該税金について規定する税法を参照することにより特定するのではなく、原則的な定めを置き具体的な税金を特定しない方法に見直すことを検討してはどうかとの意見が聞かれたことから、2024年11月の公開草案「2024年年次改善プロジェクトによる企業会計基準等の改正(案)」の公表時に、法人税等会計基準の適用対象となる税金を特定する方法を見直すことについて、市場関係者からコメントを募集したところ、概ね支持するコメントが寄せられた。これらを受けて、ASBJで審議され、今般、法人税等会計基準案等が公表された。
現行基準である法人税等会計基準は、主として法人税、地方法人税、住民税、事業税及び特別法人事業税など、具体的な税金を特定し、当該税金に関する会計処理及び開示を定めている。そのため、令和7年度税制改正により防衛特別法人税が創設され、2026年4月1日以後に開始する事業年度から課されることに伴い、税効果会計の取扱いを明確にすることを目的として、2025年2月20日に、補足文書「2025年3月期決算における令和7年度税制改正において創設される予定の防衛特別法人税の税効果会計の取扱いについて」が公表された。
さらに、2025年11月20日に、税効果会計だけではなく当期税金の取扱いも明らかにすることを目的として、実務対応報告公開草案第72号案が公表されている。防衛特別法人税は、法人税額から基礎控除額を控除した額を課税標準として課すこととされているため、法人税に対する付加税という点において、地方法人税と共通の性質を有していると考えられる。このような防衛特別法人税の性質を考慮して、防衛特別法人税に関する会計処理及び表示については、地方法人税と同様に行うものとして、法人税等会計基準の定めに従うことが提案されている(実務対応報告公開草案第72号案7項、13項、BC7項及びBC12項)。
個別の税金が税制改正により創設される都度、法人税等会計基準を改正する場合、税制改正から適用までの短期間で会計基準等の改正を行う必要があり、場合によっては上述したように、補足文書等で対応することもあった。
法人税等会計基準案では、個別の税金が税制改正により創設されてもその都度会計基準等を改正しなくてもよいよう、具体的な個別の税金に関する会計処理及び開示を定めることを目的とするのではなく、主として法人税その他の課税対象利益を基礎とする税金に関する会計処理及び開示を定めることを目的としたうえで、課税対象利益を基礎とする税金と課税対象利益を基礎とする税金に該当しないものに区分し、各々の取扱いを定めることが提案されている。
ここで、法人税等会計基準案では、「課税対象利益」と「課税対象利益を基礎とする税金」を以下のように定義することが提案されている。
なお、課税対象利益は、課税年度の法人所得に対して課される税金の課税標準となるものであり、我が国における課税対象利益に該当するものの例として、法人税法における「所得の金額(又は欠損金額)」が挙げられている(法人税等会計基準案28-3項)。課税対象利益を基礎とする税金には、定義の中の例示に示されたように、所得の特定の部分を課税標準として課される税金及びその付加税が含まれると考えられる(法人税等会計基準案28-4項)とされている。
法人税等会計基準案で提案されている課税対象利益を基礎とする税金と課税対象利益を基礎とする税金に該当しないものの会計処理と開示の概要は【図表1】の通りである。なお、【図表1】では当事業年度に生じたものの会計処理と開示のみ記載しているため、還付や更正等の取扱いは法人税等会計基準案を参照いただきたい。
提案されている主な改正点として、①住民税(均等割)は法人税等会計基準で損益計算書の税引前当期純利益(又は損失)の次に、「法人税、住民税及び事業税」等の適切な科目をもって表示する取扱いとしているが、法人税等会計基準案では損益計算書の売上原価、販売費及び一般管理費又は営業外費用のうち適切な表示区分に表示することが提案されている(法人税等会計基準案18-2項)。また、②事業税(付加価値割)及び事業税(資本割)は、法人税等会計基準で、「原則として、損益計算書の販売費及び一般管理費として表示する。ただし、合理的な配分方法に基づきその一部を売上原価として表示することができる。」(法人税等会計基準10項)としているが、法人税等会計基準案では損益計算書の売上原価、販売費及び一般管理費又は営業外費用のうち適切な表示区分に表示することが提案されている(法人税等会計基準案18-2項)。
法人税等会計基準案にて「課税対象利益を基礎とする税金」の定義が提案されたことを受けて、税効果会計基準の「第一 税効果会計の目的」の定めにおける法人税等の定義の改正が提案されている(税効果会計基準一部改正案BC2項)。この改正は、従来の法人税その他利益に関連する金額を課税標準とする税金と意味するところは変わらず、税効果会計の対象となる税金に関して変更を意図するものではないとされている(税効果会計基準一部改正案BC3項)。
税効果適用指針では、法定実効税率の具体的な算式が定められているが、税効果適用指針案では、法定実効税率を課税対象利益に対する税負担率と定義し(税効果適用指針案4項(11))、具体的な算式は後述の補足文書にて示すことが提案されている。また、法人税等会計基準案で原則的な定めを置き具体的な税金を特定しない方法に見直すことが提案されていることから、税効果適用指針案は国税と地方税を定義(税効果適用指針案4項(12)(13))したうえで、繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる税率の定めにつき、課税主体に着目した税金の分類により文言の見直しが提案されている(税効果適用指針案150-3項)。これに伴い、「[設例10]法定実効税率の算定」、「[設例11]改正地方税法等が決算日以前に成立し、当該改正地方税法等を受けた改正条例が当該決算日に成立していない場合の法定実効税率の算定」を削除し、後述の補足文書にて示すことが提案されている。
法人税等会計基準案で適用対象となる税金の定め方の見直しを行ったことを受け、実務対応報告第42号案の目的をグループ通算制度を適用する場合における法人税などのグループ通算制度の対象とされている税金及び税効果会計の会計処理及び開示の取扱いを明らかにすることを目的とする(実務対応報告第42号案2項)としたうえで、これに整合するよう表現の見直しを行うことが提案されている(実務対応報告第42号案36-2項)。
また、「[設例5]繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる税率」を削除し、後述の補足文書にて示すことが提案されている。
キャッシュ・フロー作成基準一部改正案では、法人税その他の課税対象利益を基礎とする税金を法人税等と定義することが提案されている(キャッシュ・フロー作成基準一部改正案2項及びBC2項)。現行基準との比較は【図表3】を参照いただきたい。
キャッシュ・フロー実務指針案では、住民税(均等割)は「営業活動によるキャッシュ・フロー」に含まれるキャッシュ・フローではあるが、事業税(付加価値割)及び事業税(資本割)と同様に「法人税等の支払額」に含めてはならないことが提案されている(キャッシュ・フロー実務指針案第10項及び第35-2項)。これは、法人税等会計基準案における住民税(均等割)の損益計算書における表示に関して、事業税(付加価値割)及び事業税(資本割)と整合的に取扱うという提案と合わせた提案をするものである。
法人税等会計基準案では個別の税金ごとの具体的な取扱いを示さないことが提案され、個別の税金ごとの具体的な取扱いは補足文書で示すことが提案されている。この補足文書案には、以下の項目に関して記載されている。
また、税効果適用指針案と実務対応報告第42号案で削除することが提案されている税効果会計における税率に関する取扱いについての設例は、補足文書の別紙に記載することが提案されている。税効果適用指針及び実務対応報告第42号と補足文書案で示されている別紙の対応関係は以下の通りである。
法人税等会計基準案により、適用時期について以下の提案がされている(法人税等会計基準案20-7項)。
また、法人税等会計基準案及びキャッシュ・フロー実務指針案では、適用初年度の比較情報について、住民税(均等割)に関して新たな表示方法に従い組替えを行うことを要しないことが提案されている(法人税等会計基準案20-8項及びキャッシュ・フロー実務指針案26-10項)。
また、実務対応報告第72号案は法人税等会計基準案が最終化された会計基準等の適用により、その適用を終了する予定である(法人税等会計基準案21-2項及び50項)。
法人税等会計基準案等は住民税(均等割)の表示を除くと従来からの取扱いを大きく変更するものではないが、定義が変更されることに伴い複数の基準の定めに影響があるため留意されたい。
これらの公開草案では、適用対象となる税金に関して、具体的な税金を挙げて当該税金について規定する税法を参照することにより特定するのではなく、原則的な定めを置き具体的な税金を特定しない方法への変更が提案されているため、どのような税金がその定めに合致するかの判断は実務にゆだねられることになると考えられる。企業会計基準等の補足文書は、企業会計基準等の適用にあたって参考となる文書であり、企業会計基準等の一部ではないが、法人税等会計基準案で提案している定義に合致する税金について補足文書により情報提供されるという構造となる。税制改正によって個別の税金の創設又は廃止が行われたときであっても、企業会計基準等の改正を行うことなく、補足文書の変更により機動的に情報提供されることで実務上の利便性が向上することが期待される。
1 リンク先のASBJのホームページを参照のこと。
(https://www.asb-j.jp/jp/project/exposure_draft/y2026/2026-0109.html)
2 リンク先のASBJのホームページを参照のこと。
(https://www.asb-j.jp/jp/project/exposure_draft/y2025/2025-1120.html)