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後発事象に関する会計基準(案)(企業会計基準公開草案第87号)等の解説

有限責任監査法人トーマツ 公認会計士 山田ᅠ正顕

1.ᅠはじめに

2025年7月8日に、企業会計基準委員会(ASBJ)は、次の企業会計基準及び企業会計基準適用指針の公開草案(以下合わせて「本公開草案」という)を公表した1

  • 企業会計基準公開草案第87号「後発事象に関する会計基準(案)」(以下「後発事象会計基準案」という)
  • 企業会計基準公開草案第88号「『中間連結財務諸表等の作成基準』の一部改正(そのX)(案)」(以下「中間作成基準等の一部改正案」という)
  • 企業会計基準適用指針公開草案第87号「後発事象に関する会計基準の適用指針(案)」(以下「後発事象適用指針案」という)

また、併せて補足文書(案)「開示後発事象の例示及び開示内容の例示について(案)」(以下「後発事象補足文書案」といい、本公開草案と後発事象補足文書案を合わせて「本公開草案等」という)を公表した。

本公開草案等では、原則として日本公認会計士協会(JICPA)が公表した監査・保証基準委員会ᅠ監査基準報告書560実務指針第1号「後発事象に関する監査上の取扱い」(以下「監基報560実1」という)で示されている会計に関する内容を踏襲して移管することが基本的な方針とされている。そのうえで、後発事象の対象期間の整理を行い、新たな注記事項について提案されている。本公開草案等に対するコメント期限は2025年9月12日である。

本稿では、本公開草案等の概要について解説する。

2.ᅠ公表の経緯

後発事象に関する取扱いについて、IFRS会計基準(IFRS)では国際会計基準(IAS)第10号「後発事象」(以下「IAS第10号」という)に取扱いが定められ、米国会計基準ではTopic855「後発事象」に取扱いが定められている。

一方、我が国では、後発事象に関する取扱いを定めた包括的な会計基準はなく、監基報560実1において、定義や取扱いなどが定められ実務が行われてきた。

2024年6月21日に、ASBJは「継続企業及び後発事象に関する調査研究」を公表した2。調査研究では、監基報560実1における定めを会計に関する内容と監査に関する内容に切り分けて、会計に関する内容について会計基準で用いられる表現に見直した上でASBJに移管することは原則として可能と整理された。当該調査研究の結果を踏まえると、監基報560実1をASBJの会計基準に移管することにより、我が国の会計基準の全体像を把握しにくいなどの指摘されている課題に対応することとなり、会計基準の体系の完全性の改善が見込まれることから、ASBJにおいて検討が行われ、本公開草案等が公表された。

3.ᅠ移管にあたっての基本的な方針

本公開草案の開発にあたっては、後発事象の定義、会計処理及び開示等を取り扱う包括的な会計基準を設定することを優先的な課題とし、原則として監基報560実1で示されている会計に関する内容を踏襲して移管することが基本的な方針とされている(後発事象会計基準案BC7項)。

本公開草案では、この基本的な方針に従い、後発事象に係る会計処理及び開示に関して監基報560実1で示されていた「修正後発事象についての基本的な考え方」及び「開示後発事象についての基本的な考え方」を踏襲した上で、表現の見直し及び後発事象の対象期間の整理等が行われている(後発事象会計基準案BC8項)。

4.ᅠ後発事象の定義

(1)後発事象の定義及び対象期間に関する基本的な取扱い

後発事象会計基準案において、後発事象は「決算日後に発生した企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす会計事象のうち、財務諸表の公表の承認日までに発生した会計事象をいう。」と定義されている(後発事象会計基準案第3項)。

移管にあたっての基本的な方針に従い、「決算日後に発生した企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす会計事象」という表現は監基報560実1の表現を踏襲しているが、監基報560実1の「監査報告書日」という表現は「財務諸表の公表の承認日」に見直すことが提案されている。この見直しにより、後発事象の対象期間の取扱いは、IAS第10号及び我が国のサステナビリティ開示基準における取扱いと整合することになると考えられる。

後発事象会計基準案では、「財務諸表の公表の承認日」について、財務諸表を公表することを承認する権限を有する社内の機関又は個人が公表を承認した日付を指すとしている。また、「財務諸表を公表することを承認する権限を有する社内の機関又は個人」は、企業の経営とガバナンスの構造に基づき決定されると考えられるため、企業ごとに異なり得るとしている(後発事象会計基準案BC15項)。

連結財務諸表においては、監基報560実1の取扱いを踏襲し、「決算日後」を「連結決算日後」と読み替え、連結子会社及び持分法適用会社(以下「連結子会社等」という)については、「連結決算日後」を「連結子会社等の決算日後」と読み替えることが提案されている(後発事象会計基準案第3項)。

(2)会計監査人設置会社の計算書類等及び連結計算書類における後発事象の対象期間

会計監査人設置会社(会社法(平成17年法律第86号)第2条第11号)において作成される計算書類及び附属明細書(以下「計算書類等」という)又は連結計算書類に関する「財務諸表の公表の承認日」については、「企業が一般に公正妥当と認められる企業会計の基準及び会社計算規則(平成18年法務省令第13号)に準拠して計算書類等又は連結計算書類を作成する監査契約上の責任を果たしたことを確認した日(以下「確認日」という)」とすることが提案されている(後発事象適用指針案第3項ただし書き)。

ここで、会計監査人は、日本公認会計士協会ᅠ監査・保証基準委員会ᅠ監査基準報告書580「経営者確認書」第8項及び第9項において、財務諸表に対する最終的な責任を有し、確認事項についての知識を有する経営者に対して、監査契約書に記載されたとおり、適用される財務報告の枠組みに準拠して財務諸表を作成する責任を果たした旨の経営者確認書を提出するように要請することが求められている。このため、後発事象適用指針案第3項ただし書きの確認日は、通常、経営者確認書の日付と同一になると考えられる(後発事象適用指針案BC7項)。

また、企業において監査契約上の責任を果たしたことの確認を行う者は、企業の経営とガバナンスの構造により異なると考えられるが、業務執行の権限を有する最高経営責任者(当該役職名を使用していない場合にはその他の同等の者。また、財務報告に関し、最高経営責任者に準ずる責任を有する者として、最高財務責任者を定めている場合には、当該者を含む)が想定されると考えられる(後発事象適用指針案BC6項)。

(3)期中における後発事象の定義

(1)の後発事象の定義の変更に伴い、第一種中間財務諸表、四半期財務諸表及び第二種中間財務諸表について定めている企業会計基準第33号「中間財務諸表に関する会計基準」(以下「中間会計基準」という)、企業会計基準適用指針第32号「中間財務諸表に関する会計基準の適用指針」(以下、中間会計基準と合わせて「中間会計基準等」という)、企業会計基準第12号「四半期財務諸表に関する会計基準」(以下「四半期会計基準」という)、企業会計基準適用指針第14号「四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針」(以下、四半期会計基準と合わせて「四半期会計基準等」という)及び企業会計審議会が1998年(平成10年)3月13日に公表した「中間連結財務諸表等の作成基準」における後発事象の対象期間についての定めも、「財務諸表の公表の承認日」と整合する表現に見直すことが提案されている(後発事象会計基準案ᅠ本会計基準の公表による他の会計基準等についての修正(2)、(5)、(6)及び(8)、並びに中間作成基準等の一部改正案第2項及び第3項)。

(4)修正後発事象及び開示後発事象の定義

後発事象会計基準案では、修正後発事象と開示後発事象の定義について、監基報560実1の表現が踏襲されている。

5.ᅠ会計処理

(1)修正後発事象に関する基本的な取扱い

重要な修正後発事象については、財務諸表を修正することが提案されている(後発事象会計基準案第6項)。

(2)会計監査人設置会社における確認日後に発生した修正後発事象の取扱い

会計監査人設置会社における計算書類等又は連結計算書類に関する確認日後に、金融商品取引法(昭和23年法律第25号)に基づき作成される個別財務諸表又は連結財務諸表の公表の承認日までに修正後発事象が発生した場合には、監基報560実1の特例的な取扱いを基本的に踏襲し、修正後発事象として取り扱わず、開示後発事象に準じて取り扱うことが提案されている(後発事象適用指針案第4項)。

後発事象適用指針案では、金融商品取引法監査における連結財務諸表に関する特例的な取扱いについて、連結計算書類に関する確認日と連結財務諸表の公表の承認日との間に発生した修正後発事象を対象とする方がより整合的な取扱いとなると考えられることや、現行実務においては基本的に計算書類等と連結計算書類の監査報告書日が同一日付となっていることを踏まえ、連結計算書類に関する確認日後、連結財務諸表の公表の承認日までに発生した修正後発事象について開示後発事象に準じて取り扱うように、監基報560実1から表現の見直しが行われている(後発事象適用指針案BC9項)。

6.ᅠ開示

(1)開示目的

重要な開示後発事象に関する注記における開示目的は、開示後発事象が発生した場合に当該開示後発事象が将来の企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に及ぼす影響を財務諸表利用者が理解できるように十分な情報を開示することにあるとすることが提案されている(後発事象会計基準案第7項)。

(2)注記事項

次の注記を行うことが提案されている。

(3)期中の取扱い

後発事象会計基準案において新たに注記を求めた「財務諸表の公表の承認日及び財務諸表の公表を承認した機関又は個人の名称」について、後発事象会計基準案では、中間会計基準等及び四半期会計基準等の改正が提案されていない。

なお、本公開草案と併せて公表されている「コメントの募集及び本公開草案の概要」の(別紙)では、本公開草案が最終化されるまでに、2025年4月23日にASBJが公表した企業会計基準公開草案第83号「期中財務諸表に関する会計基準(案)」及び企業会計基準適用指針公開草案第85号「期中財務諸表に関する会計基準の適用指針(案)」が最終化された場合に、後発事象会計基準案が提案する他基準修正を反映した案が参考として記載されており、期中財務諸表においても「財務諸表の公表の承認日及び財務諸表の公表を承認した機関又は個人の名称」についての注記は求めないことが提案されている。

7.ᅠ適用時期等

(1)適用時期

早期適用の定めを設けず、公表から概ね1年程度経過後最初に到来する4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することが提案されている(後発事象会計基準案第11項)。

(2)経過措置

適用初年度においては、遡及適用を行わず、公表から概ね1年程度経過後最初に到来する4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度から将来にわたって適用することが提案されている(後発事象会計基準案第12項)。

8.ᅠ補足文書(案)

後発事象会計基準案が確定して企業会計基準第XX号「後発事象に関する会計基準」として公表された場合に、仮にJICPAにより監基報560実1が廃止されたとき、監基報560実1に示されていた開示後発事象の例示及び開示内容の例示の内容を提供することを目的として、補足文書を公表することが提案されている。

後発事象補足文書案は、監基報560実1時において示されていた開示後発事象の例示及び当該例示に対応する付表2「開示後発事象の開示内容の例示」がそのまま示されている。例えば、開示後発事象の例示として、重要な事業の譲受が示されており、この場合の開示する事項として、「その旨及び目的」、「譲り受ける相手会社の名称」、「譲り受ける事業の内容」、「譲り受ける資産・負債の額」、「譲受の時期」及び「その他重要な特約等がある場合にはその内容」が例示されている。

以 上

1 ASBJのホームページを参照(https://www.asb-.jp/jp/project/exposure_draft/y2025/2025-0708.html
2 ASBJのホームページを参照(https://www.asb-.jp/jp/misc/misc_others/2024-0621.html

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