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監査調書のレビューにAIエージェントを導入、約5,000人が活用予定

監査調書のレビューの他、開示書類の準拠性チェック等、監査での生成AIの活用範囲を順次拡大

有限責任監査法人トーマツは2025年10月より、監査プラットフォーム「Omnia」に監査調書のレビューを行うAIエージェントを搭載し、利用を開始します。

AIエージェントによる監査調書のレビュー機能を約5,000人が利用

有限責任監査法人トーマツでは、監査におけるAIエージェントの活用がすでに広く浸透しており、4,000人以上が日常的に利用しています。例えば、企業や業界、勘定残高の分析に活用することでリスク評価を高度化しているほか、会計監査の基準や社内の監査知見等について、迅速かつ網羅的な調査を行うために活用しています。これらの取り組みは、監査の品質を効率的に向上させるばかりか、会計士が高度な判断や企業への洞察を提供するためのコミュニケーションに、より多くの時間を割くことを可能としており、監査を通じた提供価値を高めています。

2025年8月には、有価証券報告書にて開示されるサステナビリティ情報について、AIエージェントが課題と修正のポイントを抽出するチェック機能の利用も開始しています。

さらに、2025年10月には、監査プラットフォーム「Omnia」に監査調書のレビューを行うAIエージェントを新たに搭載し、監査現場の会計士ら約5,000人が利用する予定です。

監査調書レビュー機能

監査チームのユーザーがOmnia上で監査調書を作成した後、AIエージェントが初稿を分析し、最新の監査手法に照らして記載内容の不足を点検します。さらに、グローバル共通の監査アプローチや所定の文書化手法に準拠しているかを判定し、調書の記述に対する具体的な改善ポイントを提示します。ユーザーはAIエージェントの提案内容を確かめ、必要に応じて自ら記載内容を修正します。最新の監査手法および監査アプローチに則した手続の実施と文書化の一貫性が担保されることで、監査品質を効率的に強化します。

監査調書は、初稿作成後に上位者によるレビューが必要ですが、本機能の導入により、作成者自身によるセルフチェックの実施が可能となります。これは、レビュアーの負担を軽減する他、若手会計士にとっては、AIを活用した学習の機会にもつながります。

Omniaに搭載されるAIエージェント機能

監査調書レビュー機能のほかに、以下の機能が搭載されます。

  • データ抽出プロセスの効率化
    生成AIが複数の文書にわたる情報を要約することで、監査チームはより深い洞察を提供するとともに、結論に迅速に到達することが可能
  • 高度なドラフト作成機能
    生成AIを活用したワークフローにより、監査関連のコミュニケーション文書や会計論点メモの初稿が作成可能
  • 調査機能の強化
    監査チームからの質問に迅速に回答することで、難解な会計トピックを統合的に整理することが可能となり、新たな洞察を導き出すことを支援
  • 財務諸表のナビゲーション強化
    監査チームはアップロードされた財務諸表のドラフトからチャットボットを介して関連情報を探索の上、記載内容に関する詳細な質問をすることが可能となる。これにより、開示チェック業務の効率化を実現

また、以下の機能を開発中です。

  • プロアクティブなリスク管理
    リスク事象に関する外部情報源を評価し、潜在的な監査リスク要因を特定するためのリスク識別

今後の機能拡張予定

現在、AIエージェントによるベテラン会計士の思考プロセスを再現する機能を開発中です。本機能は、外部情報に加え、これまでトーマツが独自に蓄積してきた監査知見(形式知)と、監査経験が豊富なベテラン会計士が有する知見(暗黙知)を組み合わせることで、より高度な分析・判断を可能にします。監査チームは、横断的なインサイトをその場で迅速に引き出し、被監査会社の未来を見据えた対策を協議する際に活用します。

さらに、開示書類に対する各種基準への準拠性をチェックする機能の開発も進めています。

AIエージェントがもたらす監査の未来

AIエージェントの活用の拡充により、AIはデジタルスペシャリストとして人間と協働します。会計士の習熟スピードが向上し、より高度な業務への早期対応を実現します。会計士は専門知識に加えて、実務経験で培った知性や判断力、職業的懐疑心を発揮して、AIの提案を価値へと昇華させる役割を担います。トーマツは、人間の知見とAIの融合によって監査業務を効率化し、被監査会社の負担も軽減します。そして、被監査会社を先回りした協議や提案に多くの時間を費やすことを可能にし、監査の提供価値を向上させます。

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