メインコンテンツに移動する

静岡市様向け災害時総合情報システムの提供

新システムのユーザー数は旧システムの約4.5倍で、飛躍的に増加

2022年台風15号により防災業務の課題が顕在化

静岡市は元々防災DXに注力してきたが、さらなる加速の契機となったのは、2022年9月に発生した台風15号である。猛烈な降雨により河川が氾濫し、床下浸水、道路の通行止め、停電・断水などのライフライン被害が市内各所に及んだ。静岡市は台風の通り道に位置し、大雨の際に氾濫可能性のある河川も多く被害も深刻化していたことから、市民の命と暮らしを守るための実用的かつ即応性の高い情報システム構築の必要性が再認識され、2023年から「静岡型災害時総合情報サイト」の基本計画策定業務に着手した。基本計画策定業務の中で抽出した防災業務上の課題のうち、静岡市で特に急ぎ解決すべきとした課題についてご紹介する。

(A) 庁内の関連システム乱立による、情報の分散及び対応判断の難しさ(自治体職員)
2021年から導入していた「災害情報基幹システム」を基幹の中心システムとして被害報告管理等に活用していながらも、その他の災害関連情報を別システムやアナログで収集し、収集した情報を踏まえて対応判断を行うという業務方法を採用していた。

(B) 避難所管理・入退所時の手続きが非効率(自治体職員・住民)
災害発生を検知した段階で避難所管理者が避難所に急行し避難所開閉所を判断の上災害対策本部へ報告する業務において、報告作業が業務PCを想定したインターフェースとなっていたが、避難所管理者は管理者用のスマートフォンから報告作業を行っていた。そのため報告作業の煩雑さが課題となっていた。 


(C) 災害関連情報の最適な入手先がない(住民)
静岡市においては、市民へ災害関連情報を周知するポータルサイトは既に実装されていた。一方で、市民の情報ニーズを満たしていないことや、市内の関連情報を特にフィルターを設けることなく同粒度で表示していたことから、「自身に関係がある情報とない情報が混在している」との所感を抱かれていたため、災害時に必要なよりきめ細やかな情報の掲載を求められていた。

 

課題を解決すべく開発されたのが、静岡市災害時総合情報システム

静岡市で構築したシステムの全体図
出所 : 静岡市内部災害情報システム利用マニュアル

 

システムは大きく4つのシステムで構成されており、主に被害状況を管理する「災害情報基幹システム」、災害情報を収集し被害リスクを分析・可視化する「災害情報分析・可視化システム」、避難所管理業務をデジタル化する「Smart BOSAI Connect(以下、SBC)」、市民に向けて防災情報を提供する「市民向けサイト」である。
これら4つのシステムがAPI連携により自動連携されており、各システムが保有する情報が別システムでも必要な場合に、特段の処理を要することなく活用できるようになっている。

※静岡市では、「災害情報基幹システム」「災害情報分析・可視化システム」「SBC」を「内部災害情報システム」と総称

 

災害情報基幹システムの画面イメージ(被害報告管理)
出所:静岡市内部災害情報システム「災害情報基幹システム」

 

災害情報分析・可視化システム[災害リスク確認・被害状況分析・災害時公開情報管理](A)※[]内は主な機能/()内は前述の問題点

「災害情報分析・可視化システム」は、静岡市の各部署が持つ災害関連、インフラ関連などの様々なデータや、市民からのSNS等による投稿、ドローンによる画像などの外部データを収集・整理し、リスク分析結果をダッシュボードやマップ上に可視化するシステムである。これらの情報をインプットに、災害対策本部が対応判断を行い、住民への適切な避難指示等につなげることができる。

また、フォーマットの異なるデータを柔軟に連携できる点が大きな特徴である。自治体内や外部から様々なデータを集めても、相互に関連付けられなければ“情報”として生かせないケースが多い。例えば、国が管理する一級河川と、地方自治体が管理する二級河川以下のデータが紐づけられないと、上流から下流へまたぐ水の流れや水量の変化を1つの情報として提供できない。一方で、「災害情報分析・可視化システム」を使えば、異なるデータを連携することが可能である。が管理している河川情報等に加え、SNSに投稿された情報や、市民からの被害投稿も収集し分析することで、幅広い情報をリアルタイムかつ迅速に収集・分析することが可能となった。

 

災害情報分析・可視化システムの画面イメージ
(上:大雨危険地域分析被害報告管理 下:被害分析)
出所:災害情報分析・可視化システム

 

市民向けサイト[市民向け防災情報発信](C)※[]内は主な機能/()内は前述の問題点

「市民向けサイト」は、静岡市が市民に様々な災害関連情報を提供することや、市民が身の回りの被害情報を静岡市に報告することを可能とする、市民の安心感の向上・不安の低減を目指す“双方向型”の防災情報ウェブサイトである。

住民の主な情報ニーズである「災害/被害情報」「避難情報」「交通インフラ情報」「生活インフラ情報」が一元的に集約されており、加えて、ユーザーの位置情報を基に、当該市民の現在地を起点とした災害情報を確認することが可能である。さらに、避難指示の対象エリアや最寄りの避難所の場所、避難所までのルートなどが地図上で確認できる画面も実装されているほか、地図上にフィルターをかけ、見たい情報に応じて可視化することもできるため、ユーザーは膨大な情報の中から自分に必要な情報を探す手間を低減できるとともに、重要な情報の見落としも防ぐことが可能である。


また、市民からの被害情報の報告機能も実装されており、静岡市がタイムリーに災害被害状況を把握することができる。これらの被害報告が先述の「災害情報基幹システム」側で管理され、「災害情報分析・可視化システム」にて被害分析がなされる仕組みである。
 

市民向けサイト画面イメージ(出所:静岡市「静岡市防災ナビ」)

 

新システムのユーザー数は旧システムの約4.5倍で、飛躍的に増加

本プロジェクトではアジャイル開発手法を採用し、静岡市ご担当者様と開発者が高頻度にコミュニケーションを重ねることで、静岡市が日常的に利用されている既存システムの操作感とのギャップを最小化した設計・デザインを実現した。ご担当者様からは「各自治体で長年浸透しているシステム特有のUIは開発者側には理解されにくく、設計にも組み込みづらいが、密なコミュニケーションによってその感覚を共有できた」との評価を頂いている。

市民向けの「静岡市防災ナビ」については、市民の皆さまが日頃利用するウェブサイトやアプリに近い操作感を目指し、実際に「良い意味で行政システムらしさがない」といのご意見を頂いた。ある月のアクセス状況を旧システムと新システム(市民向けサイト)で簡易比較したところ、新システムのユーザー数は旧システム比で約4.5倍と大きく増加した。