調査レポート

2024年度版「グローバル自動車消費者意識調査」

世界26か国の自動車ニーズから、EVシフトとモビリティの「今」を推し量る

地政学リスクによる世界の不確実性が高まる中、2023年の各国市場経済は想定以上に堅調な回復を見せた。また、半導体不足の解消により自動車生産が回復した一方で、EVシフトの勢いに変化が生じ始め、また、SDV化への対応も急速に進展するなど、自動車産業全体が新たなフェーズに入ったと言えるだろう。では、2024年の自動車産業に最も大きな影響を与える消費者トレンドは何だろうか?最新の「グローバル自動車消費者調査」の調査結果から得られた、モビリティの進化とコネクティビティ、そして自動車購入における消費者の意識を掴んでいきたい。

EVシフトの進行鈍化から、カーボンニュートラル達成の計画は見直しが必要かもしれない

一部の市場では、高金利と店頭価格の上昇により、EV(BEV/PHEV)に対する消費者の関心が弱まっている可能性がある。加えて、EV購入補助金が販売台数を下支えしていた背景もあり、補助金制度が終了した国などでは、EV販売台数の減少や成長速度の鈍化がすでに見られ始めている。

本調査において、中国とインドを除く主要各国で純内燃機関車(ガソリン/ディーゼル)の購入意向が前年比で増加しており、特に米国では前年比で10pt増と顕著だった。だが、米国のBEV普及率は2023年後半にかけても上昇が続いており、主要自動車メーカーやサプライヤーもEV関連の北米投資を加速させる中、本調査における消費者の意向が市場でどのように反映されるかは注視する必要がある。

欧州も米国ほどではないが、各国でEVシフトからの揺り戻しとも言える消費者意識の変化が見られている。本レポートに掲載しているドイツ以外の欧州主要国でも、純内燃機関車の購入意向が前年比で高まり、BEVに対しては前年と同等か、あるいは減少している。このトレンドが今後も続くようであれば、カーボンニュートラル達成の時期は見直しが求められるかもしれない。

日本市場でも欧米とほぼ同様で、純内燃機関車及びハイブリッド車の購入意向が高まり、BEVは減少となった。BEV販売台数の成長においても、特定モデルの人気に起因していた勢いは失われつつあると言える。

なお、中国においてはBEVの購入意向が前年比で大きく増加、純内燃機関車では逆に大きく減少した結果、それぞれの意向者の割合が同水準に並んだ点が他の市場とは大きく異なっている。一方で、ハイブリッド車に対する購入意向は前年比で4pt増加しており、中国市場におけるBEV優勢のモメンタムに変わりはないが、中国市場で苦戦を強いられる日系自動車メーカーにとって、ハイブリッド車にはまだ一定の活路が残されているとも言えそうだ。

図1
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現有車と異なるブランドへ乗り換えを検討する消費者は、想定より多いかもしれない

次の自動車購入時に、現保有車とは異なるブランドを検討すると回答した消費者の割合は、自国の自動車ブランドに強みを持つ日本やドイツではやや低い傾向だが、それ以外の多くの市場では過半数を超える傾向が見られた。

特に、インドと中国では7割を超えており、ブランド乗り換えの理由として「新しいブランドには欲しい技術や機能がある」が最も上位となっていた。「他のブランドを試したい」という単に新鮮味を求める回答が最上位に上がる他の市場とは異なり、インド・中国では製品品質を見極めた上でのブランド乗り換えが進んでいる傾向があると言えるかもしれない。

図2
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図3
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先進国におけるコネクテッド・サービスの収益化には多くの課題が残る

近年の新型モデルの多くはコネクテッド・サービスに対応しており、様々なサービスを各自動車メーカーが展開している。しかし、米国、日本、ドイツといった先進国では、コネクテッド機能に対して追加費用を支払う意向が低く、今後の収益性に課題を抱えている。

特に、米国やドイツなどでは、コネクテッド車両のデータ管理について、自動車メーカーもディーラーも含め、どこも信用できないと回答する人が30%を超えている。個人情報の管理について敏感な地域では、コネクテッド車両のサイバーセキュリティには各プレイヤーが慎重に配慮する必要があるだろう。
一方、インドや中国などの市場では、BEV購入意向と同様に、コネクテッド機能への関心も高く、かつ追加費用を厭わない傾向が顕著だ。

図4
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サブスクリプションに関心を持つ若者は多いが、価格面での懸念は依然強い

自動車を自らの所有物とはせずに(つまり、購入せずに)、サブスクリプション契約で車を利用するという選択肢も、18~34歳の若者層を中心に浸透し始めている。多様なモビリティサービスが普及するインドでは、実に67%もの若者層がサブスクリプションによる車利用に興味を示しており、すでに主要な選択肢の一つとなっていると言えそうだ。

また、中国でも48%と、多くの若者層がサブスクリプションによる車の利用に興味を示している。一方、本レポートでは未掲載だが、サブスクリプションに興味を持つ55歳以上の割合は54%と、意外にも若者層よりも中高年層で多い結果となっていた。自家用車を所有することが社会的ステータスとされていた従来の中国で、新しい価値観をけん引するのが若者だけではないという点に、中国市場の力強さを感じさせる。

日本市場においてもサブスクリプションを展開する自動車メーカーが増えてきているが、やはり総保有コストや高額な月額費用に懸念を示す声が多い現状だ。また、サブスクリプションに限らず、次の自動車購入に際して想定する月々の支払い金額について、6万円未満と回答する消費者が8割を超えていた。手頃な価格での自動車利用ニーズに対応することができれば、自動車サブスクリプションサービスは日本市場でさらに成長する余地があるかもしれない。

図5
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2024年グローバル自動車消費者調査(PDF)

※グローバル版(主要7地域の比較考察)こちらからダウンロードください。

クローバル版 [ PDF, 2.48MB]

 

※日本市場編はこちらからダウンロードください。

日本市場編 [ PDF, 2.62MB]

英語版レポートへのリンクはこちら

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後石原 大治 パートナー
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社

稼農 慧 シニアアソシエイト
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