人口減少や東京一極集中、そして地方経済の衰退。現代の日本が直面する複雑な社会課題に対し、地方自治体の経営高度化や行政の仕組みの再構築、地域のまちづくりなどを支援しているのが、デロイト トーマツの地方自治体(Infrastructure, Transport & Regional Government、以降IT&RG)セクターだ。コンサルティングから実行支援まで、多様な専門性を掛け合わせ、地域経済社会の最前線で支援に取り組む3名のプロフェッショナルに、仕事への思いややりがいについて聞いた。
デロイト トーマツで政府や公共政策を担当するG&PS(Government & Public Services)インダストリーは約1,000人規模の体制を持ち、およそ半数が中央政府、半数が地方自治体を担当している。IT&RGセクターは後者に属する。さらに、グループ約30拠点のメンバーとも密に連携し、各地域に根ざした支援を展開している。有限責任監査法人トーマツのパートナーであり、合同会社デロイト トーマツ グループ ボードメンバーおよびIT&RGのセクターリーダーを務める香野剛は、デロイト トーマツが提供する価値の強みを「End to Endのご支援 」だと語る。
「我々の強みは、戦略や計画の策定、提言といった上流工程にとどまらず、地域に入り込んで自治体や企業と伴走する実行フェーズまで、エンド・ツー・エンドで支援できる点にあります。例えば地方自治体のDXプロジェクトでは、システムの開発だけでなく、その後の行政サービスのオペレーションまで担うこともあります。行政サービスは一旦始めたら途中でやめることはできません。だからこそ、最後まで責任を持つ強い覚悟で取り組んでいます」(香野)
有限責任監査法人トーマツ パートナー 香野 剛
また、香野はデロイト トーマツが「国と地方、官と民をつなぐハブ」として機能することの重要性を強調する。
「国が掲げる成長戦略や政策を、どの地域でどのように実践していくのか。それを地域に落とし込むと同時に、地域での成功事例や成功の要因を国にフィードバックし、他の地域へ展開していく。中央政府と地方、そして官と民の両方のコミュニティのハブ役になれるからこそ、大きな貢献ができると考えています」(香野)
IT&RGセクターには多様な得意分野やバックグラウンドを持つメンバーが集まっている。香野は、約30年前に福岡で監査・IPO支援からキャリアをスタートさせた。
「監査やIPO支援の仕事を通じ、行政の政策によって世の中に大きなインパクトを与えられることを実感し、興味を持っていました。私が31歳のときに公共向けの部署ができることになり、その立ち上げに手を挙げました。その後、しばらく福岡を拠点に活動していましたが、地方の経済が厳しくなる中で、これ以上地方で事業拡大していくには中央政府での基盤が必要だと痛感しました。そこで11年前に東京で公共向け部署を本格的に立ち上げました。現在では500人規模の組織へと成長し、地方への支援を強力に推進できる体制になりました」(香野)
その成果の一つが、群馬県前橋市の事例だ。2020年頃にはシャッター通りとなっていた商店街で、民間主導の官民連携によるまちづくりに伴走した。現在では新しい店舗が入り、人通りが劇的に増えるなど、確かな手応えを感じているという。
合同会社デロイト トーマツ マネジャー 今井 由貴子
合同会社デロイト トーマツのマネジャーである今井由貴子は、前職で新規事業として行動経済学に基づき人々の行動変容を促すサービスの立ち上げに従事し、デロイト トーマツ入社後はマーケティングやCX(カスタマーエクスペリエンス)を担当。その後「住む人たちが幸せになる地域づくり」を志し、現在の自治体支援チームへ異動した。
「私は身内が地元でまちづくりに奔走する姿を見て育ったこともあり、これまで培ってきた知見を地方創生に還元したいという強い思いがありました」(今井)
今井が携わった茨城県龍ケ崎市のプロジェクトでは、同市ゆかりのオリンピアンと一緒に「スポーツクライミング」を起点としたまちづくりを支援した。
「市民を巻き込み、『スポーツクライミングのまち』としてどう打ち出していくかという戦略策定から始まりました。まちづくりの実施と併せて、実際にアリーナに高さ10メートル以上の本格的な壁を立て、小学生や中学生が参加するユース大会を企画・運営するなど、プロモーションやブランディングを一貫して支援しました」(今井)
さらに今井は、愛媛県今治市を拠点とするサッカークラブ「FC今治」の事例にも深く関わっている。ここは、サッカーを通じて街を元気にする取り組みとして、全国からも成功事例として熱い視線が注がれているプロジェクトだ。
「デロイト トーマツ グループは、岡田武史会長が主導するFC今治の理念やまちづくりに強く共感し、当初はプロボノとして活動を始めました。さらにご支援できることを模索する中で、まずは観戦体験のCX調査を実施しました。試合の前、中、後でスポーツ観戦者がどのように楽しみ、どこに課題を感じているかを可視化し、次の施策に生かしました。また、サッカーの試合だけでなく、教育や環境保護などあらゆる面で地域を支えているFC今治の企業やスポーツ活動の社会的インパクトを定量化・可視化するため、SROI(社会的投資収益率)による金銭換算も行いました」(今井)
さらに今井は、FC今治が地域全体を支える存在であることを示すための共通ロゴの作成やブランディングムービーの制作など、ブランド戦略も全面的に支援したという。
このFC今治の取り組みを起点に、地域に根差した活動が広がり、現在ではデロイト トーマツ グループ全体から様々なビジネスやセクターのメンバーが、今治市と共に基幹産業である造船業を中心とした産業のまちづくりに向けてしごと・ひと・まちが躍動する国際海事都市〝IMABARI〟の実現に向け、多面的に伴走している。
そして、福島県を拠点に震災復興の最前線に立つのが、合同会社デロイト トーマツのマネジャー、高野睦だ。自身も福島県で被災し、「まちがなくなる」という経験を当事者として味わった。
「ゼロから街を創るということは、一人ひとりの生活や成長をどう描くかを考えることだと気づかされました。もともと大学では教育を専攻し、教育系企業やNPOで学校現場に携わってきましたが、学校を取り巻く『地域』そのものに携わりたいと思い、デロイト トーマツに参画しました」(高野)
合同会社デロイト トーマツ マネジャー 高野 睦(本インタビューは福島県よりオンライン参加)
現在、高野は福島県の被災地などで、多面的な復興支援に奔走している。
「住宅の不足や商業施設・教育施設の整備といったハード面だけでなく、お金や情報を継続的に呼び込むソフト面の仕掛けづくりにも取り組んでいます。例えば、ふるさと納税を活用して、新たに町にやってきた事業者の販路の拡大や新しい産品開発のきっかけとすることや、観光、フィールドワークなどで訪れる方々にもっと深く地域に関わって、新たな魅力を発見してもらえるための仕掛けも、役場の皆さんと一緒に考えています。官だけでなく民の知見も取り込みながら一緒に戦略を考えていくことができるのが、デロイト トーマツの強みと感じます」(高野)
地域に入り込み、複雑な課題に立ち向かう日々の中で、3人はどのような瞬間にやりがいを感じているのだろうか。今井は、多様なステークホルダーの間に入る難しさと、それを乗り越えた先の喜びを語る。
「地域の方々、行政、民間企業など、それぞれに利害関係がある中で、皆の思いをつなぎ合わせて『みんながハッピーになる形』を描き、実行に移すのは本当に難しい仕事です。しかし、それがまとまり、その地域の“らしさ”が具体的に実現でき、地域の方々の喜びや納得感につながった時に非常に嬉しく思います。龍ケ崎市の大会でも実際に子どもたちが目を輝かせてクライミングの壁を登っている姿を見たときは、本当に感動しましたし、やってよかったと心から思えました」(今井)
一方、高野は、地域の人々の変化に立ち会えることが最大の喜びだと語る。
「役場の皆さんや地域のプレイヤーの方々の意思決定や行動変容に貢献できたと思えたときが一番やりがいを感じます。庁内で新しい施策が決まったり、地域の方々がつながって新たな取り組みが動き出したり。一つひとつは小さなことかもしれませんが、その積み重ねが地域の未来を創っていくと信じています」(高野)
日本の未来を形作るIT&RGセクターのプロフェッショナルたちは、今後どのようなビジョンを描いているのか。
「自分のライフステージが変わってから、未来を担う子どもたちが育つ環境に対する当事者意識がさらに高まりました。子どもも大人も学び、変わり続けられる、失敗に寛容で挑戦できる土壌を持った地域をが増えていってほしいと願っています。誇りを持って地域を盛り上げようとしている方々の思いに寄り添い、一緒に悩みながら伴、地域の挑戦をご支援していきたいと考えています」(高野)
「人口減少や東京一極集中が進む中、地方の力を引き出し、魅力的な拠点を各地につくることで、日本全体をもっと魅力的にしていきたいです。いつかは帰りたい、帰省するのが楽しみだと思えるような、未来に期待が持てる地域社会を実現するためのご支援を続けていきます」(今井)
「我々の今後の大きなミッションは、地域のエッセンシャルサービスの持続可能性を確保することです。デロイト トーマツ自身がサービスの提供主体の一員として入り込み、地域の企業とともに持続可能なインフラをつくっていく。日本の成長という課題に対しても、各地域の成功事例を一つでも多く創出し、日本の成長に貢献していきたいと考えています」(香野)
スコープは、行政における“まち”に留まらず、あらゆるコミュニティも見据える。国と地方、官と民の思いをつなぎ、未来に期待が持てる持続可能な地域社会をつくるため、デロイト トーマツのIT&RGセクターはこれからも“全ての世代が誇りをもてるまち”の実現に向けて走り続ける。
※本ページの情報は掲載時点のものです。