生成AI時代の保険業界における変革の最新トレンドを解説します。
本記事は、2025年4月9日の保険毎日新聞に掲載された、デロイト トーマツ グループ パートナーの藤田 通紀へのインタビュー記事のサマリーです。原文は、インタビュー記事PDFをダウンロードしてご覧ください。また、この記事の掲載については、保険毎日新聞社の許諾を得ています。
AIにはメガトレンドのようなものがあり、「ANI:特化型人工知能」「AGI:汎用人工知能」「ASI:人工超知能」と形容される。ANIはSiriなどの音声アシスタント、AGIはChatGPTがその代表となる。最終的にはASIが登場し、全人類の英知を超えると言われている。
AGI時代に突入したことで、保険業界を含む多くの業界が転換期を迎えている。チャネルがある程度限定されている保険会社にとって、R&D(研究開発活動)はあまりなじみのあるものではないが、AIの進化により新しいサービスを提供するためのR&Dは必要になる。AIに求めるものは、業務効率化や生産性向上ではなく、よりグロース(事業成長)に直結する役割となるだろう。このようなAIを駆使して新しいビジネスを創造することを、DXとは異なる「AIトランスフォーメーション(AX)」と呼んでいる。
人知以外の新しいアイデアによる高付加価値の提供だ。これは保険ビジネスに関わる様々な人たちにもたらされるものだ。AIが提供する高付加価値によってビジネスは拡大し、多くの人が豊かな生活を享受できるようになる。例えばAgentic AIが直接保険を販売する時代や、認知症感知システムのデータをAIが分析し、病院受診を促すサービスが実現できるかもしれない。さらに、AI健康診断というサービスも見えてくる。倫理や宗教面での議論が交わされているが、亡くなった人の音声や写真などをAIに読み込ませ、保険会社のプラットフォームで故人と再会できるサービスができれば、顧客に新たな価値を提供できるかもしれない。そのためには、データガバナンス、プライバシーといった分野も両輪で取り組みことが肝心だ。
今後のAIビジネスで重要なのは、AIを使いこなせることはもちろん、世の中に何が求められるかという視座を持ち、複数の仮説やアイデアについてAIを通じて検証し、自分の意見として構築できる人材が求められるようになる。人材育成の方法も変化が必要で、早い段階から創造的思考を養うことが不可欠であり、アイデア発想やフレームワークを中高生の段階から学べる機会を増やすべきだ。今後の保険業界では、AIを活用して新たな世界観を創出し、事業をよりクリエイティブなものに変革していく中で、どれだけそのことを事前に真剣に考慮していたかが、生き残れるか否かの分かれ道となるだろう。