執筆者 山田 義
製造業を取り巻く外部環境が一段と厳しさを増す中で、中小・中堅企業においては、工場再編を“選択肢”ではなく“必須戦略”として捉え、これを機にスマートファクトリー化を推進することが、持続的な競争力を再構築するための鍵となります。
近年は、原材料・エネルギー価格の高止まり、輸送ドライバーの高齢化や人手不足等による物流コスト上昇、そして円安に伴う輸入インフレなど、多くの外部環境が製造業の収益基盤を圧迫しています。
一方、内部環境にも構造的な課題が蓄積しています。過去の市場・顧客ニーズに合わせた製品戦略により少量多品種化が加速しました。加えて、顧客要求に応えるための、低積載率での配送が常態化するなど、サプライチェーン全体が非効率となるケースも見られます。生産現場では老朽化した建屋や設備で運営されており、安全性や生産性の低下を招いています。どの企業においても経営を圧迫する要因は年々増加しています。
多くの中小・中堅製造企業は、過去の積極的な投資により多くの工場・設備を抱えています。建屋は当時の基準で建設されているため、耐震補強や老朽化対策が必要ですが、昨今の資材高騰により投資判断が難しくなっている企業も少なくありません。生産ラインでは、30年以上稼働する設備が現在も主力として活用されています。しかし、老朽化した設備は補修部品の確保が困難なだけでなく、ベンダー自体が廃業しているケースもあり、突発的な生産停止リスクが高まっています。このような状況が続けば、近い将来、ビジネスに大きな影響を及ぼす可能性は避けられません。こうした老朽化問題は企業全体の競争力にも直結するため、経営アジェンダとしての検討が求められています。
老朽化した工場を抱える企業にとって、建屋や設備の暫定対応や既存ライン前提の部分的な改革では、もはや十分な競争力を生み出せません。生産・サプライチェーン・経営全体を見直す「抜本的な工場再編」が必要です。工場再編の形は企業によって異なります。事業拡大に伴う新工場建設ができれば理想ですが、既存工場への集約や、事業縮小に伴う品種見直しと複数拠点の統合など、さまざまなケースが存在します。いずれの場合も、現在のビジネス環境を正しく把握し、将来の「あるべき姿」を明確に描き、スマートファクトリー化を見据えた構想案と投資対効果を整理することが成功の鍵となります。
スマートファクトリーの形は業種・業態によって異なります。最新設備を導入した“フル自動化工場”を想像しがちですが、重要なのは“生産状況を可視化し、経営レイヤーが迅速に判断できる状態”を作ることです。
構想段階では、レイアウト・自動化・データ利活用を企業の経営モデルに合わせ、バランスよく設計することが求められます。
工場再編には大きな投資が必要ですが、得られる効果も大きいです。土地取得・建設コストと、運営費削減・人件費最適化・物流効率化などの効果を照らし合わせ、定量的に評価する必要があります。
工場再編は単なるコスト削減ではなく、経営・生産・データを統合した中長期の変革プロジェクトです。中小・中堅企業こそ、このタイミングを成長の起点として活用すべきです。工場再編を「次の成長のスタート」として位置づけ、スマートファクトリーを実現した企業こそ、これからの競争を勝ち抜くことになるでしょう。
デジタル三現主義に基づく日本製造業のスマートファクトリー