総務省より「令和3年度までの公共施設等総合管理計画の見直しに当たっての留意事項について(令和3年1月26日)」(以下、「留意事項」)が発出されました。今回はこの内容を紹介します。特に、公共施設等総合管理計画の見直しに当たって記載すべき事項等が明確化されたことや、見直しに係る財政措置が講じられること等、ポイントとして挙げられます。
なお、本ページは留意事項をもとに記載しており、留意事項は以下の総務省のホームページに掲載されています(記事の都合上、省略している内容もあります)。
留意事項において、公共施設等総合管理計画(以下、「総合管理計画」)は、令和2年3月31日時点で、全地方公共団体の99.9%にあたる1,786団体において策定済みとなり、また、個別施設計画についても、令和2年度末には、ほとんどの施設類型で8割以上の策定率となる見込みと示されています。
これに伴い、この留意事項では以下の2点が記されています。
以下、総合管理計画の見直しに当たって記載すべき事項等を紹介します。
計画策定年度及び改訂年度
これらは総合管理計画の基本的な構成要素であるため、盛り込む必要があるものとされています。また、この中で有形固定資産減価償却率の推移がありますが、有形固定資産減価償却率を施設ごとに計算するためには、各施設に属する固定資産ごとの取得価額や耐用年数、経過年数等を把握する必要があります。このような情報は地方公会計の固定資産台帳から取得することが可能であり、固定資産台帳と施設情報との連携が一層重要になると考えられます。
これらは、すでに過去の指針等で示されている内容であり、個別施設計画の策定時点で算定されているものもあるため、個別施設計画の算定結果を集計しつつ、算定できていない場合には新たに算定する必要があります。
これらは、総合管理計画が、地方公共団体の有する全ての公共施設等についての基本方針を定める計画であることを踏まえ、盛り込む必要があるものとされています。特にユニバーサルデザイン化の方針は平成30年の指針で追加されたものであり、今回改めて要請されています。
これらは、総合管理計画の進捗や効果等の評価に資することから、盛り込むことが望ましいものとされています。
個々の施設や施設類型(道路、学校、病院等)をまたいだ優先順位や整備方針の検討に資する計画であることを踏まえ、引き続き盛り込むことが望ましいものとされています。
地方公会計の情報、特に固定資産台帳の情報は、公共施設マネジメントの推進に当たって前提となるものであり、その活用の考え方について盛り込むことが望ましいものとされています。施設マネジメントへの地方公会計の活用事例としては、固定資産台帳と施設の紐づけのほか、固定資産台帳を利用した将来の投資シミュレーションの実施、施設別分析の実施、固定資産減価償却率を利用した修繕の優先順位の決定、施設のライフサイクルコストの計算などが考えられます。
また、地方公会計の情報の適切な活用のためには、毎年度、決算年度の翌年度末までに固定資産台帳及び財務書類を作成・更新することが適当であるとされています。施設マネジメントの観点からも、翌年度の施設関連予算の参考にするためには、9月頃までに固定資産台帳の更新が完了していることが望ましいと考えられます。
用途廃止された資産や売却可能資産等について、効率的な運用や売却等を行うことは、資産利用の最適化及び将来の維持管理等に係る負担の軽減に資するとされており、保有する財産(未利用資産等)の活用や処分に関する基本方針を盛り込むことが望ましいものとされています。
より広域での最適配置を図る観点から、複数団体の連携による取組を積極的に推進することが重要とされており、必要に応じて広域連携の取組について盛り込むことが望ましいものとされています。
都市計画等の各種計画との整合性や、国が管理する施設との連携を図ることが重要とされており、団体の実情に応じて、盛り込むことが望ましいものとされています。
令和3年度に限り、市町村における総合管理計画の見直しに係る経費(専門家の招へいに要する経費(旅費、報償費等)、計画の見直しに要する経費(委託料、印刷費等))について、特別交付税措置を講じられる見込みです。
令和3年度より、総務省と地方公共団体金融機構の共同事業として、団体の状況や要請に応じ、総合管理計画の見直しも含めた政策テーマについて、アドバイザーを派遣する事業を創設される見込みです。
公共施設等適正管理推進事業債の令和4年度以降のあり方について、地方公共団体における総合管理計画の見直し状況等も踏まえつつ、検討する予定とされています。また、令和3年度までに建設工事に着手した事業については、令和4年度以降も現行と同様の地方財政措置を講じられる見込みです。
この留意事項によって、総合管理計画の見直しに当たって記載すべき事項等が明確化されました。総合管理計画の見直し担当部署では、以下の順を追って総合管理計画の見直しに着手することが考えられます。
なお、このような見直し着手及びその後の見直し実施に際しては、5.①に記載の通り特別交付税措置を講じられる見込みです。民間のノウハウを活かすためにもこのような財政措置を有意義に利用することが考えられます。
特に、今回記載が望ましい事項として、地方公会計の活用が挙げられています。総合管理計画の見直しは今回だけでなく、何年かに一度実施が求められるものであり、また個別施設計画も同様です。これらの見直しをスムーズに進めるためには、固定資産台帳と施設情報の連携が必須であるほか、固定資産台帳の正確な更新や精緻化も重要です。今回を機に、地方公会計(固定資産台帳)のさらなる精緻化と更新体制の整備を推進し、施設マネジメントの高度化につなげていくことがより一層重要となります。