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本調査研究は、①こどもや若者が「ヤングケアラー」という言葉をどの程度理解しているのかを確認すること、そして、②令和6年6月の子ども・若者育成支援推進法の改正を受け、ケアのために大人への移行が難しくなっている18歳以上の若者の実態と支援の在り方を調べることの2点を目的として実施した。 ※本調査研究は、令和7年度子ども・子育て支援等推進調査研究事業として実施したものです。
1.背景及び目的
- 令和2年度の調査※1では、中高生の8割以上がヤングケアラーを「聞いたことがない」と回答し、令和3年度の調査※2では、20代・30代でも「聞いたことがない」との回答が6割程度であった(小学生への認知度調査は未実施)。この結果を踏まえ、国は令和4年度からの3年間をヤングケアラーの社会的認知度向上に向けた「集中取組期間」とし、中高生におけるヤングケアラーの認知度を5割まで高める※3ことを掲げ、国や地方自治体において、様々な普及啓発活動が展開されてきた。前回の調査から5年が経過し、現状を改めて把握した上でさらに効果的な施策を作ることが求められている。
- また、令和6年度に改正された子ども・若者育成支援推進法では、ヤングケアラーは「家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者」とされ、国や地方自治体が支援に努めるべき対象であることが明記された。実際、18歳以上になってもケアを担っている若者は、こども期からの困難に加え、就職先の選択や、収入や時間や労力を自分のために使うこと、自分らしい人生を歩むことなどにも影響を受けている可能性がある。ヤングケアラーの年齢やケアの内容や状況は多種多様である中、ライフステージやケアの様態によって、本人が求める支援内容や直面する生活上の課題や負担感がどう変わってくるのか、これまでよりも精緻化して理解する必要がある。
- 以上の背景を踏まえ、本事業は、①ヤングケアラーの社会的認知度向上に向けた「集中取組期間」の取組の目標値達成状況の検証、小学生世代を含めた、こども・若者のヤングケアラーに関する理解度の分析、②18歳以上のヤングケアラーへのアプローチと支援の方法を探ることを目的として実施した。
1 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社. (令和3年3月). ヤングケアラーの実態に関する調査研究報告書.
(https://www.murc.jp/wp-content/uploads/2021/04/koukai_210412_7.pdf)
2 株式会社日本総合研究所. (令和4年3月).ヤングケアラーの実態に関する調査研究報告書.
(https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=102439)
3 ヤングケアラーの支援に向けた福祉・介護・医療・教育の連携プロジェクトチーム. (令和3年5月). ヤングケアラーの支援に向けた福祉・介護・医療・教育の連携プロジェクトチーム報告. (https://www.mhlw.go.jp/content/000780549.pdf)
2.調査研究の概要
本調査研究では、ヤングケアラー支援団体関係者、学識経験者、自治体関係者等で構成する検討委員会を設置し、以下の事項を実施した。
(1)こども・若者世代のヤングケアラーの認識等に関するアンケート調査
- ヤングケアラーの社会的認知度向上に向けた「集中取組期間」の達成状況を確認するため、全国の小学6年生、中学2年生、全日制高校生(2年生)、定時制高校生(2年生相当)、通信制高校生、若者(18~39歳)を対象としてアンケート調査を実施し、計31,612件の回答が得られた。調査にあたり、小学校、中学校、全日制高校は、全国の公立学校の中から層化無作為抽出にて調査対象とする250校を抽出し、当該学校に在籍する対象学年の生徒を対象とした。また、定時制高校生、通信制高校生は、それぞれの公立の高校を各都道府県より1校ずつ無作為抽出した。若者は、Webアンケート調査会社に登録されているモニターを対象とした。
(2)先行文献調査
- 18歳以上のヤングケアラーへの効果的な支援の在り方を把握するための検討材料を収集し、18歳以上のヤングケアラー及びヤングケアラー支援団体へのアンケート、ヒアリング調査の項目検討で活用するほか、成果物のとりまとめにおいて参考とすることを目的として、学術論文や実態調査等の文献調査を実施した。収集した情報は、支援の段階(気づき、情報集約、支援、見守り)の4つの項目で整理した。
(3)18歳以上の若者に対するアンケート調査
- 若者世代へのアプローチ方法を探るとともに、当事者が担っているケアの様態(精神疾患を有する家族へのケア、通訳が必要な家族へのケア等)に応じた支援ニーズ等を把握するために18~39歳の若者を対象にアンケート調査を実施した。対象は、Webアンケート調査会社に登録されているモニター1,600サンプルとし、うち522サンプルをヤングケアラー、1,078サンプルをヤングケアラー以外として集計した。
(4)ヤングケアラー支援団体に対するアンケート調査
- 18歳以上のヤングケアラーへの効果的な支援の在り方を検討するために、若者世代へのアプローチ方法を探るとともに、当事者が担っているケアの様態(精神疾患を有する家族へのケア、通訳が必要な家族へのケア等)に応じた支援ニーズ等を把握・整理することを目的として実施した。対象は、全国の子ども・若者総合相談センター、都道府県、政令指定都市等のヤングケアラー関係の助成金、補助金の助成・補助団体等の計371件とし、88件から回答が得られた。
(5)18歳以上のヤングケアラー、支援団体に対するヒアリング調査
- 18歳以上のヤングケアラーへの効果的な支援の在り方を検討するために、若者世代へのアプローチ方法を探るとともに、当事者が担っているケアの様態等に応じた支援ニーズ等を把握・整理するために、18歳以上のヤングケアラー9件、支援団体5件の計14件のヒアリング調査を実施した。
(6)まとめ(主な調査結果)
- 本事業が目指す2つの目的のうち、①こどもや若者が「ヤングケアラー」をどの程度理解しているのかに関する調査については、上記(1)の調査結果を基に、「子どもの権利」および「ヤングケアラー」の認知度、「子どもの権利」を踏まえた「ヤングケアラーの理解」、若者の意識、今後の課題という切り口から、得られた知見を整理した。
また、②18歳以上のヤングケアラー支援の在り方に関する調査については、上記(2)~(5)の調査結果を基に、18歳以上のヤングケアラーがおかれている状況、支援の在り方という切り口から、得られた知見を整理した。
≪①ヤングケアラーの認知度等に関する主な調査結果≫
- 「ヤングケアラー」という言葉の認知度は、小学生を除き、中学生から若者までのいずれの年代においても5割を超える結果であった。一方、小学6年生の認知度は5割弱であり、今後は小学生の認知度をより高めていく必要があるといえる。
- ヤングケアラーの認知度の向上に伴い、周囲がヤングケアラーに気づける可能性が高まっていると考えられる。しかし、「子どもの権利」に十分留意しなければ、友人がヤングケアラーに気づいた際に、ヤングケアラー本人の同意なく別の友人に相談することで、個人情報が広まり、ヤングケアラー本人を傷つけてしまう可能性がある。そのため、ヤングケアラーに関する啓発と同時に、ヤングケアラーに気づいた際にどのように対応すべきかを啓発していくことが求められる。
≪②18歳以上のヤングケアラー支援の在り方に関する主な調査結果≫
- 18歳以上のヤングケアラーは学校等の所属先や中心となる支援機関が明確でないことが多く、「18歳以上のヤングケアラーの把握」が支援団体における最も多い課題として挙げられた。これに対し、高齢者福祉、障害福祉等の枠組みにおいて、支援対象者の同居家族である若者に対する情報提供や、インターネット広告の配信が有効である可能性が示唆された。
- 18歳以上のヤングケアラーへの効果的な支援として、就労支援、離家などが挙げられた。離家は単なる住居の確保にとどまらず、物理的な距離をとり、本人が家族との心理的距離を再調整し、自身の生活を主体的に再構築する契機となりうる。一方で、家族への責任感や罪悪感、経済的課題等により選択が難しい場合も多く、一時的に距離を取るなど、段階的な支援が求められる。