本稿では、鉄鋼、非鉄、化学、紙・パルプ、ガラス、セメントなどを含む素材メーカーを対象に、これまでの値上げ活動が十分な収益改善につながらなかった理由を整理する。そのうえで、素材メーカーを取り巻く環境変化を踏まえ、現在の機会を一過性の価格改定で終わらせず、継続的な収益力へ転換するために、どのようなプライシング改革を志向すべきかについて考察する。
近年の原材料・エネルギー価格の高騰に加え、地政学リスクの高まりや物流制約の深刻化を背景に、日系化学業界を取り巻く事業環境は大きく変化しています。顧客側でも、価格だけでなく、安定供給、技術対応力、品質保証、供給網のレジリエンスといった要素を重視する動きが強まっており、化学メーカーがこれまで提供してきた価値を、改めて価格や契約条件へ適切に反映する好機が到来しています。一方で、多くの企業では依然としてコスト転嫁起点の一律値上げや営業任せの個別交渉にとどまり、提供価値を持続的な収益力へ結びつける仕組みを十分に構築できていません。本稿では、事業特性ごとに異なるプライシング課題を整理したうえで、化学メーカーが自社の価値を的確に収益化し、恒常的な収益力へ転換していくための方向性を示します。
(ECMMユニット ニュースレター「扉」vol.41 2026年9月発行)
【目次】
0. はじめに
1. なぜ、これまでの値上げは利益として残らなかったのか
2. なぜ「今」がプライシング改革の好機なのか
3. 素材事業の特性によって、プライシングの課題は異なる
4. 値上げ活動をプライシング改革へ変える
5. プライシング改革をどう始め、定着させるか
6. プライシング改革におけるテクノロジーの活用
7. おわりに