デロイト トーマツは、業務目的に応じて大規模言語モデル(LLM)が必要なツールを使い分けて処理を自動で実行するAIエージェントの実装を推進しています。今般、その機能強化のために、多様なAIエージェントが自律的に連携する「マルチエージェントアプリ」を開発しました。
現在、業務の効率化を目的に、LLMが組み込まれたチャット型アプリケーションが多くの企業で利用されていますが、対象となる業務が複雑になると、「様々なプロンプト技術を理解する必要がある」「AIとの会話を何ターンも繰り返す必要がある」「AIの誤りを細かくチェックする必要がある」等の課題が生じ、複雑な業務への適用の障壁となっています。
そういった問題の解決策として昨今注目されている技術に「マルチエージェント」があります。これは、特定の役割やツールを持たせたAIエージェントを複数組み合わせることで、AIエージェント同士が自律的に連携しながら業務目的の達成に向かって処理を実行するものであり、ユーザが逐次細かい指示やチェックをせずとも、一定の成果物を出力することができます。
ただし、マルチエージェントにはその安定性や柔軟性において技術課題が存在しており、具体的には、適切なツールの選択ミス、生成された回答の不正確さ、AIエージェント間の連携ミス等といったものです。デロイト トーマツでは、これらの課題への対応として「マルチエージェントアプリ」を開発し、複数のAIエージェントでプロジェクト体制を模した関係性を構成し、AIエージェント間をグラフ構造で連携させる等の工夫により、安定的かつ柔軟な業務の自動実行を実現しました。
以下の技術を活用して、ユーザーからの業務要求に基づくタスクを自動的に実行します。
ユーザは、操作画面で業務内容を自然言語で入力するだけで、マルチエージェントアプリが内容を理解し、関連するAIエージェントを連携させ、実行結果を出力します。また、操作画面上では、エージェントの追加や、エージェントに使用させるツール、LLMの設定も可能です。
上記は、調査業務を実行する場合を想定したマルチエージェントアプリの構成です。多様なAIエージェントにより体制を構築しており、各チーム(AIエージェント)は以下の役割を持っています。
マルチエージェントアプリは業界・業種を問わず様々な業務で活用いただけます。調査業務以外にも、以下のような業務を自動化することが可能です。
デロイト トーマツでは企業のデジタル変革(DX)に対して戦略策定のアドバイザリーとシステムの開発・導入、保守までの技術サービスを統合的に提供しています。業界や業務の知見を持つコンサルタントとエンジニアが連携したサービスにより、クライアントの固有の課題解決を支援しています。
生成AI領域においては、全社横断のタスクフォースを組成し、生成AI技術の研究・開発、各プロジェクトへの展開、各プロジェクトからのノウハウの集約・モジュール化を一気通貫で行っており、今回の「マルチエージェントアプリ」もその活動の一環として開発しました。他にも、「多機能RAGアプリ」や「AIアバター」、「特化型LLM」等の先進技術の開発・研究に日々取り組んでおり、ビジネスへの効果的な生成AI技術の適用を通じて、クライアントのDX化の加速を支援しています。
これまで人手で行っていた上記の例を含む様々な業務に対して、人とAIの協業を前提として業務のあり方を見直すことで、人間は人間にしかできないことに注力し、人的資本の価値の最大化を図ります。