2022年度のラグジュアリー業界は、新型コロナウイルスによるパンデミック前と同水準の売上規模にまで回復しただけでなく、環境に配慮した「循環型経済」のビジネスモデルの構築に向けて大きな変化を遂げている。また、ラグジュアリー業界は、サプライチェーンの最適化や顧客体験の再構築など、様々な領域でAIやIoT といった最先端のデジタル技術を取り入れることで多くのイノベーションを生み出している。
本レポートが対象期間としている2022年度(2022年1月1日から12月31日までの12カ月間に期末を迎えた会計年度と定義)の決算において、ラグジュアリー企業上位100社のラグジュアリー品の売上高は3,470億米ドルとなり、前年より+8.4%増加した。
2022年度の上位100社の総合的な業績は、パンデミックの影響からの継続的な回復を反映している。多くの国で年間を通じて店舗の営業が再開され、旅行・観光業の復活によりインバウンド需要も増加したことで、特に化粧品などの分野で消費者需要が回復した。2022年3月期に純利益を計上した上位100社80社の純利益率を合計すると、13.4%(前年比1.2ポイント増)となり、パンデミック前の水準を上回った。
近年、ラグジュアリー業界は最先端のテクノロジーを積極的に導入しているが、中でも生成AIをはじめとするAI技術が存在感を示している。AIの活用により、生成AIを搭載したチャットボット、仮想ショッピングアシスタントによるパーソナライズされた商品のリコメンドやスタイリングのアドバイス、さらにはリアルタイムのカスタマーサポートなど、より高度にパーソナライズされた顧客体験の提供を実現している。
生成AIや様々なテクノロジーの進化は、ラグジュアリー業界における循環型経済モデルの構築にも影響を与えている。中でも、近年は循環型経済モデルの構築を推進する上で重要なツールであるデジタル製品パスポート (DPP)やデジタルIDの導入が進んでいる。設計から製造終了までのライフサイクル全体を通じて、持続可能性、循環性、法令順守に関する製品固有の情報が電子的に記録・管理できるため、対消費者の信頼性向上、グリーンウォッシング(上辺だけの環境訴求)のリスクの軽減、包括的な製品追跡、適正な流通・在庫管理、潜在的な新しいビジネスモデルの探求などの様々な領域においての活用が期待されている。
本レポートはDeloitte Touche Tohmatsu Limited が発表した内容をもとに、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社が翻訳・加筆したものです。和訳版と原文(英語)に差異が発生した場合には、原文を優先します。
原文(英文)レポートは以下よりご参照いただけます。
Global Powers of Luxury Goods 2023