複数の自動車メーカー等による型式指定申請における不正の発覚を受け、国土交通省は2025年3月31日に自動車型式指定規則等の関係法令の一部改正・制定を行いました。
デロイト トーマツ リスクアドバイザリー合同会社は、同年4月8日に「自動車の型式指定制度に係る不正行為対策セミナー」を開催し、本改正について国土交通省の担当者に解説をいただいたほか、自動車メーカーが取るべき対応について当社専門家より解説を行いました。
はじめに、国土交通省 物流・自動車局 審査・リコール課 リコール業務指導官(総括) 東海 太郎氏が「自動車の型式指定制度における不正防止対策」と題して登壇し、2024年12月に国土交通省の検討会がとりまとめた再発防止策(以下、「本報告書」)の概要、本報告書を踏まえた改正法令の内容及び公布後の動きについて解説しました。
本報告書では、自動車メーカー等が自身で不正を予防・抑止できるような仕組みを構築し、それを有効に機能させることに主眼が置かれています。また、官民それぞれが保有する資源をより効果的に配分し、必要となる対策を実効性の高い取組とすることを目指して、主な対策がまとめられています。
上記を踏まえ、自動車等の型式指定申請における不正行為の再発防止策を講じるため、国土交通省は2025年3月31日に自動車型式指定規則をはじめとする関係法令の一部改正・制定を行いました。
1. 申請時における提出書面の確認 【自動車型式指定規則第3条第2項第4号等(2026年4月施行)】
①認証業務に係る法令遵守が明記された経営方針
②「認証業務責任者」及び「プロジェクト統括管理者」の氏名
③認証業務に係る内部統制の実施状況が評価された報告書
2. 型式指定車の保安基準適合性等の確認 【自動車型式指定規則第7条の4第3~4項等(2026年4月施行)】
3. 不正を行った者に対する措置 【自動車型式指定規則第3条第2項第10号等(2025年4月施行)】
*:国土交通省 報道発表資料(https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001880165.pdf)
国土交通省 告示・通達(https://www.mlit.go.jp/notice/noticedata/pdf/20250415/20250415_buturyuzidousya_1.pdf)
法令改正にかかる自動車メーカー等が対応すべき事項のうち、「1―③認証業務に係る内部統制の実施状況が評価された報告書」(以下、「内部統制評価報告書」)の作成については、以下のポイントを考慮する必要があります。
このことから、認証業務に関する業務の棚卸などを通じて現状を確認し、可能な限り早く内部統制強化に向けて動き出すことが重要であると指摘しました。
デロイト トーマツ リスクアドバイザリー合同会社 GRC(ガバナンス・リスク・コンプライアンス) パートナー 山内 達夫
続いてのパートでは、デロイト トーマツ リスクアドバイザリー合同会社 GRC(ガバナンス・リスク・コンプライアンス) パートナー 山内 達夫が「型式指定に係る内部統制の強化に向けて自動車メーカーがとるべき対応」と題して、自動車メーカー等の企業が本改正法令の内容を踏まえて今後取り組むアプローチや対応に向けたポイントについて解説しました。
本法令改正への対応を効率的・効果的に実施するうえでは、経営層~担当者層の各組織レイヤーで連携し、経営者が適切なゴール設定を行い、多くの関連部署を巻き込みながらプロジェクトをスケジュール通りに着実に進めていくことが求められます。
2026年4月1日からの施行に向けた準備は「計画Phase」「構築Phase」「評価・報告Phase」に分けることができ、マイルストーンから逆算していつまでに何をすべきかを検討する必要があります。
「計画Phase」では、要求/推奨事項が広範な内容であるため関連部署を巻き込んだクロスファンクショナルな体制構築が求められることに加え、自社のみならずサプライヤーの内部統制への対応についてもOEMメーカーが確認することが言及されており、サプライチェーン全体を俯瞰した対応が求められます。また、プロジェクトをスケジュール通りに進めるためには、本取り組みについて責任を負う経営層を選定し主体的に関与させ、PMOにより着実なプロジェクト管理を行うことが必要です。
「構築Phase」では、認証業務に係る内部統制が適切に整備・運用されていることを評価し、国土交通省へ報告できるよう、裏付けとなる既存の体制・業務プロセス等の適宜見直し、文書化が求められます。
「評価・報告Phase」では、認証業務に係る内部統制の評価結果を取りまとめて国土交通省に報告するために、適切に評価するための体制整備や手続き策定が求められます。
このように対応すべき事項が多岐にわたるため、クロスファンクショナルな体制構築、適切なゴール設定、着実なプロジェクトの管理・進捗を意識した取り組みを効果的・効率的に進めることが重要です。
最後に、今回の取り組みを効果的・効率的に進めるうえでのデロイト トーマツ リスクアドバイザリー合同会社の提供価値について説明し、セミナーを締めくくりました。