ペーパーレス化とは、既存の「紙」を資料としていた業務をデジタル化し、削減するための取組みです。2020年度、2021年度のコロナ禍におけるテレワークの推進や働き方改革による業務効率化促進により、ペーパーレスの需要は高まっています。
ワークフローシステム(申請~承認までのフローをシステムで行うことによる社内文書のペーパーレス化)や電子契約(紙文書でやり取りしていた契約書の電子化を行うとともに、合意前の交渉および合意後の保管、保存といった契約に関わる業務のペーパーレス化)を導入する企業が増えています。
また、法制度の面でもペーパーレス化が推進されています。
1998年に施行された電子帳簿保存法も、経理の電子化による生産性の向上や、テレワークのさらなる推進などを目的に2022年1月より大幅な改正が行われました。これにより電子帳簿保存やスキャナ保存について、税務署長の事前承認制度の廃止やデータのみの保存(紙に印刷していない帳簿)が認められています。
また、2023年10月から施行される消費税インボイス制度において電子インボイス(請求に係る業務プロセスのデジタル化)の国際標準規格「Peppol(ペポル)」の日本における仕様標準化が検討されています。
ペーパーレス化を進めることで企業は以下のようなメリットを享受できます。
ペーパーレス化を進めることにより、例えば販売プロセスでは社内承認手続、取引先との契約書、各種伝票・請求書等の従来の紙をベースとした業務プロセスのデジタル化が生じます。プロセスの変化はJ-SOX対象である業務プロセスにおける内部統制にも影響します。
業務プロセスのデジタル化に伴い、従来の紙や押印を中心とした業務とは異なるリスクを把握し、新たな内部統制を構築することが求められます。特に「改ざん」「情報喪失」といった観点から対応を検討することが必要になると考えられます。
ペーパーレスが進むと、下図のとおり「ポイント①」IT業務処理統制(ITAC)の識別と、「ポイント②」それを担保するIT全般統制(GITC)が有効であるかが、監査上重要なポイントとなります。
特にGITCについては、上場会社の場合、JSOX対応の過程で既存システムに対するRCM(リスクコントロールマトリックス)がすでに文書化済みとなりますが、新たなテクノロジーを導入した場合、既存のRCMだと実態とあっておらず、無駄なGITCコントロールを整備してしまうといった事例も散見されます。
デロイト トーマツでは、テクノロジーに応じた標準のRCMを用意しておりますので、バランスの取れたGITCの整備およびRCMの文書化が可能です。
ペーパーレス化を推進するためには、それを支える業務支援システムを含むITインフラも併せて検討することが必要となります。ここでは、主に新規システムを導入する際のプロジェクト管理のポイントをお伝えします。プロジェクト管理上、執行側のリスクマネジメントにフォーカスが行きがちですが、下図の通り、監督側としてのガバナンス(モニタリング)も重要になります。
当初取り決めたスケジュール通りに導入できないなど、システム導入の失敗事例は多く、そういった失敗を未然に防ぐためにも、「⑥監督側としてのガバナンス体制」についても予め検討し、プロジェクト状況を第3者がモニタリングすることが重要となります。