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政治、経済、社会情勢などの企業活動に影響を与える事象に関して、北米、中南米、欧州、中東、アフリカ、アジア・オセアニアの各地域ごとに、最新状況を踏まえ考察します。
エグゼクティブサマリー
- トランプ米政権の経済政策の不確実性は依然として残存しており、世界経済への影響が懸念される。
- ウクライナ、ガザ情勢はともに鎮静化の兆しが見えず、世界情勢に影を落としている。
1. 北米
【政治】
ロシア・ウクライナ戦争関連
- 7月14日、トランプ米大統領は、ウクライナから要望されていた防空システムを含む兵器を、NATOを通じて供与すると表明した。また、ロシアが50日以内にウクライナとの停戦に応じない場合「非常に厳しい関税を課す。およそ100%の関税、『2次関税』と呼ばれるものだ」と述べ、新たな関税措置についても表明した。
- 7月28日、トランプ米大統領は、「ロシアが50日以内に和平合意に応じなければロシアに制裁を科す」と表明したことについて、この期限を「10-12日にする」と圧力を強めた。また二次関税を課すとした期限を8月上旬に前倒しする意向も表明した。
- トランプ米大統領は8月8日、ロシアのプーチン大統領との首脳会談を15日にアラスカで行うと発表した。また、トランプ大統領は13日、この会談で進展が得られなければロシアに経済制裁を科す考えを示した。
【経済】
関税問題
- トランプ大統領は2024年11月30日、BRICSの加盟国に対し、決済通貨は米ドルのみとするよう求めた。同氏は「我々が傍観している間にBRICS諸国が脱米ドルに向かおうとする考えは終わりだ。我々はこれらの国々に対し、新たなBRICS通貨を創設した場合100%の関税を課し、米国市場への販売を断念することになる」と述べた。
- 4月2日、トランプ大統領は貿易相手国に対し相互関税を課すと発表した。全ての輸入品に一律10%の基本関税を課した上で、各国の関税や非関税障壁を考慮し、国・地域別に税率を上乗せするものとなっている。この発表については世界中から非難が相次いでおり、国によっては報復を表明する国も出ている。また発表直後から、世界各国の金融市場で株式が大きく下落しており、世界経済の成長に急ブレーキがかかり、対米貿易に依存する各国の景気を悪化させるばかりか、米国もインフレ再燃によって不況に陥る可能性がある。世界的な景気後退の可能性が否定出来ない。
- 2025年6月4日、トランプ政権は鉄鋼製品とアルミニウムに課している追加関税を25%から50%に引き上げた。国内の鉄鋼産業を守るための措置だとしているが世界各国から反発が広がっている。
- トランプ米大統領は、関税措置を巡る交渉について、7月4日から各国に書簡を送って関税率を通知すると発表した。
- 7月15日、トランプ米大統領は、日本との関税交渉に関連し、「日本が市場を開放しなければ、7月8日の書簡で通知した通り、8月1日から日本からの輸入品に対して25%の関税措置を発動する」という可能性を示した。
- 7月31日、トランプ米大統領は各国に対する相互関税の新たな税率を発動するための大統領令に署名した。日本の税率は10%から15%に上がる。新税率は約70カ国・地域に設定し8月1日より適用を始める。新税率が示された国・地域のうち、日本を含め半分以上が15%となった。一方、ブラジルに50%の関税を課すなど、8カ国に対して新たな関税率を通知し、その書簡を公表した。それによるとブラジルの他、アルジェリア・イラク・リビア・スリランカが30%、ブルネイ・モルドバが25%、フィリピンが20%となっている。
- 8月6日、トランプ米大統領は、インドからの輸入品に25%の追加関税を課す大統領令に署名した。これは8月27日から発動するもので、インドに対しての関税が計50%となる。これに対してインド政府は強く反発しており、インド国内で米国製品の不買運動が呼びかけられている。
トランプ大統領の国内世論対策
- 7月22日、トランプ大統領は、2016年の米大統領選にロシアが介入したとされる「ロシア疑惑」のでっち上げを指示したとして、オバマ元大統領を捜査するよう求めた。この背景には、現在全米で盛んに報じられているエプスタイン問題で、情報公開が不十分と不満をつのらせている支持層をかわす狙いがあるとみられている。
2.欧州
【政治】
ロシアによるウクライナ侵攻
- 2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻は3年以上を経過しているが、依然として終結の兆しが見えず、膠着状態が続いている。侵攻当初はロシア軍が首都キーウを目指していたが、諸般の事情で侵攻直後から東部、南部での攻防に重点が移っていった。2022年9月30日にロシアは東南部4州の併合を宣言した。その後ロシア軍は、一時掌握した領土を奪還されるなど、劣勢に追い込まれることもあったが、契約軍人などで兵力を増強するとともにイラン等から購入したミサイルや無人機、大量の弾薬も使いながら攻勢を強めて主導権を取り戻し、2024年2月ウクライナ側の拠点、東部アウディーイウカの掌握を発表した。一方ウクライナ軍は2023年6月、東部や南部で反転攻勢を開始したがロシア側が築いた強固な防衛線の前に進軍を拒まれた他、砲弾など欧米の軍事支援が停滞するなどして作戦は思うように進んでいない。ウクライナ軍は2024年8月から、ロシア領内クルスク州等に越境攻撃を行っているが膠着状態となっている。ロシアとウクライナの直接交渉が5月16日にトルコ・イスタンブールにおいて行われたが、捕虜交換以外はほとんど進展がなく終了した。
- ウクライナとロシアの2回目の直接協議が6月2日にトルコのイスタンブールで行われたが、両国の主張の隔たりが大きく、大きな進展もなく終了した。
- プーチン大統領は6月19日、サンクトペテルブルクで記者会見をし、ロシアが提示した和平条件にウクライナが合意しなければ「彼らにとっての状況はさらに悪化する」と述べ、直ちに合意するように求めた。
- 2025年7月3日、トランプ米大統領とロシアのプーチン大統領が電話会談を行った。トランプ大統領は、「ウクライナ戦争終結に向けた取り組みに進展は全く見られなかった」と述べ、一方のプーチン大統領も「『根本的原因』を取り除くというウクライナ侵攻の目的を取り下げることはない」との立場を改めて表明した。
- 既述の通り、トランプ米大統領は7月14日、ウクライナから要望されていた防空システムを含む兵器をNATOを通じて供与すると表明した。また、ロシアが50日以内にウクライナとの停戦に応じない場合「非常に厳しい関税を課す。およそ100%の関税、『2次関税』と呼ばれるものだ」と述べ、新たな関税措置をとると表明した。この背景にはトランプ米大統領のプーチン大統領に対するいら立ちを挙げることができる。
- 7月23日、ロシアとウクライナの代表団による3回目の直接交渉がトルコのイスタンブールで行われた。新たに1200人規模の捕虜交換を実施することで合意したが、それ以外のことについては立場の隔たりが大きく、停戦に向けた具体的な進展は見られなかった。
- 既述の通り、8月15日にアラスカで行われる米ロ首脳会談において和平交渉が行われる予定であり、その結果が注目される。
中国とチェコ関係悪化
- 8月12日、中国外交部が、チェコのパベル大統領との「交流断絶」を表明した。同大統領が、中国とインドの国境係争地であるインド北部ラダックを訪れ、チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世と面会したことを問題視したためである。この他にもチェコは、2024年6月に台湾との関係を深めるため「チェコセンター」を台北に開設すると決め、同月にはチェコの上院副議長らが台湾を訪れ、経済協力を話し合っている。台湾とチェコの外交関係樹立を警戒する中国政府が強硬姿勢を示した形である。
【社会】
欧州での山火事・猛暑による被害
- 欧州南部では6月後半以降異常気象で猛暑が続いており、各地で山火事が発生している。今も暑さは収まることなく続き、健康被害が大幅に増え、観光産業への影響等も懸念される。
3.中東
【政治】
イスラエル・ガザ地区における戦闘
- 2023年10月に勃発したイスラエルとハマスの戦闘は、ガザ地区での激しい空爆と地上戦が続いていた。同地区の人道問題等が国際社会の高い関心を集め、数多くの国が停戦交渉を仲介したが、なかなか進まない状況が続いていた。
- 2024年5月31日、当時のバイデン米大統領は「ガザ地区にいるイスラエル人の人質解放と引き換えにイスラエルが戦闘休止をする」という提案を明らかにした。この提案は3段階で構成されている。第1段階は6週間の戦闘休止でこの期間はイスラエル軍がガザから撤退し、イスラエル人人質が数百人のパレスチナ囚人と交換される。第2段階ではハマスとイスラエルが敵対行為の恒久的停止の条件について交渉し、第3段階でガザ地区の大規模な復興計画を策定するものである。この提案はイスラエル側からの提案とされているが、イスラエル閣内の強硬派から反対の意向も示されていた。
- ガザ地区での停戦と人質解放に向けた協議は、イスラエルとハマスの主張の隔たりが大きく交渉は停滞していたが、2025年1月6日までに英国やアラブのメディアが一斉に、ハマスが34人の人質解放に同意したと報じた。
- イスラエル政府は2025年1月18日、ハマスと合意したガザ地区での1月19日から6週間の停戦と人質解放の枠組みについて正式に承認したと発表した。
- 米国は5月30日、ハマスが人質10人を2回に分けて解放するのと引き換えに60日間停戦するという新たな停戦案を呈示した。この案にイスラエルは同意したが、ハマスは新たな条件を提示するなど停戦協議は難航している。
- イスラエルのガザ地区における軍事的な対応に関して世界中に反発が広がっており、世界各地で反ユダヤ的な事件が頻発している。
- 7月29日、ガザの保健当局は、2023年10月の戦闘開始以降のガザ側死者が60034人になったと発表した。イスラエルによる支援物資の搬入制限で、住民の餓死も相次いでいる。人道危機が深刻化し、イスラエルに対する国際社会の批判は急拡大している。
- 8月10日、イスラエルのネタニヤフ首相は「われわれの目標はガザ地区の占領ではなく、ハマスからガザ地区を解放することだ。ハマスが武器を置き、すべての人質を解放すればすぐに戦争は終わる」と述べ、イスラエルが決定したガザ地区での軍事作戦拡大を正当化した。イスラエルの強硬姿勢に対しては国際社会から一斉に批判が噴出している。
- ガザ停戦交渉について、イスラエルとハマスの直接交渉は7月末から中断しているが、8月12日、ハマスの代表団が仲介国のエジプトを訪れて政府高官と話し合ったことを明らかにするなど、協議の再開を模索する様子が報じられ始めている。今後の国際世論の動きなどが注目される。
4.アジア・オセアニア
【政治】
韓国情勢
- 2025年6月3日に実施された大統領選挙では、最大野党のイ・ジェミョン氏が当選した。同氏は6月4日に大統領に就任し、記者会見で安全保障や文化交流などで日本と連携していく考えを強調した。今後日韓関係は大きく変化しないものとみられるが、イ・ジェミョン氏は過去に日本に対して強硬な発言をしたこともあることから、同大統領の動向が注目される。
- 8月13日、ユン前大統領の妻が16の嫌疑で逮捕された。野党「国民の力」にとって、22日に開く党代表を選ぶ党大会直前であったことから、党内が結束しづらい状況となっている。
ご協力ありがとうございました。