医療計画は、医療資源の地域的偏在の是正と医療施設の連携を推進するため、昭和60年の医療法改正により導入され、都道府県の二次医療圏ごとの病床数の設定、病院の整備目標、医療従事者の確保等を記載することとされました。平成18年の医療法改正により、疾病・事業ごとの医療連携体制について記載されることとなり、平成26年の医療法改正により「地域医療構想」が記載されることとなりました。その後、平成30年の医療法改正により、「医師確保計画」及び「外来医療計画」が位置づけられることとなりました。
現在は、第7次医療計画(平成30年度~令和5年度)に沿って、地域の実情に応じた医療提供体制の確保が進められています。
また、令和6年度から6年間の計画となる第8次医療計画の策定に向けて、令和5年3月31日付で厚生労働省医政局より医療計画に関連するいくつかの通知が発出されました。
令和3年6月より開催した、第8次医療計画等の見直しに関する検討会における意見のとりまとめ等を踏まえ、国は、医療法第30条の3第1項の規定に基づき、医療提供体制の確保に関する基本方針(以下「基本指針」という。)の改正を行うとともに、「医療計画作成指針」(以下「指針」という。)見直しが行われました。
都道府県は、医療法第30条の4第4項の規定に基づき、5疾病・5事業及び在宅医療に係る医療連携体制に関する事項等を医療計画に定めることとされています。医療計画の作成にあたっては、基本方針に即して、指針及び「疾病・事業及び在宅医療に係る医療体制の構築に係る指針」(以下「疾病・事業及び在宅医療指針」という。)を参考とし、かつ、医療提供体制の現状及び今後の医療需要の変化を含む地域の実情に応じて、関係者の意見を十分踏まえた上で行うこととされています。
令和3年の医療法改正により、第8次医療計画から医療計画の記載事項として、新興感染症への対応に関する事項が追加され、医療連携体制に関する事項については、5事業に加え新興感染症発生・まん延時における医療の6事業となりました。なお、5疾病に加えることとしないものの、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性腎臓病(CKD)、ロコモティブシンドローム、フレイル、肺炎、大腿骨頸部骨折等については、現状を把握した上で、その対策については健康増進施策等関連施策と調査をとりながら講じることが必要であるとされています。
第8次医療計画の全体について
着実に取組を推進 ―地域医療構想―
外来機能報告により得られたデータ活用 ―外来医療―
令和6年4月に医師の時間外・休日労働の上限規制が施行 ―医療従事者の確保等―
研修の受講の推進 ―医療の安全の確保等―
(注)「医療計画について」(令和5年3月31日厚生労働省医政局長通知、「第8次医療計画について」(令和5年度第1回医療政策研修会」(令和5年5月18日」より引用
全人的な緩和ケアを実施すること ―がんの医療体制構築に係る指針―
発症後の速やかな搬送と専門的な診療が可能な体制 ―脳卒中の医療体制構築に係る指針―
デジタル技術を含む新たな技術の活用 ―心筋梗塞等の心血管疾患の医療体制構築に係る指針―
治療、重症化予防が可能な体制 ―糖尿病の医療体制構築に係る指針―
「本人の困りごと等」への支援等と緊急時ニーズの対応 ―精神疾患の医療体制構築に係る指針―
高齢者救急への対応が可能な体制―救急医療の体制構築に係る指針―
実効性の高い業務継続計画(BCP)の策定―災害時における医療体制の構築に係る指針―
医師確保計画と連携、整合性をとること ―へき地の医療体制構築に係る指針―
ハイリスク妊産婦に対する医療の提供が可能な体制 ―周産期医療の体制構築に係る指針―
退院後の医療的ケア児等の緊急入院に対応できる体制― 小児医療の体制構築に係る指針―
平時に都道府県と医療機関が協定を締結する仕組み等が法定化 ―新興感染症発生・まん延時における医療に係る指針
急変時の対応が可能な体制 ―在宅医療の体制構築に係る指針―
(注)「疾病・事業及び在宅医療に係る医療体制について」(令和5年3月31日厚生労働省医政局地域医療計画課長通知(令和5年5月26日一部改正))より引用
5疾病ごとに、急性期から回復期や維持期、生活期までの医療提供体制を構築するとされていることから、それぞれ地域における医療機関ごとの役割を明確化し、役割分担するために連携することが必要となります。
また、令和4年4月1日付で施行された外来機能報告では、地域における外来医療に係る病院及び診療所の機能の分化及び連携の推進のため、外来医療の実施状況等を都道府県知事に報告をすることになりました。外来機能報告における結果は病床機能報告と同様にホームページ上で公表されることから、医療機関ごとの役割が明確化されます。地域の実情に応じた、外来から入院までの総合的な地域の医療提供体制の構築が議論されることが望まれます。
令和6年度は介護保険事業計画及び障害福祉計画の開始年度に加え、診療報酬、介護報酬、障害福祉サービスの3つの報酬が同時改定されます。政策の動向を踏まえ、改定されることが予測されることから、それぞれに関連する領域等についても今後の動向に注視が必要です。
※上記の部署・内容は、掲載日時点のものとなります。2023/06