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インクルーシブ保育の在り方等に関する調査研究

近年、障害者の権利に関する条約への批准や障害の差別の解消に関する法律等を背景に、教育や保育分野をはじめとした多様な分野で「インクルージョン」が重要な理念として注視されており、保育分野においては「こども未来戦略」(令和5年12月22日閣議決定)において、「障害の有無にかかわらず、安心して暮らすことができる地域づくりを進めるため、地域における障害児の支援体制の強化や保育所等におけるインクルージョンを推進する。」と明記され、インクルーシブな保育の実践及び推進が求められている。 ※本調査研究は令和6年度子ども・子育て支援等推進調査研究事業で実施したものです。

背景及び目的

日本においては、近年、障害者の権利に関する条約への批准や障害の差別の解消に関する法律等を背景に、教育や保育分野をはじめとした多様な分野で「インクルージョン」が重要な理念として注視されている。保育分野においては令和5年12月22日に閣議決定された「こども未来戦略」において、「障害の有無にかかわらず、安心して暮らすことができる地域づくりを進めるため、地域における障害児の支援体制の強化や保育所等におけるインクルージョンを推進する。」とされ、多様な支援ニーズへの対応を求められたところである。

しかしながら、「インクルージョン」から派生した「インクルーシブな保育」の解釈の難しさ等が要因となり、インクルーシブな保育の具体化まで至っていない現状があり、自治体及び保育現場における適切なインクルーシブな保育への理解と、その実践に向けて必要となる多様な準備及び調整の検討が求められている。

以上の背景を踏まえ、保育所等でのインクルーシブな保育の実践的な取組推進に資するよう、保育所等におけるインクルーシブな保育の取組状況及び自治体におけるインクルーシブな保育の推進状況を把握し、保育所等での先駆的なインクルーシブな保育における調整プロセスや取組の工夫等を整理した事例集を作成することを目的とし、本調査研究を実施した。

実施概要A:基礎調査

インクルーシブな保育が求められる日本における背景や経緯、社会動向、日本のおけるインクルーシブな保育に係る現状を把握するため、公表データ等によるデスクトップリサーチを実施した。また、国内ではインクルーシブな保育を明示的に定義したものがないため、本調査研究の初期段階において、基礎調査の結果を基にした有識者による検討も踏まえ、「インクルーシブな保育が実践されている状態」と判断するための重要な観点を整理した。

実施概要B:アンケート調査

保育所等及び自治体におけるインクルーシブな保育への理解とともに主に保育所等と児童発達支援事業所等との併設・交流におけるインクルーシブな保育の実施状況、取組効果等を把握し、取組の課題や連携に必要な調整事項等について整理するため、全国の保育所等22,887施設、市区町村1,741団体(保育主管課)へ調査票を配布し、7,727施設(回収率33.8%)、603市区町村(海中率34.6%)から回答を得た。

保育所等からの回答は、インクルーシブな保育の実践に必要な体制や取組、外部からの支援等の検討に活用するとともに、ヒアリング調査の選定に活用した。また、自治体からの回答は、インクルーシブな保育の進展の向けて求められる自治体の支援策等の検討に活用した。

実施概要C:ヒアリング調査

保育所等と児童発達支援事業所等との併設・交流によるインクルーシブな保育の具体的な実施内容や実施体制、保育所等と児童発達支援事業所等との連携方法や連携内容、インクルーシブな保育の取組効果や持続するための工夫、更にはインクルーシブな保育の取組を推進する上での課題や課題への対応策等を把握するため、アンケート調査及び学識有識者等による検討委員会での意見聴取を踏まえ、合計8か所の保育所及び認定こども園を選定しヒアリングを実施した。

実施概要D:事例集作成

全ての保育所等及び自治体にとって、インクルーシブな保育の実践及び推進の参考となることを目指し、ヒアリング調査で聴取した保育所等と児童発達支援事業所等の併設・交流におけるインクルーシブな保育の実践事例をとりまとめ、事例集を作成した。また、本事例集をインクルーシブな保育に携わる関係者が参考にすることで、対話による共通認識が促進されることも期待している。

事例集では、冒頭に各保育所等が自ら「インクルーシブな保育が実践されている状態」であるかどうかを確認するための重要な観点を示し、更にはインクルーシブな保育を実践するためのワークシートを作成した。

まとめ及び考察

インクル―シブな保育の状態を高めていくにあたり特に重要と考えられる事項を、保育の体制整備にかかる観点と保育実践に係る観点の2つの大分類を基に整理するとともに、自治体の支援における重要事項を下記のとおり整理した。

1. 保育の体制整備に係る観点における重要事項

  • インクルーシブな保育に対する保育士等一人ひとりの理解と共感
  • こどもの特性に応じた専門的支援の確保

2. 保育実践に係る観点における重要事項

  • こどもの特性を理解した上での一体的保育
  • 職員間でのお互いの尊重及び連携
  • 保護者及び地域に対して開かれた保育

3. 自治体の支援における重要事項

お問い合わせ先

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リスクアドバイザリー事業本部  ヘルスケア 
財満 信子|シニアマネジャー
山田 圭之介(看護師・保健師)
堤  康崇
都築 由美
E-mail : dthc_surveyinfo@tohmatsu.co.jp
※上記の社名・役職は 2025/04時点のものとなります。