調査レポート

個人情報保護法改正に伴うウェブプライバシー対応の調査

個人情報保護法改正に伴うウェブプライバシー対応の調査

日本の個人情報の保護に関する法律 (以降、個人情報保護法とする)は、2003年に施行されて以降三年ごとに見直されており、直近では2022年4月に改正法が施行された。クッキー (Cookie) は個人関連情報として新たに規定され、第三者提供先で個人データと紐づく場合には、提供元が提供先による同意取得を確認する、または同意取得を代行することが求められる。加えて、企業組織が保有する個人データに関する公表事項が追加されたため、必要に応じてプライバシーポリシーの改定が求められる。そこで本稿では改正法の施行に伴い、クッキー使用の同意を取得するクッキーコンセントバナーの導入やプライバシーポリシーの改定がどの程度生じたかを調査し、その結果を報告する。

エグゼクティブサマリー

法改正後1年間でプライバシーポリシーの改定は半数程度にとどまった

2022年4月における個人情報保護法の改正法施行を受け、 2,654件のうち 959件 (36.1%) のプライバシーポリシーが改定された。1年間の定点観測を通じて、プライバシーポリシー改定の累計割合は51.4%で、残りの48.6%は改定されていなかった。改定自体は1年間に渡って発生していたため、各社プライバシー対応のタイミングが異なると考えられる。

海外と比較して日本のクッキーコンセントバナーの表示率は低かった

国内コーポレートサイト17,750件のうち 961件 (5.4%)のみがクッキーコンセントバナーを表示し、新しく個人関連情報と整理されたクッキーの使用に対するユーザ同意を取得していた。また、 1年間の定点観測を通じて、クッキーコンセントバナー表示率は、1.2%の微増にとどまり、クッキー単体では個人データではない日本においてその導入は限定的であった。

多くのバナーでダークパターン※3が適用されていた表示された

クッキーコンセントバナーを分析した結果、10%以上にダークパターンが適用されていることを確認した。特に、ウェブサイト全面にバナーを表示し、ユーザに操作を強制させる Consent Wall の適用率が最も高かった。ウェブサイトのユーザ体験を低下させてまでも、クッキーに対するユーザ同意を取ろうとするウェブサイトが多かった。

取るべきプライバシー対応

クッキーコンセントバナー実装者

  • 法的要件として実施する同意取得では、ダークパターンが国によって規制対象となることを理解する。
  • ダークパターン混入に十分気をつけて、ユーザ理解を促進する明快なバナーを実装・提供する。

ウェブサイト管理者

  • ウェブサイトが使用するクッキーとその用途を特定し、クッキーを取捨選択する。
  • プライバシーポリシーは改正法施行等のタイミングで最新化する。
  • クッキーコンセントバナーを導入する場合、ダークパターンが混入しないよう注意する。
  • さらなるユーザ理解獲得のため、透明性レポートの活用を検討する。

※1 調査した米国ウェブサイト 1,715件に対する割合
※2 調査した EU ウェブサイト 1,663件に対する割合
※3  ユーザの意図に反して特定の行動を起こさせるよう設計されたインターフェース
※4 分析したクッキーコンセントバナー数に対する Consent Wall の適用率

個人情報保護法改正に伴うウェブプライバシー対応の調査(サイズ:2,311KB)
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