Posted: 05 Jan. 2023 3 min. read

カーボンニュートラル、科学技術による最短距離の実現に向けて(2)

【シリーズ】サイエンス・テクノロジー×ビジネス 産学連携と社会実装

エジプトで開かれていた世界の気候変動対策を話し合う国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)が2022年11月20日、閉幕した。今回の会議では途上国への支援や補償が初めて重要課題となり、当初の予定を延長して議論され、最終的に、気候変動による被害を受ける途上国を支援するための新たな基金を創設するとした成果文書が採択され、歴史的合意に至った。

しかし、被害の根本原因でもある温室効果ガスの排出削減に関しては、気温上昇を1.5度に抑えるさらなる努力の追求などが成果文書に盛り込まれたものの、化石燃料の段階的廃止など具体的な排出削減対策は持ち越された形となった。一方、COP27の中で世界経済フォーラム(WEF)とケリー米大統領特使(気候変動問題担当)は温室効果ガス排出削減を目指す企業連合が2030年までに脱炭素技術に120億ドルを投資すると発表した。

2050年カーボンニュートラル目標を達成するためには削減目標の積み上げが不可欠であり、そのためには脱炭素技術への更なる投資が必要となる点についても明らかになった。脱炭素社会実現に向けた革新技術の社会実装加速が一層求められる。

前回の記事では、カーボンニュートラルを最短距離で実現するためには、既存・新規を含めた様々な技術の優先度をつけ、社会実装のための具体的な取り組みの促進、技術開発、ビジネス連携、制度設計等を進める多様なプレイヤー同士の綿密な協力が重要である一方、現状としては必ずしも関連するプレイヤーの利害関係が一致しておらず、連携の幅が限定的であると言及した。

これを受けて、デロイト トーマツ グループの科学技術イニシアチブであるDTST(Deloitte Tohmatsu Science & Technology)は「2050年カーボンニュートラル実現に向けた技術リスト」を公表・更新するとともに、研究者及び様々な業界のビジネスリーダーをお招きしてプレイヤー同士の連携を促進させるための議論を行うセミナーを定期的に開催している。 

2050年カーボンニュートラル実現に向けた技術リスト第3弾:
https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/public-sector/articles/technology-list-carbon-neutrality3.html
 

また、技術リストに加え、デロイト トーマツ グループの各社と協働し、技術的なプロジェクトのみならず、カーボンニュートラルを実現するために必要な人材戦略の策定等、多数の案件に参画している。技術的なプロジェクトの一例として、この度デロイト トーマツ コンサルティングが受託したNEDOの調査事業である2022年度「省エネルギー技術のCO2削減及び省エネルギーポテンシャル調査(産業及び部門横断分野)」をDTSTの協力も得ながら遂行する。

※参考:https://www.nedo.go.jp/koubo/DA3_100306.html(外部サイト)
 

本調査事業の中では、2050年カーボンニュートラル実現に向けて、わが国が中長期的に支援すべき重要技術を整理するとともに、各技術の将来の省エネルギーポテンシャルやCO2削減ポテンシャルに関するに調査・分析を行っていく。

今後は、各技術に関する知見を深めていくに加え、各技術の評価を基にして、2050年までに具体的にどの技術をどのタイミングで実装すべきかを定めた中長期的なビジョン・ロードマップの策定にも取り組んでいき、技術リストとともに公開することを検討している。

この中長期ビジョン・ロードマップの策定・定期的な見直し及び様々なプレイヤー同士の連携を促進させるための議論を通じて、カーボンニュートラル実現に向けた動きを一層加速させていく。

 

執筆者

明石 康平/Kohei Akashi
有限責任監査法人トーマツ

ボイラーメーカー勤務等を経て、現職。有限責任監査法人トーマツ入社以来、パブリックセクターに所属し、国公立/私立大学、独立行政法人、公益法人、病院、JAなど主に公的部門への会計監査業務のほか、地方自治体への包括外部監査や地方公営企業への経営計画策定などのアドバイザリー業務に従事。現在、社内の科学技術イニシアチブであるDTST(Deloitte Tohmatsu Science and Technology)に参画し、国の地球温暖化対策や省エネに係る業務にも従事。

※所属などの情報は執筆当時のものです。

 

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プロフェッショナル

齋藤 晃太郎/Kotaro Saito

齋藤 晃太郎/Kotaro Saito

有限責任監査法人トーマツ マネージングディレクター

エネルギーシンクタンク、環境コンサルティング会社等を経て現職。 エネルギー・資源分野の環境対応を中心とする政策立案・コンサルティングに20年以上従事。エネルギー・地球温暖化政策、再エネ・省エネ・温暖化対応次世代技術に精通しており、近年は中央省庁の政策立案・実行支援、政策・施策/事業評価のプロジェクトをリードしている。