事例紹介

私立学校の補助金について

私立学校の補助金の種類と使途について

私立学校の補助金の使い方は様々です。私立学校が交付を受けている一般的な補助金の使い方、特に経常費補助金の種類や使途の制限等について解説します。

執筆者: 公認会計士 藤原槙太郎

 

補助金の種類について

補助金とは国または地方公共団体等から交付する金銭の給付のことを言います。補助金といってもその種類は様々あり、一般企業や個人が交付対象となる補助金など多岐にわたります。その中でも今回は私立学校を交付対象としている補助金についてご紹介させていただきます。

私立学校が交付を受ける補助金の中で最も一般的な補助金は経常費補助金です。経常費補助金は、大学、短大、高専とそれ以外で交付元や交付基準が異なります。例えば、大学、短大、高専は文部科学省から日本私立学校振興共済事業団に補助金のお金が交付されており、日本私立学校振興共済事業団が一定の基準を設けて大学、短大、高専に交付を行っています。一方で、高校以下の学校の場合、文部科学省から都道府県にお金が交付され、都道府県によって私立学校への交付基準が異なります。

また、その他にも私立学校施設整備費補助金や私立大学等研究設備整備費等補助金、私立大学等改革総合支援事業に関する補助金など、私立学校には交付を受けることが可能な多数の補助金があります。

【参考】

 

経常費補助金の使い方について

では、私立学校で最も一般的な経常費補助金の使い方について解説します。

経常費補助金は、一般補助と特別補助の二種類に分類されます。一般補助は私立学校の下記6つを対象とする補助金で、対象範囲であれば、使途の制限はありません。

  1. 専任教職員の給与費
  2. 非常勤教員の給与費
  3. 教職員の福利厚生費
  4. 教育又は研究に直接必要な機器等の購入
  5. 研究旅費
  6. 教育研究経常費

また、私立学校が申請の手続きを実施すれば、教職員の数、学生数の定員割れや超過の状況により増減するものの、どの私立学校でも受けられる補助金となります。

一方で、特別補助は私立学校の特色ある取組みを実施している大学等について、特定の分野や課題等に係る教育研究の振興を図るために、交付する補助金です。例えば、私立大学等改革総合支援事業に係る補助金が特別補助に該当するものです。特別補助についても先述の取組みのためであれば、使途の制限はありません。

このように使途の制限がないものではあるものの、一定の取り組み内容の具体性や実施可能性などを考慮して補助金の交付元が交付を決定するため、不確定な要素が多いものと考えられます。

 

使途が限定される補助金について

前の章で紹介した経常費補助金は私立学校が一般的に交付を受けることができる使途の制限がない補助金の代表例で、すべての補助金が使途の制限がないものではありません。

例えば、「防災機能等強化緊急特別推進事業」に係る補助金は私立学校の防災機能強化、安全なキャンパス整備を趣旨として、耐震補強工事やアスベスト対策、バリアフリー、備蓄倉庫等の設置について補助を行うものです。また、「ICT活用推進事業」に係る補助金も私立学校のICTの推進を趣旨として、ICT装置の購入とその導入工事、その対応設備の工事に実施等に補助を行うものです。

このように私立学校の施設整備等に係る補助金は使途の制限のあるものが多くなっています。一方で、使途の制限があるものは条件にあてはまれば交付を受けることが可能な補助金であると言えます。

 

おわりに

私立学校は先述のとおり、様々な補助金の交付を受けており、教育研究のために使用しています。補助金の種類はご紹介したもの以外にも多岐にわたり、交付要件も大学等や高校等によって異なるものもあります。また少子化が進んでいる現代においては、補助金の予算規模も減少すると考えられます。私立学校においては、これらの補助金をうまく利用しつつ、安定した学校運営が求められています。そのためには、使途が限定されている補助金ではなく、使途が限定されていない補助金の使用方法がこれからの大学運営のカギを握るかもしれません。

当該記事は執筆者の私見であり、有限責任監査法人トーマツの公式見解ではありません。

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