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グループ通算制度の重要ポイント(第4回)個別項目の計算方法

月刊誌『会計情報』2023年5月号

デロイト トーマツ税理士法人 公認会計士・税理士 大野 久子

1. はじめに

令和2年度税制改正により、連結納税制度について抜本的な見直しが行われ、令和4年4月1日以後開始事業年度についてグループ通算制度として改組されることになった。

本稿では、連載(第4回)として、所得計算における個別項目の計算方法について解説する。

なお、所得計算において最も特徴的な、損益通算と欠損金の通算については、会計情報2022年12月号「グループ通算制度の重要ポイント(第1回)損益通算しながら単体申告」をご参照いただきたい。

551KB, PDF ※PDFダウンロード時には「本記事に関する留意事項」をご確認ください。

2. グループ通算制度における所得計算・税額計算の概要

まず、グループ通算制度における所得計算・税額計算の流れについて確認する。

グループ通算制度における所得計算は損益通算・欠損金の通算をするという特別な取扱いがある以外は、各通算法人を納税主体とする単体申告であるので、各法人において計算することを基本的な考え方としている。そのため、所得計算・税額計算の基本的な流れは、通常の単体納税における流れと大きくは変わらない。

しかし、通常の単体納税と完全に同じというわけではなく、一部の項目については通算グループ全体の数字を加味することとされている(グループ通算制度特有の計算)。

また、完全支配関係のある法人グループのための税務上の取扱いとして、グループ法人税制がある。これは、法人グループによる選択などを経ずに、単体納税であってもグループ通算制度であっても、完全支配関係のある法人グループについて、いわば強制的に適用されるものとなっている。グループ通算制度を適用している場合についても、完全支配関係のある法人グループであるため、グループ法人税制の内容は適用されるが、グループ通算制度独特のものではない(グループ法人税制による取扱い)。

グループ通算制度における所得計算・税額計算の流れを図に表すと、次の図のようになる。なお、各項目については、3~5において説明する。

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3. 中小法人等の判定

法人税法・租税特別措置法において、中小法人等について特別な取扱いが設けられていることがあるが、グループ通算制度を適用している場合には、通算グループ内の全社が中小法人等に該当する場合に限定される。

その概要は次の通りである。

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4. 所得の調整に関する事項

所得の調整に関する内容のうち、損益通算と欠損金の通算以外の個別項目について、グループ通算制度特有の計算をする主な項目とその内容は次の通りである。

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5. 税額の調整に関する事項

税額の調整に関する内容のうち、グループ通算制度特有の計算をする主な項目とその内容は次の通りである。

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6. おわりに

グループ通算制度においては、各法人が納税義務者となり、基本的に各法人における計算を行うこととされたが、損益通算・欠損金の通算以外にも全通算法人での計算を行うべき項目がある。結局のところ、確定申告の計算においては通算グループ内の法人で情報共有しながら作業を進める必要があり、留意が必要である。

以 上

本記事に関する留意事項

本記事は皆様への情報提供として一般的な情報を掲載するのみであり、その性質上、特定の個人や事業体に具体的に適用される個別の事情に対応するものではありません。また、本記事の作成または発行後に、関連する制度その他の適用の前提となる状況について、変動を生じる可能性もあります。個別の事案に適用するためには、当該時点で有効とされる内容により結論等を異にする可能性があることをご留意いただき、本記事の記載のみに依拠して意思決定・行動をされることなく、適用に関する具体的事案をもとに適切な専門家にご相談ください。

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