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金融機関必須のリスクベースでの「経済安全保障」対応

週刊金融財政事情2023.11.21掲載記事

経済安全保障推進法のいわゆる「4本の柱」のうち、基幹インフラ役務の安定的な提供の確保に関する制度が2024年春に運用を開始する。それに伴い、同制度が適用される見込みの金融機関を中心に準備・検討が進められている。もっとも、金融機関の基幹インフラとしての重要性に鑑みれば、形式的なルールベースの対応のみでは十分とはいえない。推進法の適用対象化否かにかかわらず、すべての金融機関が経済安全保障を「経営上のリスク」と捉えてリスクベースで対応することが急務となる。

二極化する金融機関の動向

2022年5月に成立した経済安全保障推進法は、①重要物資の安定的な供給の確保、②基幹インフラ役務の安定的な提供の確保、③先端的な重要技術の開発支援、④特許出願の非公開のいわゆる「4本の柱」を定めている。これまでは事業会社を中心に、①のサプライチェーン管理に関する動きが先行していた感がある。だが、②に関する指針案と、当該指針が適用される金融機関を指定する基準案が23年2月に公表されて以降、適用対象となることが見込まれる金融機関を中心に、徐々に関心が高まってきたように思われる。

もっとも、24年春の制度の運用開始に向けて、金融機関の基幹インフラ指針対応の巧拙は大きく「二極化」しているようにも感じられる。

実際、指針案等の公表当時から、自社への影響などを組織横断的かつ前広に検討し、当局等とも積極的にコミュニケーションや情報交換を行ってきた金融機関もある。そうした金融機関は、24年春の段階で適用がある特定重要設備・構成設備・重要維持管理等につき、事前届け出の準備を着々と進めている。また、形式的な法令対応にとどまらず、基幹インフラ指針が今後のシステム開発・保守・運用等に与える影響を検討し、これらに係る社内手続き・規定やベンダー選定に必要な手続きなどの見直しに着手している事例も見られる。

他方、実際の事前届け出は、秋に公表されるとみられる技術的な解説(ガイドライン)を踏まえて行うことが想定されるため、これらの公表や内容の精査などを待って対応を進めることを予定している金融機関も一部にはあるようである。そうした金融機関においては、基幹インフラ指針の適用対象となる可能性がある機器・ソフトウェアや、これらのうち特定重要設備・構成設備・重要維持管理等に該当すると見込まれるものの特定が進まず、当局等のコミュニケーションにも苦慮しているケースがあるように思われる。
 

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※本記事は、一般社団法人金融財政事情研究会の許可を得て当法人のウェブサイトに掲載したものにつき、無断転載を禁じます。

週刊金融財政事情2023.11.21掲載記事【PDF, 625KB】
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