事例紹介

取組事例紹介 商工会議所によるまちづくりビジョン検討の支援

不動産開発事業やまちづくりに係るアドバイザリーサービスより、取組事例を紹介します。

不動産アドバイザリーチームでは、インフラ・公共セクターアドバイザリーチームと連携し“都市戦略アドバイザリーサービス”として官民連携事業や面的な不動産開発事業、まちづくり検討に係るアドバイザリーサービスを提供しています。サービス提供実績より、デロイト トーマツが提言検討に携わった鹿児島商工会議所による「ウォーターフロント・中心市街地のまちづくりビジョンに関わる提言」の策定支援プロジェクトを紹介します。

まちづくりビジョンに関わる提言取りまとめの背景

本プロジェクトは、官民一体となったまちづくり推進のきっかけとするために、まちづくりの具体化に向けた議論のたたき台とすることを目的に鹿児島商工会議所がまちづくりに対する具体的な考えを提言として取りまとめ、その検討過程においてデロイト トーマツがアドバイザリーサービスを提供したものです。

対象エリアの位置図
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本件の対象となる鹿児島市は、新幹線の南の発着点である鹿児島中央駅や、離島航路の発着点である本港があり、国内外から数多くの来街者が行き交う観光都市としてのポテンシャルを有しており、自治体が掲げるまちづくりコンセプト「国際観光都市づくり」の実現に向けても、現在市内の賑わい・観光の中心となっている天文館エリア~ウォーターフロント地区(以下、「対象エリア」という。)が引き続きまちづくりをけん引していくことが期待されています。一方で、まちづくりの推進においては、明確なまちづくりビジョンが示されないまま、ウォーターフロント地区を中心に大規模施設の建設計画が進行しているという課題が生じていました(2022年度の状況)。そのため本件のクライアントである鹿児島商工会議所では、目指すべきまちづくりを実現するためには、具体的なビジョンを策定したうえでビジョンに沿った個別開発を行っていく必要があると考え、まちづくり推進の一助となるよう、まずは会議所としてのまちづくりに対する考え方をまとめる方針としました。以降にて具体的な提言の内容を紹介します。

 

ウォーターフロント利活用計画と課題

現在、鹿児島市内では行政による2つの大型施設の整備が同時に検討されています。鹿児島県による新総合体育館(スポーツ・コンベンションセンター基本構想)、鹿児島市によるスタジアム(サッカー等スタジアム構想)はともにウォーターフロントの低未利用地を整備候補地としていますが、両構想ともに個別の施設整備計画に留まっており、ウォーターフロントに隣接し鹿児島市を代表する中心市街地「天文館エリア」と連携したまちづくりビジョンをより具体的に示す必要がありました。加えて、鹿児島市は桜島に代表されるような自然や伝統文化が揃っており、ビジネス観光客からも需要が高いロケーションにありながら、既存のMICE施設における機能・規模不足により、必ずしも利用者のニーズに対応できないと考えられています。そのため、対象エリアが連携して一体的なまちづくりを推進するとともにMICE機会の向上が求められています。

一体的なまちづくりの取り組み視点
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一体的なまちづくりに向けた4つの基本方針

当該ビジョンでは、対象エリアの役割を「鹿児島のまちづくりをハード・ソフト両面から先導する交流・賑わい拠点」として設定し、具体的なまちづくりの取り組み視点として下記の4点を掲げています。

1) 対象エリア内外の交流機会の拡大

国内外からの新たな来訪者誘致拠点となる MICE 施設の整備や地域の魅力を発信する施設整備、 PR 体制の構築を行い交流人口のさらなる拡大を図ります。また、観光客だけでなく、幅広い世代の地域住民も日常的に利用したくなる賑わい・文化施設の整備を行い、多様な世代の地域住民の交流を促進する環境を実現します。

2) まちなか居住の推進

賑わいや交流人口の集積により対象エリアの活性化を図り、まちなか居住を推進します。また、容積緩和を含めた建物の高度利用を実現するとともに、多様なライフスタイルの受け皿を整備します。加えて、台湾など外国人の職住環境の整備、外貨も含めた域内消費を促進する諸外国からも関心を集める国際的なまちづくりを推進します。
 

3) 面的な賑わいの創出

歴史・文化・環境等の地域資源を考慮した対象エリア内における機能分担および、鹿児島の文化などを活かした街の魅力を発信する拠点施設の整備により都市機能のさらなる充実、地域資源の活用による街の賑わい向上を図ります。また、広域エリアの回遊性を向上させる交通ネットワーク(道路、公共交通)の整備による回遊性の向上を図り面的な賑わい形成を目指します。
 

4) 持続的なまちづくりの実現

地域住民、地元企業、行政とのパートナーシップ(協力体制)の構築、民間主体の DMO (観光地域づくり法人)等のまちづくり主導団体の組成など官民一体となったまちづくりの推進を目指します。また、公共交通や徒歩を中心とした環境に配慮したまちづくりの推進を図ります。

まちづくりイメージ|まちの骨格構成
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エリア特性を活かしたまちの骨格構成

まちづくり基本方針と合わせて、具体的なまちづくりのイメージも整理しています。既存の立地・エリア特性を活かしたまちの骨格を計画し、面的な賑わい形成を目指しています。

【まちの骨格構成①:3つの賑わい核の形成】

対象エリア内の賑わい創出をけん引する3つの賑わい核を設定します。核それぞれにおいては、立地特性等を活かした特色ある核の形成を目指します。

  • まち文化と滞在の賑わい核
    鹿児島市の賑わいの中心地である天文館ゾーンについて、まち文化と滞在をキーワードに更なる魅力創出・賑わい形成を目指し、低未利用地の高度利用を図ります。
  • ウェルネス・文化の賑わい核
    鹿児島県による新総合体育館整備を契機とし、健康・スポーツをキーワードとした県民および県外からの来訪者の交流機会拡大を目指します。
  • 交流・観光の賑わい核
    ウォーターフロントの豊かな環境を活かし、交流・観光をキーワードとして新たな賑わい形成、鹿児島の魅力を発信する機能の導入を目指し、国内外の会議等が可能なMICE施設を整備します。

【まちの骨格構成②:賑わい核をつなぐ誘導空間の形成】

核の魅力向上による往来機会の創出、歩きたくなる通り 空間の形成(休憩スポットの導入や通りの景観形成など)により、対象エリア内の回遊性を向上します。

【まちの骨格構成③:対象エリア全体・対象エリア外への波及効果】

上記の取り組みにより、対象エリア内の面的な賑わいを形成するとともに、周辺地域への波及効果を創出します。さらに、対象エリア外との連携により鹿児島中央駅から鹿児島駅周辺までの広域的な活性化を先導します。

 

デロイト トーマツの都市戦略アドバイザリーサービス

本ビジョンは2022年度に鹿児島商工会議所による提言としてまとめたものであり、2023年度以降地元住民、地元企業・団体、行政など様々な立場の関係者が議論を交わし、一体となってまちづくりビジョンを作り上げることが期待されています。

デロイト トーマツでは、本プロジェクトにおいて、クライアントの皆様の思いをビジョンとして取りまとめるサポートを提供するとともに、まちづくりに対する知見を提供しました。今後の類似案件においても都市戦略や不動産に関する見識を有する専門家による多様な知見からまちづくり推進に向けた都市戦略アドバイザリーサービスを提供していきたいと考えております。

執筆者

デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
インフラ・PPPアドバイザリー
シニアヴァイスプレジデント 後藤 佑介
不動産アドバイザリー
ヴァイスプレジデント 石井 理紗
シニアアナリスト 雑喉谷 峻平

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