保険会社がとるべき中小企業マーケットへのアプローチ

中小企業マーケットへのアプローチの再創出

デロイトは、中小企業の保険に関する考え方を理解する目的で、2021年に14カ国において5,300社を対象に調査を実施し、「中小企業向け保険の未来」を執筆した。そこでは、複雑に多様化するニーズを正しく捉え、かつビジネスとしての採算性を担保しながらマーケットイン的なアプローチを実践するためには、「より企業特性を適切に捉えたセグメンテーション手法の再創出」「個々の企業のリスクの評価・アドバイスを起点としたアプローチ、およびそれを実現する商品・サービス体系の再創出」「伝統的なチャネルのデジタル化と新しいチャネルの開拓、およびこの2つのベストミックスの再創出」が前提となるという仮説を立案した。

そこで今回は、この仮説を検証するために、日本の中小企業に勤務する部長職以上の2,055人を対象にアンケートを実施して、中小企業のリスク対策・保険加入実態を探ることにした。

今回の調査の結果、中小企業のリスク対策・保険加入における意思決定体制にフォーカスしたセグメントを定義し、それぞれの特性を踏まえた有効なアプローチ方法を導き出している。

また、今回の調査を踏まえて日本の中小企業マーケットに対して保険会社に期待される役割は以下2点と考えられる。

1. 中小企業のリスク耐性の強化
   
   中小企業は大企業と比較してリスク耐性が弱く、一定のストレスがかかると経営が持続できなくなってしまう可能性が高い。中小企業が保険の付保を進めることはこのようなストレス局面を乗り越えるための重要な要素となり得る。
2. 中小企業を支えるサービスの発展
   保険以外の他の産業においても、中小企業向けのサービスを展望しながらも有効策を見いだせていない産業が多くある。これらの産業と保険会社が他のサービスと連携することで双方のサービスコストを下げることができれば、サービスプロバイダー側にとっても中小企業側にとってもメリットが大きく、中小企業マーケットの発展に資することができる。

 上記により、日本経済の大きな構成要素である中小企業のリスク耐性が高まり、様々なサービスの供給が行き届くことで成長が促進され、延いては日本経済の持続的成長に繋がっていくだろう。