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クラウド対応ワークインフラの未来

仮想ビジネスインフラの構築に向けて

クラウド対応のワークインフラストラクチャの未来は、マルチクラウドソリューション、連携セキュリティ、分散DevOps戦略へとシフトし、異種インフラ向け戦略やプロセス最適化・リスク軽減といった複雑なクラウドインフラソリューションへの対応が求められます。

COVID-19によってクラウドの成長は加速していく中で、組織はITの複雑さ、セキュリティリスク、運用効率の課題に直面しています

COVID-19は、ビジネスアーキテクチャの前提に根本的な変化をもたらしました。一夜にして、多くの組織がクラウドインフラ戦略にシフトしなければならなくなったのです。実際、Logic Monitor社の調査では、世界のIT意思決定者の87%がパンデミックによって組織のクラウドへの移行が加速するだろうと考え、2025年までにオンプレミスの仕事量が減少すると予測しています 。

世界の労働力の大半がリモートワークを行っているため、大手パブリッククラウドプロバイダーのサービスに対する需要が大幅に増加しています。この大量のトラフィックによって従来のインフラ(例:仮想プライベートネットワーク(VPN))が圧迫され、組織が「リフトアンドシフト」によるクラウドへの移行を余儀なくされたことにより、さらなる最適化の余地が生まれました。外出禁止令によってオンプレミスインフラへのアクセスが不可能ではないにしても困難になり、重大なインフラリスクが浮き彫りになりました。すなわち、緊密に連動したビジネスアーキテクチャとテクノロジーアーキテクチャの負荷に対する脆弱性が顕在化したのです5。これらの理由から、クラウド戦略がクラウドマイグレーション、セキュリティ、運用、バリュープランニング、DevSecOps(ソフトウェア開発(Development)、運用(Operation)、セキュリティ(Security)の合成語)へとシフトし、クラウドネイティブやコンテナ、サーバーレスへの取り組みが後退することが予想されます(図2)。
 

図2 COVID-19がクラウドの戦略とプランニングの重要な転換点となっている

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組織は、クラウドに再び注目し、COVID-19に対応する中で、ITの複雑さ、セキュリティリスク、運用効率の課題に直面しています。一部の組織は、重要性の低いクラウドマイグレーション計画の優先度を下げたり遅らせたりしていますが、レジリエントなリーダーや組織は、スケーラブルなクラウドインフラを使ってテクノロジーバックボーンの近代化を進めています。アプローチを設計するにあたり、クラウドの複雑さを解決するための「魔法の組み合わせ」は、効果的なツール(34%)、アプローチ(34%)、人材(32%)で構成されることがデロイトグローバルの調査で明らかになっています。

これは、多くの組織にとって、クラウドプログラムを再活性化し、開発と運用(DevOps)からフェデレーションセキュリティ、マルチクラウド・ソリューションに至るまで、異種インフラ向けの新たな戦略を採用して、プロセスの最適化とリスクの軽減を図り、複雑さに対処をすることを意味します。

迅速に行動できる組織は、テクノロジーを駆使してバーチャルな仕事、労働力、職場を実現する方法を再考し、インフラを競争上の差別化要因として利用することができています(図3)
 

図3 ビジネス上の課題により、仕事、労働力、現場におけるクラウドインフラソリューションの普及が加速しています

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次なる未開拓分野は私たちの手に委ねられています

COVID-19は、仕事、労働力、職場に劇的な影響を与え、組織は将来のインフラニーズについて考え、絶えず変化するビジネスや労働力のニーズにより適切に対処することのできるクラウドへの移行を加速せざるを得なくなりました。マルチクラウドソリューションやハイブリッドクラウドテクノロジーの戦略は、すでにクラウドを利用している企業にとっては標準的な戦略であり、ビジネスの柔軟性を向上できることから、今後も導入が増加することが予想されます。

クラウドの複雑さに対処するための次なる未開拓分野は、ツール、ソフトウェア、テクノロジーを適切に組み合わせたマルチクラウドソリューションを開発して、クラウドサービスを管理し、ビジネスアプリケーション(バーチャルデータセンターにおけるオーケストレーションデータからAIOpsの導入まですべて)を実現すること、ということになるでしょう。これらの異種ITインフラでは、消費の変化が見られ、クラウドはその柔軟性から、好ましいソリューションとなっています。それと同時に、クラウドは、サイバー攻撃のターゲットとなる新たなアクセスポイントと大きな攻撃対象領域を生み出します。場所の変化によって境界型セキュリティが陳腐化し、インフラ層やデバイス全体におけるセキュリティをより適切に管理できるフェデレーションセキュリティモデルへの移行が必要になっています。

最後に、働き方が根底から変化したことにより、組織はコラボレーションを促進し分散した世界に新たなアプローチを導入するDevOpsのベストプラクティスを強化するようになりました。組織は、アジャイル開発の強化、バーチャルコラボレーションにおけるChatOpsの採用、シフトレフトし続けるDevOpsプロセスの自動化、IT-as-a-Serviceの運用モデルをサポートするための新たな役割への挑戦を模索していくことになるでしょう。このマルチクラウドソリューション、フェデレーションセキュリティ、分散型のDevOpsを組み合わせることで、仮想ビジネスインフラを機能させるために必要な、クラウド対応ワークインフラの未来を創り出すことができるでしょう。

プロフェッショナル

新堀 幸生/Yukio Sinbori
デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員

丸山 由太/Yuta Maruyama
デロイト トーマツ コンサルティング シニアマネジャー

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