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インタビュー:デロイトアナリティクスのソリューションがドライバーとエンジニアにもたらした価値とは?

デロイトアナリティクスでは、2023年シーズンも継続して国内のフォーミュラカーレースのトップカテゴリーであるスーパーフォーミュラをはじめ、国内外のさまざまなレースカテゴリーで活躍をしている株式会社トムスに対し、レースデータ分析プラットフォームの開発や戦略決定を支援するソリューションの提供などを行い、チームがレース戦略上のアドバンテージを獲得できるよう取り組んでいます。

本記事では、2023年に開催されたレースの写真を交えながら、株式会社トムスとの協働におけるデロイトアナリティクスの活動と、レース現場でのデータ活用の取組みとドライバーのコメントを紹介します。

(2022年の取組紹介はこちらの記事をご覧ください。)

本取り組みにおけるデロイトアナリティクスの活動内容

2021年4月以降、デロイトアナリティクスは株式会社トムスと協業し、国内フォーミュラカーのトップカテゴリーであるスーパーフォーミュラ(SF)およびその下位カテゴリであるスーパーフォーミュラライツ(SFL)を対象として、レースエンジニアやドライバーの支援を行うソリューションの開発やシステムの構築に取り組んできました。

レース中のタイムデータを様々な切り口でリアルタイムに分析するプラットフォームをクラウド上に構築しました。これにより、決勝レースにおける各車両のタイム差の推移やタイヤ交換による順位変動の予測等といった情報をリアルタイムに活用することで、レース中のドライバーとエンジニアのコミュニケーションの円滑化や迅速な意思決定に役立てています。

さらに、レース車両の状態データについても自動で取得・可視化する機能を追加するなど、決勝レースにおける戦略決定をより高度化するために継続的な機能の追加や改善に取り組んでいます。

SF及びSFLは4月から11月までの期間に約1か月間隔でレースが開催されるため、デロイトアナリティクスのデータサイエンティストはドライバーやレースエンジニアと機能の改善や追加要件の抽出や優先順位、実現方法についてのディスカッション、機能開発や実装、テストといったサイクルをレースの間隔に合わせて素早く繰り返し、各レースごとにシステムのアップグレードや新しいソリューションの提供を行います。

また、レース終了後には必ずフィードバックミーティングを行います。レース中に新しい機能やソリューションを使って頂くことで、事前に想定していなかった課題やUIなどの改善事項が出てくるため、その内容を踏まえて次のレースに向けた開発サイクルを開始します。このような改善のサイクルを素早く回すことで、シーズンを追うごとにより良いシステム、ソリューションを提供できるよう取り組みを進めています。

 

レースデータ分析プラットフォームについてのドライバーコメント

——レースウィーク中、どのようにレースデータ分析プラットフォームを利用していますか?

【宮田選手】

フリープラクティスでは、セクター毎の走行結果を定量的に素早く把握するために使用しています。客観的なデータを元にすることで、車両セッティングとドライビングを紐付けて双方の改善を行うことができるので大変有意義です。予選まではセクター毎のベストタイムなど、自分と他ドライバーを細かく比較する目的で使用しています。予選後FP2までは、ピットインのタイミングやドライビングの仕方など、決勝へ向けてのストラテジーの組み立てやマシンセッティング検討に利用しています。

【笹原選手】

分析プラットフォームを利用することで、自分たちの状態把握だけでなく、他チーム他ドライバーとの差分を数値化されたデータで細かく確認できること、全体の傾向や流れが見やすくなることに大きなメリットを感じています。ドライバーとしては得られる情報は多いほどよく、かつそれらが数値化されているので大変ありがたいです。

 

——レースデータ分析プラットフォームが導入されたことによってドライバー目線でどういったメリットがありましたか?

【宮田選手】

導入前はデータが集約されておらず、走行後の振り返りが満足に行えないこともありましたが、導入後はいつでもデータで走行の振り返りを行うことが可能になり、レースのストラテジーの判断が容易になりました。そういった情報を予め自分の頭に入れた状態でレースを進めることで、エンジニアのみに頼らずドライバーもストラテジーに関わりやすくなりました。

【笹原選手】

分析プラットフォームによって、エンジニアやドライバーが求める情報をタイムリーに見ることができること、それを後で振り返ることができることにメリットを感じています。フリープラクティスは本当に時間が限られており、スーパーフォーミュラでは車両はほぼ持ち込みで、現場では微調整程度しかセッティングの幅がないのですが、その中でも素早く必要な対応を行うことができるのは、プラットフォームを利用することの一番の強みだと思います。

——ドライバー目線での改善要望や今後欲しい機能、情報はありますか?

【宮田選手】

現在のセクターよりもっと細かい単位(ミニセクター)の情報が見たいですね。コーナー毎など、気になる部分の細部を深く見ていきたいです。もっと細かい単位の情報を見ることで、自分の走行結果の要因を推測したり、仮説を立てたりするのに役立てたいです。コーナー毎の自分や他ドライバーの正確な走行ラインを、精度良くかつ分かりやすく把握したいです。

【笹原選手】

日本のレースは走りながら見られる情報量が圧倒的に少なすぎると感じているので、走りながらずっと必要な情報を見ていたいです。現在のSFでは、走行データは走行後ピットインしてデータを吸い上げた後に必要な情報を表示した上で、エンジニアとのディスカッションや車両のセットアップを行っているのですが、その時間がとてももったいないと感じています。ドライバーが走りながら必要な情報を見ることができれば、その場で判断できることも格段に増えるので、セットアップのスピードアップに繋げることができると考えています。

——今期の好調のキープに、レースデータ分析プラットフォームが寄与できている点はありますか?

【宮田選手】

レースデータ分析プラットフォームの導入により、エンジニアの手作業を介さずセクター毎の走行データ比較しディスカッションが行えることで、現場のスピードアップに繋がっています。車両セッティングの際も、客観的なデータを元にすることで判断が迅速化され、予選や決勝に向けてしっかりとフォーカスできるようになりました。引き続きレースデータ分析プラットフォームを活用してレースを組み立てていきたいと思います。

 

今期の更なる飛躍に向けて

8/20にモビリティリゾートもてぎで行われたスーパーフォーミュラRd.7もてぎ大会を終え、現時点でトムスは宮田選手がドライバーズランキング首位となっており、シリーズチャンピオンを狙える位置につけています。

デロイトアナリティクスは、残るシーズン最終戦も引き続きソリューション開発やデータ分析によってチームの勝利へ貢献できるよう、支援を行っていきます。

チーム紹介

VANTELIN TEAM TOM'S
#36 ドライバー
笹原 右京様

2003年(当時7歳)でカートをはじめ、国内外のシリーズでタイトルを獲得。2013年からはフォーミュラルノーにステップアップし、海外にて活躍。2016年から拠点を日本へ移し、2017年にはHondaフォーミュラ・ドリーム・プロジェクトからFIA-F4選手権に参戦。

スーパーフォーミュラには2020年にデビューし、2023年スーパーフォーミュラ Rd.6 富士大会より、VANTELIN TEAM TOM'Sより参戦中。幼少期から数々のカートレースで優勝を重ね、チャンピオンの座を数多く獲得。海外でのレース経験もあり、トヨタ陣営でのレース初参戦に期待が高まっている。

VANTELIN TEAM TOM'S
#37 ドライバー
宮田 莉朋様

2004年(当時4歳)でカートをはじめ、数々のタイトルを獲得。2015年のFIA-F4選手権にシーズン途中から参戦し4輪デビュー。2016年にはフォーミュラトヨタ・レーシング・スクールのスカラシップを得てFIA-F4選手権にフル参戦を果たした。2017年から全日本F3選手権(現在は全日本スーパーフォーミュラライツ選手権/SFL)にトムスから参戦。2020年にはSFLシリーズチャンピオンを獲得し、2021年からはスーパーフォーミュラにフル参戦。プライベートではゲーマーの顔を持ち、eスポーツでも活躍している宮田選手。期待値の高い若手ドライバーの一人として、大きな注目を集めている。

デロイトアナリティクス
原 知弘

事業会社における商品開発、時系列解析による需要予測等の業務に従事後、現職。
ARIMAモデルや状態空間モデルによる時系列データ分析、およびクラウド(AWS)上へのインフラストラクチャ構築の経験を持つ。

デロイトアナリティクス
星 貴史

グラフィックデザインの経験をベースとしたUX/UIデザイナーとして、ユーザー調査からデザインへの落とし込みまでワンストップでのプロセス実施を強みとする。特に情報を整理・集約し、確実かつ迅速にユーザーへ届けるダッシュボード系UIに関して多くの経験を有し、社内システム開発や社外提案に従事。

デロイトアナリティクス
横坂 凌

デロイト トーマツへ入社後、データウェアハウス移行プロジェクトや業務システムの移行プロジェクトを経験。本取り組みではレース戦略のシミュレーション開発業務に従事。

デロイト トーマツ ファイナンシャル アドバイザリー
川口 東馬

大学では計量経済学を専攻し、パネルデータ分析による事象の因果関係の特定を強みとする。本取り組みでは、主にレースシミュレーションの改善に従事。

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