Posted: 10 Nov. 2023 5 min. read

メタバース時代の必修科目 第一弾:アバター制作手法

2023年5月にデロイト トーマツ コンサルティング合同会社(以下、DTC)が開催したイベント「Lead the way forum」の告知にて、DTCのCEO 佐瀬のアバターがバーチャル空間のオフィス街を疾走していたのは皆様ご存じでしょうか?実は、アバター制作から空間作成、レコーディングまでデロイト トーマツ内部で実施していました。

バーチャル技術やAI技術の発展により、アバターやバーチャルヒューマンなどが身近で当たり前に使われるようになりつつあります。本稿では、メタバースやAIコンシェルジュ等の高度なサービスには欠かせないアバター制作手法の概要をご紹介します。

アバター制作手法の概要

アバター制作は、映画製作、ゲーム開発、VRコンテンツ、ARアプリなど様々な分野で活用されています。ここからは、いくつかの主な手法を詳しく解説していきます。

(1) MayaやBlenderによる3Dモデルアバターの作成

MayaやBlenderは、3Dモデリングに広く使用されるソフトウェアです。これらのツールを使用することで、製作者はゼロから3Dキャラクターを作成することが可能になります。主な制作工程はモデリング、テクスチャリング、ライティング、リギング、アニメーションなどがあります。制作の自由度が高いメリットがある一方で、個々の工程に対する知識やスキルが必要であり、制作するまで一定の時間を要します。

(2) LiDARセンサーなど3Dスキャンによる作成

LiDARセンサーは、レーザー光を物体に照射し、その反射を検出することで物体の形状や位置を認識する技術です。この技術を用いて、対象物の詳細な3Dデータを得ることができます。アバター制作では、これを利用して精密な3Dモデリングを行うことが可能です。ただし、髪の毛や眼鏡など、反射を取りにくい形状・材質のものは苦手という欠点もあります。

(3) フォトグラメトリーによる生成

フォトグラメトリーは、多数の写真から3Dモデルを生成する技術です。写真は様々な角度から撮影され、そのデータを元にソフトウェアが3D形状を再構築します。フォトグラメトリーにより作成された3Dモデルは、実物のリアルなテクスチャとディテールを再現することができます。

アバター制作の注意点(骨入れについて)

アバターは、モデリングやテクスチャだけでは動かず、モデルを動かすための骨格を加える"リギング"という作業も必要です。リギングにより3Dモデルに「骨格」を組み込むことで、モデルがアニメーションするための構造を提供します。アバターは自然な動きを再現することが可能になります。
リギングは繊細なプロセスで、骨格の配置や関節の動きなど、多くの要素を考慮する必要があります。適切にリギングされていないモデルは、不自然な動きや変形を引き起こし、リアリズムを損なう可能性があります。昨今は、ある程度自動でリギングしてくれるサービスも増えていますが、細部までこだわる必要がある場合は手動での調整が必要となるケースも多いです。

佐瀬のアバター制作では、アバターはフォトグラメトリー方式にて作成しました。リギングはAI推定で自動設定しています。実際の人間を手早くアバター化したい場合は、このようなスキャンによる手法を取るケースが多いです。一方で、バーチャルヒューマンやゲームのキャラクターなどの場合は、モデル1体に対して大きなコストをかけて1から作ることが多いです。

以上が、アバターを制作する手法とその注意点についての解説です。どの手法を選択するかは、制作したいアバターの目的、必要なリアリズムの度合い、制作にかけられる時間やリソースによるところが大きいでしょう。それぞれの手法が持つ利点と制約を理解し、プロジェクトに最適な方法を選択することが重要です。

デロイト トーマツでは、AI利活用に関する最新トレンドを現状分析するだけでなく、デロイト トーマツの多様な専門性、及びAIの普及に取り組むDeloitte AI Instituteが持つ最新の知見を結集し、最新技術から導かれる未来を提言しています。これからもAIやそれを取り巻く先端技術にまつわる技術的課題やその対策を様々な研究機関と検討し、発信していきます。

【執筆者】

デロイト トーマツ コンサルティング マネジャー
稲葉 貴久

一般社団法人Metaverse Japan  Lab事務次長
日本バーチャルリアリティ学会認定上級バーチャルリアリティ技術者