Japanese Business Tax Group ニュースレター 2010年1月Assessing the impact - 在英/在欧日系企業への平成22年度税制改正大綱(案)の影響について |
2009年12月末、平成22年度税制改正大綱(案)が閣議決定され、その概要が公表されました。本税制改正大綱(案)は多くの重要な改正を含んでおりますが、本ニュースレターでは、日系多国籍企業の在英企業に関連する点について、重点的に説明させていただきます。本税制改正大綱(案)は外国子会社合算税制(タックス・ヘイブン対策税制またはCFC税制)および移転価格税制に対する改正を含んでおります。なお、本税制改正大綱(案)は法案化の過程で変更される可能性がありますので、この点ご留意ください。
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デロイト・コメント 日本の外国子会社合算税制は1978年の導入以降概ね当初の枠組みを維持しており、ビジネスおよび組織構造の変化を勘案すれば、弊事務所では改正の必要性を認識していました。 本税制改正大綱(案)は、特に在英の欧州統括会社を有する日系多国籍企業には、概ね好意的な改正と考えられ、一定の在外子会社が能動事業所得(active business income)と受動所得(passive income)を混合することで受動所得への低課税を享受できていた点について不利益となりますが、明らかに好ましい方向への改正であると理解しています。 弊事務所では2010年2月4日にセミナーを開催し、本税制改正大綱(案)の概要および欧州で事業展開する日系多国籍企業への機会と課題についてご説明させていただきます。 |
外国子会社合算税制(タックス・ヘイブン対策税制またはCFC税制
外国子会社合算税制への複数の改正が提案されており、以下で述べる点が主要な改正点です。本税制改正大綱(案)は2010年4月1日以降に開始される特定外国子会社等に適用される予定です。なお、外国子会社合算税制は、概括すれば、内国法人または日本居住者が最終的に支配する外国法人(外国関係会社)の利益を日本において課税するものです。
トリガー税率の低下
外国関係会社が、外国子会社合算税制の適用対象となり得る基準である租税負担割合(実効税率またはトリガー税率)が現行の25%から20%へ引き下げられる予定です。
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デロイト・コメント 近年の法人税率低下の世界的な傾向を考慮すれば、本改正は好ましい改正と考えられ、特定外国子会社等と区分される、ひいては、外国子会社合算税制の対象となる日系多国籍企業の在外子会社の数の著しい減少が想定されます。 |
非課税所得の加算の範囲に関する改正
上記の租税負担割合(実効税率またはトリガー税率)の算定において、外国関係会社が受け取る国外配当のうち非課税所得に含まれないこととされる配当等の範囲に、外国関係会社の所在地国の法令により株式保有割合要件以外の要件を満たすことにより所在地国において非課税とされる配当等を含むこととなります。なお、現行制度上は、外国関係会社の所在地国の法令により株式保有割合要件以外の要件を満たすことにより所在地国において非課税とされる配当等は非課税所得として加算されます。
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デロイト・コメント 昨年導入された英国の国外配当免税制度は、最低株式保有割合要件を求めていません。その結果として、2009年7月の英国の国外配当免税制度の導入以降、日本の外国子会社合算税制上、一定金額以上の英国の国外配当免税制度により免税扱いとなる配当等を受け取る在英子会社は、特定外国子会社等と認定される可能性が存在しました。これは、租税負担割合(実行税率またはトリガー税率)の算定上、免税扱いとなる英国国外配当が、租税負担割合の判定式の分母に含まれたためでした。弊事務所は、在英欧州持株会社が、例えば在蘭欧州持株会社(オランダでは国外配当免税制度の適用にあたり、5%の最低株式保有割合要件を求めています。)に比して、不利になる点を関係者に問題提起して参りました。本件改正に関する詳細および株式保有割合要件以外の要件の解釈については完全に明らかではありません。しかしながら、英国の国外配当免税制度の適用は、複数の詳細な要件を満たすことを前提にしていることから、本件改正が、この問題点を取り扱うことを意図したものであると考えており、したがって、在英子会社が受け取り免税扱いとなる英国国外配当は、この問題点のみに起因して、日本の外国子会社合算税制上の外国特定子会社等となることはないと理解しております。 |
外国子会社合算税制の適用対象となる内国法人における(または、日本親会社における)持株基準
外国子会社合算税制の適用を受ける内国法人等の直接および間接の外国関係会社株式等の保有割合要件が10%以上に引き上げられます(現行制度上は5%)。
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デロイト・コメント 本改正により外国子会社合算税制の適用対象となる内国法人の外国関係会社の数を減少させることが見込まれ、少数株主には歓迎すべき改正といえるでしょう。 |
適用除外要件に関する改正
外国子会社合算税制の適用対象外となる一定の基準について改正が予定されています。本改正は適用除外要件に関連しており、適用除外要件は特定外国子会社等の事業上の性質に着目して、一定の要件を満たす場合には、外国子会社合算税制による租税負担割合の低い在外子会社(特定外国子会社等)の所得について、日本での合算課税を除外するものです。
- 統括会社(Regional Headquarters Company):適用除外要件を満たすための事業基準について、現行制度上、主たる事業が株式の保有である特定外国子会社等は、適用除外要件を満たすことができません。本税制改正大綱(案)においては、持株会社が統括会社としての要件を満たす場合には、統括会社が保有する被統括会社の株式等については、外国会社合算税制上、当該特定外国子会社等の主たる事業の判定から除外されることとなります。
特定外国子会社等が、統括会社として認定されるための要件は以下のとおりです。
- 特定外国子会社等が、直接または間接に、発行済株式等の全部を内国法人等により保有されていること。
- 2社以上の被統括会社を直接25%以上保有すること。被統括会社とは、その所在国において実体のある事業活動を行っている子会社等をいいます。
- 統括会社自身が、その所在国において統括業務に係る固定施設および従業員を有していること。従業員は、専ら統括活動に従事する者であること等の一定要件を満たす必要があります。
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デロイト・コメント 純粋持株会社は、本改正による恩恵を受けることができないであろうと理解しています。しかしながら、所在地国において実体を有し、その子会社のために経営統括サービスを提供している持株会社は本改正による恩恵をうけることが可能であろうと理解しています。このような実体を有する持株会社にとっては、グループ内組織再編、または、第三者への保有株式の処分を機動的に行うことが可能となりえます。現在、このような持株会社が適用除外要件を満たせるか否かには不確実性があり、たとえば、保有株式を処分し譲渡益を認識した場合には、当該持株会社の所在地国(たとえば英国、オランダ等)において典型的には免税扱いとなり、その結果として租税負担割合が25%以下となることもありえます。本改正が原案どおりに行われる場合、一定要件を満たした統括会社においては、当該非課税所得により適用除外要件が満たせなくなる不確実性を軽減することになり、下記で述べる一定の受動所得(passive income)と見做されない限りにおいて、当該非課税所得は、日本においては課税されないこととなると理解しています。 また、統括会社の所在地国において実体を有する必要性があることから、従業員および実体が所在する国に、グループ統括活動を行う地域持株会社を設置している企業にとっては、より有利となると考えます。一定の場合には、統括会社の要件を満たすために、グループ機能を再編することも、意義を有するかもしれません。 しかしながら、統括会社は日本の親会社に完全所有される必要があるため、ジョイント・ベンチャーの場合、あるいは、被統括会社の直接保有要件を必要とされるため、一定の地域で現地の連結納税の観点からサブ・グループを形成するために二重構造の株式所有方式が望まれる場合には恩恵を受けることができないでしょう。 |
- 非関連者基準:適用除外要件を満たすための非関連者基準に関して、卸売業を主たる業務として営む統括会社は、一定の被統括会社との間で行う取引について、関連者取引に該当しないこととされます。
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デロイト・コメント 現況の組織・資本構造において、本件改正に該当する状況にあるいくつかの日系多国籍企業に恩恵をもたらすとともに、本件改正による非関連者基準の緩和は、在欧傘下企業群とサプライ・チェーンを形成している日系多国籍企業にとって、なんらかの機会をもたらす可能性があるとも思われます。たとえば、低課税国(たとえばスイス)に、経営統括サービスを提供している持株会社を兼営するプリンシパルまたは起業型会社(principal/entrepreneur companies)を設置する組織・資本構造が恩恵をもたらす可能性もあり、グループ全体での実効負担税率を引き下げる可能性もありえますが、現地に実体を有することが必要であり、潜在的な受動所得または資産性所得(passive income)に関する外国子会社合算課税における位置づけに留意する必要もあるでしょう。 |
- 現行制度上、適用除外要件に関する4要件のうち3要件を満たす場合(所在地国基準または非関連者基準を満たさないものの、その他の事業基準、実体基準、管理支配基準を満たす場合)には、外国子会社合算税制により日本で合算対象となる金額の計算上、人件費の10%相当額を控除することが認められていました。本措置は廃止されることが見込まれます。
資産性所得(passive income)合算課税制度
現行制度上、外国子会社が日本の外国子会社合算税制において特定外国子会社等と区分された場合であっても、適用除外要件を満たすならば、日本の親会社において合算対象となる所得はないこととなります。しかしながら、本税制改正大綱(案)においては、適用除外要件の要件を満たす場合であっても、一定の類型に該当する特定外国子会社等の所得は、以下で述べるとおり、日本のおいて合算対象となり課税されることとなります。
しかし、一定の条件を満たす場合には、いくつかの類型に該当する資産性所得(passive income)であっても、日本の親会社における資産性所得の合算課税制度から除外されることとなる点に留意が必要でしょう。これらには、最低利益基準として、資産性所得の合計額が当該特定外国子会社等の税引前所得の5%相当額以下である場合、または、資産性所得に係る収入金額の合計額が10百万円以下である場合が設けられます。さらには、一定の特定外国子会社等が行う事業の性質上、基本的かつ重要で欠くことができない業務から生じる一定の所得(適用除外要件における事業要件を満たす場合の一定の株式・債券の譲渡損益および一定の配当・利息等に限定されます。)も除外対象となります。また、資産性所得の金額は、当該特定外国子会社等の課税対象金額を上限とし、資産性所得に係る収入金額から直接経費を控除することも可能です。
日本で合算対象課税となりえる資産性所得の類型は以下のとおりです。
- 株式保有割合10%未満の株式等の配当等に係る所得またはその譲渡(取引所または店頭における株式等の譲渡に限ります。)による所得
- 債券の利子に係る所得またはその譲渡(取引所または店頭における債券の譲渡に限ります。)による所得
- 工業所有権および著作権(出版権および著作隣接権を含みます。)の提供による所得(特定外国子会社等により開発されたもの等から生じる所得を除きます。)
- 船舶または航空機の貸付による所得.
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デロイト・コメント デロイト・コメント しかしながら、上記で述べたように、たとえば、子会社の株式保有により、従前は適用除外要件が満たせなかった一定の特定外国子会社等であって、その結果として、外国子会社合算税制により日本の親会社において、当該特定外国子会社等の所得の全額について支払税金が課されていた場合であっても、本改正により、適用除外要件を満たすこととなることもあるでしょう。したがって、最低利益基準等を超える資産性所得を当該特定外国子会社等が獲得する限りにおいて、日本の親会社において支払税金が課されることとなります。つまり、日本において外国子会社合算税制で課される支払税金が減少することもあるでしょう。 上記の資産性所得の類型の範囲に関して、たとえば、上記2の債券に関する明確な定義付けが行われていない等、いまだ不明確な点が残っています。資産性所得として定義されている受動所得の類型は、適用除外要件に係る事業基準にて列挙され除外される事業、すなわち、株式または債券の保有、工業所有権の提供、または、船舶・航空機の貸付等から通常生じる所得であるように見受けられます。したがって、これらの不明確な受動所得の類型に関する定義は、現行の適用除外要件の要件にて既に定義済みであるとも思われます。 しかし、一般的には、過去において適用除外要件を満たしている軽課税国に在外子会社、たとえばアイルランドに所在する卸売業務を営む子会社、を有する日系多国籍企業は、これらの特定外国子会社等が獲得している所得が、資産性所得として取り扱われるか否かを考慮する必要があるでしょう。 2009年予算編成方針案にて公表されたとおり、英国政府は、特許所得に関する特別税制(Patent box regime: 2013年4月以降に特許所得に10%の軽減税率を認める特別税制)の導入を予定しています。現段階において、本税制に関して明確な方針の決定(たとえば、英国企業が開発し特許登録した知的財産権のみに適用されるか否か等)は未だにおこなわれておらず、英国政府は2011年歳入法案において最終的な制度設計を諮問することとなっています。したがって、関連がある企業にとっては、特許所得に関する特別税制の導入が租税負担割合(実効税率またはトリガー税率)を20%以下に低下させる結果となるか、すなわち、外国子会社合算税制上の特定外国子会社等に該当するか、かりにそうであるならば、なんらかの組織再編行為が望まれるかどうかについて、検討することが必要でしょう。 |
合算対象所得に関する二重課税の排除
現行の外国子会社合算税制上、直接保有する特定外国子会社等が支払う配当等は、通常、当該配当等が合算対象として日本で課税された後10年以内に支払われた場合には、日本において免税扱いとなります。税制改正大綱(案)においては、一定の条件を満たす場合には、間接保有されている特定外国子会社等によって支払われる配当等に関しても免税扱いとなる可能性があります。概括すれば、日本の親会社が、外国子会社から配当等を受ける場合には、その配当等の額のうち、日本の親会社の配当を受ける日を含む事業年度および当該事業年度開始の日前2年以内に開始した各事業年度における次のいずれか少ない金額に達するまでの金額は、その全額が免税とされます。
- 当該外国子会社等が、既に日本において合算対象とされた金額を有する他の外国孫法人等から受けた配当等のうち、当該内国法人等が当該外国子会社等を通じて、間接的に保有する当該外国孫会社等の株式等に対応する部分の金額
- 当該外国孫会社等について、既に日本において合算対象とされた金額のうち、日本の当該親会社等が、当該外国子会社等を通じて間接的に保有する株式等に対応する金額
本改正は、特定外国子会社等の平成22年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。
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デロイト・コメント 本改正は、特定外国子会社等に該当し、外国子会社合算税制により既に合算された外国孫会社等の所得に関して、最終的に日本へ配当等として支払われた場合に、日本において再度課税されることを防止することを目的に設けられおり、現行制度の問題点を是正するものです。 |
移転価格税制
税制調査会等が公開した審議内容からは、平成22年度税制改正大綱では、日本における移転価格同時文書化義務の導入が公表されるのではないかと推測されておりましたが、最終的には移転価格調査における納税者の協力が得られない場合の推定課税規定において提出又は提示を求めている書類について、その範囲を、次の区分に基づき、明確にするとの文言になりました。
a) 国外関連取引の内容を記載した書類
b) 国外関連取引について法人が算定した独立企業間価格に係わる書類
また、独立企業間価格の算定及び検証に当たり、国外関連者との間の取引価格の交渉過程等の検討を要する場合に特に留意すべき事項等を運用において明確にすることも予定されております。さらに、税務調査において提出が求められる書類についての規定も明確化される予定です。
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デロイト・コメント 今後、税務当局は税務調査が開始された時点で納税者が上記書類をすでに準備していることを期待しているものと推測され、もしかかる書類がない場合には、税務当局はシークレット・コンパラブルのデータを用いて更正する可能性があります。さらに、今回の改正の位置づけは、新しい制度の導入ではなく、規定の明確化であるため、調査未了年度についても適用される可能性があります。日本の移転価格時効は6年と長く、調査未了年度につき、自らの移転価格の妥当性を示すべく移転価格算定方法や経済分析を含めた書類を準備しているか見直す必要があるといえるでしょう。 |
その他の改正点
上記に加えて、以下の改正も同様に提起されています。
1. 100%グループ内の法人間取引の課税方法の整備
2. 連結納税制度に関する一定の改正
3. 適格合併等における欠損金の引継制限の要件の見直し、および、分割型分割におけるみなし事業年度の廃止
4. 一定の状況において、自己株式の取得の際に生じるみなし配当に関する益金不算入制度(外国子会社益金不算入制度を含む)の不適用
5. 一定の組織再編から生じる抱合株式から生じる譲渡損益に関する改正
6. 現行の財産法を基礎とした清算所得課税を廃止し、解散後の所得に関しても通常の所得課税へ移行
7. 一定の租税特別措置法に規定される特別控除の延長(たとえば、試験研究開発費に係る一定の税額控除)
8. 金融および証券税制に関する改正
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