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会計基準の見直し(3)

新地方公営企業会計制度への対応(その4)

「新地方公営企業会計制度への対応(その3)」に引き続き、「会計基準の見直し」にどのように対応していけばよいかについて解説していく。

会計基準見直しの具体的内容と実務的対応策(続2)

2.会計基準見直しの具体的内容と実務的対応策(続)

(4)リース取引に係る会計基準
原則として、平成26年度以降に契約するファイナンス・リース取引は、購入する有形固定資産と同様、リース資産とリース債務を貸借対照表に計上することとなる。ただし、中小規模特例が設けられ、令第8条の2の規定に基づく管理者必置公営企業を除き、所有権移転外ファイナンス・リース取引について賃貸借処理が認められることとなった(この場合でも、未経過リース総額の注記は必要)。なお、比較的高額の医療機器をリース契約する可能性のある病院事業については、規模の大小に関わらず当該特例の適用はない点に留意が必要である(総務省自治財政局公営企業課「地方公営企業会計制度の見直しについて」平成24年1月)。
したがって、平成26年度以降にリース契約を締結することを検討している公営企業においては、貸借対照表の計上要否が予算編成(3条予算か4条予算か)にも影響を及ぼすことから、慎重な対応が求められる。

(5)キャッシュ・フロー計算書
現行の決算書である貸借対照表、損益計算書に加えて、決算に併せて提出すべき書類の1つとして「キャッシュ・フロー計算書」の作成が義務づけられることとなった。具体的には、「業務活動によるキャッシュ・フロー」、「投資活動によるキャッシュ・フロー」、「財務活動によるキャッシュ・フロー」という3つの性質の異なる活動ごとの資金収支に区分して作成することとなり、経営活動の種類ごとの資金繰りの状況が明らかになる。
なお、キャッシュ・フロー計算書は決算時のみならず、予算時にも予算に関する説明書の1つとして作成・提出が求められる書類となっているため、平成26年度予算編成時に作成することができるよう準備を進めておく必要がある。

3.健全化指標等への影響
今回の会計基準の改正は、図表のように流動資産が減少し、流動負債が増加する項目が数多く含まれていることから、実態は何も変化がなかったとしても、基準が変更されることのみをもって、資金不足比率等に影響を及ぼす可能性がある。そこで、「会計の見直しが財政健全化法の指標に影響することから、今回の見直しが指標に影響することがないよう、必要な調整を行う。地方債の協議制等の取扱いについても同様(総務省自治財政局公営企業課「地方公営企業会計制度の見直しについて」平成24年1月)」とされていた。
そこで、建設改良企業債等の翌年度償還予定額は算入対象から除外、流動負債に計上される引当金やリース債務等については3年間の算入猶予の経過措置が設けられた。仮に後者による影響が大きい公営企業においては、平成29年度決算までの間に経営改善等の措置を講じる必要があると考えられるため、どの年度にどのような影響が生じるかを検討した上で、慎重に対応すべきである。
これらの影響が大きい企業においては、必要に応じて料金設定の見直しやコスト構造の見直し、一般会計からの支援のあり方の見直しなど、当該公営企業の経営のあり方そのものを見つめ直すことも出てくるであろう。

※本文中の意見に関わる部分は私見である。    
以上  

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