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大学経営を支援するマネジメントセミナー開催報告

環境が変化する中で、求められる大学経営とは

2021年12月10日、今年も「大学経営を支援するマネジメントセミナー」を開催いたしました。第1部では文部科学省高等教育局私学部参事官付私学経営支援企画室長の田井氏にご登壇いただき、第2部は学校法人上智学院総務局経営企画グループ長・IR推進室兼務の林氏、国立大学法人東京大学財務部決算課長・IRデータ室副室長の青木氏及び当法人のパートナー奥谷でパネルディスカッションを実施しました。

執筆者: 公認会計士 船木 夏子

 

【第1部】「私立大学を取り巻く諸課題について」

第1部は、文部科学省高等教育局私学部参事官付私学経営支援企画室長田井祐子氏より、学校法人を取り巻く外部環境の変化の現況等をご紹介いただきつつ、今後の持続的経営に取組めるための各種施策等を解説いただきました。

長期的な視点から「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」のご紹介をいただきつつ、大学等連携法人制度や大学間での教育課程上の連携、地域連携プラットフォームなどの各種施策をご紹介頂きました。

また、学校法人を持続的に経営することに関し、近年の学校法人の外部環境や経営環境を紹介しつつ、文部科学省における学校法人に対する経営指導体制や学校法人運営調査の状況を解説いただきました。さらに、最近のトピックについても、「大学入試のあり方に関する検討会議 提言」の概要、「教育未来創造会議」の開催、「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)」の改正概要等の紹介や学校法人ガバナンス改革会議をはじめとする今後の学校法人制度改革の動向情報もお話いただきました。

学校法人運営に大変有用なお話を多くいただき、今後求められる学校のあり方を改めて確認できる貴重な場となりました。

【参考】

大学等連携推進法人について
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大学ガバナンスに関する教育・経営に係る法令の関係
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出典:文部科学省 田井氏の講演資料よ り一部抜粋

【第2部】「社会から真に必要とされる大学となるために~」

第2部は、「社会から真に必要とされる大学となるために~」をテーマに、学校法人上智学院総務局経営企画グループ長・IR推進室兼務の林裕佳氏、国立大学法人東京大学財務部決算課長・IRデータ室副室長の青木志帆氏、有限責任監査法人トーマツ パブリックセクター・ヘルスケア事業部パートナーの奥谷恭子の3名でパネルディスカッションを実施しました。始めに学校法人上智学院の林氏より、学生と協働しながらサステナビリティ推進に取り組まれている新しいお取組みについて、ご紹介頂きました。次に国立大学法人東京大学青木氏より公表されたばかりの令和2年度の統合報告書について、ステークホルダーへの情報開示という観点から、その作成目的やストーリーなどについてご紹介頂きました。そのあと、当法人の奥谷から、「真に必要な大学になる」とはどういうことなのかについて一定の考え方を提示したうえで、3名で「ステークホルダーとの会話」「気候変動と大学経営」をテーマにディスカッションをいたしました。

【参考】

「常置学院サステナビリティ推進本部」設置の趣旨・役割
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出典:学校法人上智学院 林氏の講演資料より一部抜粋

統合報告書の作成体制と活用範囲
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出典:国立大学法人東京大学 青木氏の講演資料より一部抜粋

中長期的な大学の価値
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学校法人や国公立大学を取り巻くステークホルダーが多様化している中で、どのように大学の価値を還元していくのか、またどのような方法でステークホルダーに伝えるのかといったお話しが伺えました。また環境経営という最近のトピックについても、再生エネルギーやペーパーレス、カーボンニュートラルなどに対するお取組や、大学の研究結果の日本や海外への還元及び将来を担う人材の育成等といった大きな視点でのお取組みについても伺うことができました。

上智学院様及び東京大学様のいづれも、ステークホルダーとの対話を繰り返し徐々に理解してもらいながら新たな取り組みをなされているということで、地道な対話の積み重ねが変革を生むということを改めて実感するとともに、大きな学びのあるセミナーとなりました。