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令和5年度第2四半期決算における税務上の留意事項

月刊誌『会計情報』2023年10月号

デロイト トーマツ税理士法人 税理士 名和 寛之、税理士 栁田 孝穂

令和5年度第2四半期決算においては、主に令和5年度税制改正の内容が初めての適用を迎える。

令和5年度税制改正においては、「マーケット」、「産業」、「人材」への成長投資を一体的に強化し、「成長と分配の好循環」の連鎖を生み出していくこととされ、そのために、研究開発税制やオープンイノベーション促進税制等について改正が行われた。

国際課税の分野では、国際課税制度の見直しに係る国際合意に沿って、法人税の引下げ競争に歯止めをかけ、企業間の公平な競争環境の整備に資するグローバル・ミニマム課税が創設され、令和6年4月1日以後に開始する対象会計年度から導入される。

令和5年度税制改正のうち、法人課税にとって主要な項目は、以下のとおりである。

823KB, PDF ※PDFダウンロード時には「本記事に関する留意事項」をご確認ください。

法人課税

1. 試験研究を行った場合の税額控除制度(研究開発税制)の見直し

研究開発税制については、研究開発投資を増額するインセンティブが働くような控除率カーブの見直しや控除上限の引上げに加え、特別試験研究費の額に係る税額控除の対象となる試験研究費の範囲の見直し等が行われた(所得税についても同様)。

(1)一般試験研究費の額に係る税額控除制度の見直し

一般試験研究費の額に係る税額控除制度における税額控除率の算式について、よりインセンティブが働くよう、控除率カーブの見直し及び控除率の下限の引下げが行われた。また、控除税額の上限についても、一律に設定されている控除税額の上限を試験研究費の増減に応じて変動させる仕組みが導入された。

改正後の概要は下表のとおりであり、改正項目①~④については以下の説明を参照されたい。

(2)中小企業技術基盤強化税制に係る税額控除制度の見直し

中小企業者等に対して適用される、中小企業技術基盤強化税制に係る税額控除制度についても、上記(1)と同様の趣旨により、次のとおり控除率カーブの見直しが行われた。改正後の概要は下表のとおりであり、改正項目①~③については以下の説明を参照されたい。

(3)特別試験研究費の範囲の見直し

特別試験研究費の額に係る税額控除制度の対象となる試験研究費について、以下の見直しが行われた。

(4)その他

その他、以下の見直しが行われた。

2. 特別新事業開拓事業者に対し特定事業活動として出資をした場合の課税の特例(オープンイノベーション促進税制)

青色申告書を提出する法人が、令和6年3月31日までの期間内にスタートアップ企業(特別新事業開拓事業者)とのオープンイノベーションに向け、スタートアップ企業の新規発行株式を一定額以上取得する場合、取得株式の取得価額の25%相当額を課税所得から控除できる課税の特例(オープンイノベーション促進税制)について、次の見直しが行われた。

(1)課税の特例の対象となる特定株式の追加及び払込みにより取得した特定株式の取得価額上限の引下げ

課税の特例の対象となる特定株式について、次の見直しが行われた。

このように、スタートアップ企業の出口戦略としてIPO以外の選択肢を拡充するために、ニューマネー(払込み)を伴わない既存株式 (発行法人以外の者からの購入)の取得も対象とされた。また、スタートアップの成長に真につながるよう、M&Aから5年以内に成長率や投資規模等の要件を満たした場合にはその後も減税メリットを継続させる仕組みが設けられた。これらにより、スタートアップの成長を強力に促すものとする改正内容となっている。

(2)その他

次の除外・限定が行われた。

① 既にその総株主の議決権の過半数を有している特別新事業開拓事業者に対する出資を対象から除外(措規22の13③)

② 既に本特例の適用を受けてその総株主の議決権の過半数に満たない株式を有している特別新事業開拓事業者に対する出資について、その対象を総株主の議決権の過半数を有することとなる場合に限定(措規22の13③)

3. デジタルトランスフォーメーション投資促進税制(DX投資促進税制)の見直しと適用期限の延長

青色申告書を提出する法人が、認定事業適応計画に従って情報技術事業適応設備の取得等を行った場合、当該設備等の取得価額等の30%相当額の特別償却又は3%若しくは5%相当額の税額控除を適用できる課税の特例(DX投資促進税制)について、次の見直しが行われた上、その適用期限が2年延長(令和7年3月31日までの期間内)された(所得税についても同様)。

なお、計画の実施期間は最長で10年とされた(従前は5年間)(産業競争力強化法施行規則11の2⑤)。

また、令和5年4月1日前に認定の申請をした事業適応計画に従って同日以後に取得等する資産については、本制度は適用されない(措法42の12の7⑨)。

4. 指定寄附金

企業の経営資源を活用して学校教育に積極的に関与し、人材への投資を後押しすることを目的に、学校法人の設立費用としての寄附金について、個別の審査を受けなくても損金算入可能とするため、以下が指定寄附金に追加された(令和5年財務省告示第96号)。

5. 地域経済牽引事業の促進区域内において特定事業用機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度(地域未来投資促進税制)の拡充及び適用期限の延長

青色申告書を提出する法人が、承認地域経済牽引事業計画に従って、特定事業用機械等を取得した場合、機械装置・器具備品につき取得価額等の40%相当額の特別償却又は4%相当額の税額控除(上乗せ要件を満たす場合は、50%相当額の特別償却又は5%相当額の税額控除)、また、建物・附属設備・構築物につき20%相当額の特別償却又は2%相当額の税額控除を適用できる課税の特例(地域未来投資促進税制)について、次の見直しが行われた上、その適用期限が2年延長(令和7年3月31日までの期間内)された(所得税についても同様)。 

(1)要件等の見直し及び追加

次の見直しが行われた。

(2)主務大臣の確認要件に関する運用の改善

課税特例の要件に関する運用については、次の2つの改善が行われた。

① 要件の判定において売上高を計算する場合には、需要の変動等による影響を勘案した計算方法が用いられる(ガイドライン第5・1⑴イ①i)

② 先進性に係る要件について、評価委員の評価精度の向上に向けた措置がとられる(ガイドライン第5・1⑴イ)

6. 中小企業者関連等

(1)中小企業者等の法人税の軽減税率の特例の適用期限の2年延長

中小企業者等の法人税の軽減税率として、所得年800万円以下の部分について19%とされているが、改正前においては、時限立法として、租税特別措置法によりさらに15%に引き下げられている。その適用期限が2年延長された(措法42の3の2)。

(2)中小企業投資促進税制の見直しと適用期限の2年延長

中小企業投資促進税制について、次の見直しが行われた上、その適用期限が2年延長された(所得税についても同様)(措法42の6)。

a) 対象資産から、コインランドリー業(主要な事業であるものを除く)の用に供する機械装置でその管理のおおむね全部を他の者に委託するものが除外された。

b) 対象資産について、総トン数500トン以上の船舶にあっては、環境への負荷の低減に資する設備の設置状況等を国土交通大臣に届け出た船舶に限定された。

(3)中小企業経営強化税制の見直しと適用期限の2年延長

中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度(中小企業経営強化税制)について、関係法令の改正を前提に特定経営力向上設備等の対象から、コインランドリー業又は暗号資産マイニング業(主要な事業であるものを除く)の用に供する資産でその管理のおおむね全部を他の者に委託するものが除外された上、その適用期限が2年延長された(所得税についても同様)(措法42の12の4)。

(4)特定の資産の買換えの場合等の課税の特例の見直しと期限延長

特定の資産の買換えの場合等の課税の特例について、次の表のとおり見直しが行われた上で、適用期限が3年延長された。主な見直しの内容は次のとおりである。

(5)その他の特別措置等

その他の特別措置等について、次のとおり適用期限の延長・廃止及び内容見直し等が行われた。

7. 通算子法人の残余財産が確定した場合の確定申告書の提出期限

改正前においては、グループ通算制度を適用している場合において、通算子法人の残余財産が確定した場合の確定申告書の提出期限については特別な取扱いはなく、通常どおり、残余財産の確定の日の属する事業年度終了の日の翌日から1月以内(当該翌日から1月以内に残余財産の最後の分配又は引渡しが行われる場合には、その行われる日の前日まで)とされていた。

しかし、通算子法人の残余財産の確定の日が通算親法人の事業年度終了の日である場合においては、その通算子法人の残余財産の確定の日の属する事業年度について、グループ通算制度による損益通算等の規定が適用される。そのため、現行法における確定申告書の提出期限までに確定申告を行うことは困難であることが予想される。

このような状況を改善するため、このような場合には、残余財産が確定した通算子法人の確定申告書の提出期限について、通算グループ全体の提出期限と同じとする改正が行われた(法法74②、75の2⑪)。

この改正は、令和5年4月1日以後に現行の提出期限が到来する確定申告書について適用される。

改正の内容は、次のとおりである。

例えば、通算親法人の事業年度終了の日=通算子法人の残余財産の確定の日=3月31日の場合には、改正案においては、原則として、当該通算子法人の確定申告書の提出期限は2月以内の5月31日となるが、通算親法人が2月の延長特例を受けて確定申告書の提出期限が7月31日となっている場合、当該通算子法人の確定申告書の提出期限も7月31日となる。

なお、通算子法人の残余財産の確定の日が通算親法人の事業年度終了の日でない場合には、当該通算子法人の残余財産の確定の日の属する事業年度にはグループ通算制度における損益通算等の規定が適用されないため、今回の改正案の対象外であり、従来どおり、その確定申告書の提出期限は、残余財産の確定の日の属する事業年度終了の日の翌日から1月以内(当該翌日から1月以内に残余財産の最後の分配又は引渡しが行われる場合には、その行われる日の前日まで)(法法74②)になる。

8. 暗号資産の評価方法等の見直し

暗号資産の評価方法等について、次の見直しが行われ、その他所要の措置が講じられた。

組織再編

1. スピンオフ税制の拡充(パーシャルスピンオフ)

(1)概要

改正前においては、株式を現物分配する形でのスピンオフのうち、法人に持分の一部を残すもの(いわゆるパーシャルスピンオフ)については、「株式分配」に該当せず、課税の繰り延べが認められていなかった。

改正後においては、令和5年4月1日から令和6年3月31日までの間に産業競争力強化法の事業再編計画の認定を受けた法人が同法の特定剰余金配当として行う現物分配で完全子法人の株式が移転するものは、株式分配に該当することとされ、次の要件に該当するものは、適格株式分配に該当することとされた(措法68の2の2、措令39の34の3①、令和5年3月30日経済産業省告示第50号、事業再編の実施に関する指針)。

■ その法人の株主の持株数に応じて完全子法人の株式のみを交付するものであること

■ その現物分配の直後にその法人(現物分配法人)が有する完全子法人の株式の数が発行済株式の総数の20%未満となること

■ 完全子法人の従業者のおおむね90%以上がその業務に引き続き従事することが見込まれていること

■ 適格株式分配と同様の非支配要件、主要事業継続要件及び特定役員継続要件を満たすこと

■ 以下のいずれかの要件を満たすこと

✓ 完全子法人の特定役員に対し、ストックオプション(新株予約権)が付与されている又は付与される見込みがあること

✓ 完全子法人の主要な事業が、事業開始から事業計画認定の申請の日までの期間が10年以内であること

✓ 完全子法人の主要な事業が、成長発展が見込まれることについて金融商品取引業者が確認したこと

(2)改正による効果

本改正により、いわゆるパーシャルスピンオフであっても、一定の要件を満たす場合には、適格株式分配に該当するものとして現物分配法人において譲渡損益課税が繰り延べられることとなった。また、株主側にあっても、配当課税が行われないとともに、株式の(部分)譲渡損益については課税が繰り延べられる。

2. 株式交付についての特例の見直し

(1)概要

会社法の株式交付のうち一定のものにより子会社化した場合、株主における譲渡損益は、令和3年度税制改正により課税を繰り延べられることとされている(株式等を対価とする株式の譲渡に係る所得の計算の特例)。株式交付制度の創設後、当該措置の制度趣旨(株式対価M&Aの促進)とは必ずしもそぐわない活用事例が確認されていたことを背景として、今般の改正において課税繰延べ要件について一定の厳格化が行われ、当該措置の対象から、株式交付後に株式交付親会社が同族会社(非同族の同族会社を除く)に該当する場合が除外されている(措法66の2①、措令39の10の2④)(所得税についても同様)。例えば、次の図のように、株式交付後に株式交付親会社が同族会社(非同族の同族会社を除く)に該当する場合には、株式交付による課税の繰延べから除外されることになる。

(2)適用関係

上記の改正は、令和5年10月1日以後に行われる株式交付について適用される(改正法附則47、改正措令附則11)。

 

国際課税(デジタル課税等)

1. グローバル・ミニマム課税への対応

(1)各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税の基本的な仕組み

1) 納税義務者

内国法人(公共法人を除く)は、各対象会計年度(下記6)参照)の国際最低課税額(下記(2)参照)に対する法人税を納める義務があることとされる(法法6の2、82の1①)。

2) 課税の範囲

特定多国籍企業グループ等(下記3)参照)に属する内国法人に対して、各対象会計年度の国際最低課税額について、各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税を課することとされる(法法6の2、82の4)。

3) 特定多国籍企業グループ等の範囲

特定多国籍企業グループ等は、企業グループ等(次に掲げるものをいい、多国籍企業グループ等(※1)に該当するものに限る)のうち、各対象会計年度の直前の4対象会計年度のうち2以上の対象会計年度の総収入金額が7億5,000万ユーロ相当額以上であるものとされる(法法82四)。

4) 所在地国の判定

所在地国は、次に掲げるものの区分に応じそれぞれ次に定める国又は地域とされる(法法82七)。

5) 構成会社等の範囲

構成会社等(下記(2)参照)は、次に掲げるものとされる(法法82十三)。

6) 対象会計年度

対象会計年度は、多国籍企業グループ等の最終親会社等の連結財務諸表等の作成に係る期間とされる(法法15の2)。

7) 税額の計算

各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税の額は、各対象会計年度の国際最低課税額(課税標準)に100分の90.7の税率を乗じて計算した金額とされる(法法82の5)。

8) 申告及び納付等

特定多国籍企業グループ等に属する内国法人の各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税の申告及び納付は、各対象会計年度終了の日の翌日から1年3月(一定の場合には、1年6月)以内に行うものとされる(法法82の6)。

ただし、当該対象会計年度の国際最低課税額(課税標準)がない場合は、当該申告を要しないこととされる。

なお、電子申告の特例等については、各事業年度の所得に対する法人税と同様とされ、その他所要の措置が講じられる。

9) その他

質問検査、罰則等については、各事業年度の所得に対する法人税と同様とされ、その他所要の措置が講じられる(法法160)。

(2)国際最低課税額(課税標準)

国際最低課税額(下記3)参照)は、構成会社等である内国法人が属する特定多国籍企業グループ等のグループ国際最低課税額(下記1)参照)のうち、次に掲げる会社等に配賦される会社等別国際最低課税額(下記2)参照)に対して内国法人の所有持分等を勘案して計算した帰属割合を乗じて計算した金額の合計額とされる(法法82の2)。

1) グループ国際最低課税額の計算

グループ国際最低課税額は、「構成会社等に係るグループ国際最低課税額」と「共同支配会社等に係るグループ国際最低課税額」とを合計した金額とされる。

このうち、「構成会社等に係るグループ国際最低課税額」は、次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める金額の合計額とされる。

なお、特定多国籍企業グループ等に係る共同支配会社等に係る「共同支配会社等に係るグループ国際最低課税額」の計算については、基本的に「構成会社等に係るグループ国際最低課税額」の計算と同様とされる。

2) 会社等別国際最低課税額の計算

会社等別国際最低課税額は、「グループ国際最低課税額」のうち、特定多国籍企業グループ等に属する構成会社等(わが国を所在地国とするものを除く)の所在地国に係る上記1)の①から③までに定める金額に、その構成会社等の個別計算所得金額がその所在地国を所在地国とする全ての構成会社等の個別計算所得金額の合計額のうちに占める割合等を乗じて計算した金額とされる。

なお、共同支配会社等(わが国を所在地国とするものを除く)に係る会社等別国際最低課税額の計算についても、基本的に構成会社等に係る会社等別国際最低課税額の計算と同様とされる。

3) 国際最低課税額の計算

国際最低課税額は、内国法人が所有持分を有する次に掲げる構成会社等(恒久的施設等を除く。3)において同じ)の区分に応じそれぞれ次に定めるところにより計算した金額を合計した金額とされる。

なお、内国法人が所有持分を有する共同支配会社等に係る国際最低課税額の計算については、基本的に内国法人が所有持分を有する構成会社等に係る国際最低課税額の計算と同様とされる。

4) 個別計算所得等の金額の計算

個別計算所得等の金額は、当期純損益金額(最終親会社等の連結財務諸表等の作成の基礎となる構成会社等の純損益をいう)につき、次に掲げる調整等を行って計算した金額とされる。

■ 構成会社等の恒久的施設等がある場合において、その恒久的施設等に係る個別財務諸表があるときは、その個別財務諸表に基づいて、当該純損益金額のうち恒久的施設等に帰せられる金額を計算する

■ 構成会社等の恒久的施設等がある場合において、その恒久的施設等に係る個別財務諸表がないときは、その恒久的施設等が独立した会社等であるものとして、当期純損益金額のうち恒久的施設等に帰せられる金額を計算する

■ 当期純損益金額のうちに含まれる次に掲げる金額等を除外する

  ▶ 構成会社等が1年以上保有している所有持分又は一定の保有割合を有する所有持分に係る受取配当等の金額

  ▶ 国際海運所得等の金額

なお、共同支配会社等に係る個別計算所得等の金額の計算については、基本的に構成会社等に係る個別計算所得等の金額の計算と同様とされる。

5) 調整後対象租税額の計算

調整後対象租税額は、国別実効税率を計算するための基準とすべき税の額として構成会社等又は共同支配会社等の当期純損益額に係る対象租税(構成会社等又は共同支配会社等の所得に対する法人税その他の一定の税をいう)の額及び税効果会計の適用により計上される対象租税の調整額につき、次に掲げる調整等を行って計算した金額とされる。

■ 個別計算所得等の金額の計算上、恒久的施設等に帰せられる当期純損益金額がある場合には、その当期純損益金額に対応する対象租税の額についても、恒久的施設等に帰せられる金額を計算する

■ 外国子会社合算税制又は外国におけるこれに相当する税制により構成会社等又は共同支配会社等の所得相当額に対して課された税額について、一定の方法によりその構成会社等又は共同支配会社等に配分を行う

(3)適用免除基準等

1) 適用免除基準

特定多国籍企業グループ等に属する構成会社等(各種投資会社等を除く。1)において同じ)が各対象会計年度において次に掲げる要件の全てを満たす場合には、その構成会社等の所在地国における当期国別国際最低課税額は、ないものとされる(法法82の2⑥)。

なお、共同支配会社等に係る適用免除基準についても、基本的に構成会社等に係る適用免除基準と同様とされる。

2) 経過的な適用免除基準

一定の国別報告事項における記載事項等を用いた経過的な適用免除基準が措置されるほか、所要の措置が講じられる(改正法附則14)。

3) その他

各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税は、青色申告制度の対象外とされる。ただし、更正の理由付記の対象とされ、推計課税の対象外とされる(法法131)。

(4)特定基準法人税額に対する地方法人税(国税)の創設

1) 課税の対象

特定多国籍企業グループ等に属する内国法人の各課税対象会計年度の特定基準法人税額には、特定基準法人税額に対する地方法人税を課することとされる(地方法4)。

2) 税額の計算

■ 特定基準法人税額に対する地方法人税の額は、各課税対象会計年度の特定基準法人税額(課税標準)に907分の93の税率を乗じて計算した金額とされる(地方法24の3)

■ 特定基準法人税額は、各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税の額とされる(附帯税の額を除く)(地方法6②)

3) 申告及び納付等

特定基準法人税額に対する地方法人税の申告及び納付は、各課税対象会計年度終了の日の翌日から1年3月(一定の場合には、1年6月)以内に行うものとされる(地方法24の4)。

なお、電子申告の特例等については、基準法人税額に対する地方法人税と同様とされ、その他所要の措置が講じられる。

4) その他

質問検査、罰則等については、基準法人税額に対する地方法人税と同様とされ、その他所要の措置が講じられる。

(5)情報申告制度の創設

1) 概要

特定多国籍企業グループ等に属する構成会社等である内国法人は、次に掲げる事項その他必要な事項及び上記(3)の1)の適用を受けようとする旨等(特定多国籍企業グループ等報告事項等)を、各対象会計年度終了の日の翌日から1年3月(一定の場合には、1年6月)以内に、電子情報処理組織を使用する方法(e-Tax)により、納税地の所轄税務署長に提供しなければならないこととされる(法法150の3)。

■ 特定多国籍企業グループ等に属する構成会社等の名称

■ その構成会社等の所在地国ごとの国別実効税率

■ その特定多国籍企業グループ等のグループ国際最低課税額

2) 提供義務の免除

特定多国籍企業グループ等の最終親会社等の所在地国の税務当局がその特定多国籍企業グループ等に係る特定多国籍企業グループ等報告事項等の提供をわが国に対して行うことができると認められるときは、その特定多国籍企業グループ等報告事項等の提供義務者である内国法人の提供義務を免除することとされる(法法150の3③)。

ただし、特定多国籍企業グループ等報告事項等の提供義務が免除される内国法人は、その特定多国籍企業グループ等の最終親会社等に関する情報(最終親会社等届出事項)を、各対象会計年度終了の日の翌日から1年3月(一定の場合には、1年6月)以内に、電子情報処理組織を使用する方法(e-Tax)により、納税地の所轄税務署長に提供しなければならないこととされる。

3) その他

特定多国籍企業グループ等報告事項等の不提供及び虚偽報告に対する罰則が設けられる。

(6)適用関係

1) 各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税(上記(1))

内国法人の令和6年4月1日以後に開始する対象会計年度から適用される(改正法附則11)。

2) 特定基準法人税額に対する地方法人税(上記(4))

内国法人の令和6年4月1日以後に開始する課税対象会計年度から適用される(地方法改正法附則17)。

3) 情報申告制度(上記(5))

内国法人の令和6年4月1日以後に開始する対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税について適用される(改正法附則16①)。

2. 外国子会社合算税制等の見直し

(1)概要

グローバル・ミニマム課税への対応に伴い導入される各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税による企業の追加的な事務負担の軽減を図るため、内国法人に係る外国子会社合算税制について、次の改正が行われたほか、所要の措置が講じられた。

(2)適用関係

上記の改正は、内国法人の令和6年4月1日以後に開始する事業年度について適用される。

以上

本記事に関する留意事項

本記事は皆様への情報提供として一般的な情報を掲載するのみであり、その性質上、特定の個人や事業体に具体的に適用される個別の事情に対応するものではありません。また、本記事の作成または発行後に、関連する制度その他の適用の前提となる状況について、変動を生じる可能性もあります。個別の事案に適用するためには、当該時点で有効とされる内容により結論等を異にする可能性があることをご留意いただき、本記事の記載のみに依拠して意思決定・行動をされることなく、適用に関する具体的事案をもとに適切な専門家にご相談ください。

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