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令和4年度第2四半期決算における税務上の留意事項

月刊誌『会計情報』2022年10月号

デロイト トーマツ税理士法人 さいたま事務所 所長 税理士 和田 直哉

令和4年度第2四半期決算においては、主に令和4年度税制改正の内容が初めての適用を迎える。

令和4年度税制改正においては、賃上げに係る税制措置の抜本的強化(給与等の支給額が増加した場合の税額控除制度の改組)やオープンイノベーション促進措置の拡充が行われている。

また、令和4年4月1日以後開始事業年度については、連結納税制度がグループ通算制度に改組され、令和4年度税制改正により、その投資簿価修正制度の内容の一部見直しが行われた。本稿では、これらのうち、主要な事項についての解説を行う。

837KB, PDF ※PDFダウンロード時には「本記事に関する留意事項」をご確認ください。

法人課税

1. 給与等の支給額が増加した場合の税額控除制度(賃上げ促進税制)の改組

(1) 賃上げ促進税制の適用関係

賃上げ促進税制による特別控除制度は、2つの措置により構成されており、それぞれの措置に係る適用関係、対象法人、税額控除限度額は、以下のとおりである。

(2) 大企業向け賃上げ促進税制(旧人材確保等促進税制)

賃上げ促進税制の適用要件について、継続雇用者に対する給与等支給額の増加に着目した措置に改正された。また、賃上げや教育訓練に積極的な企業については、税額控除率が上乗せされる。

具体的には、令和4年4月1日から令和6年3月31日までの間に開始する各事業年度において、青色申告書提出法人が国内雇用者に対して給与等を支給する場合に、継続雇用者給与等支給額の前期継続雇用者給与等支給額に対する増加割合が3%以上であるときは、控除対象雇用者給与等支給増加額の15%の税額控除ができる措置に改正された。また、継続雇用者給与等支給額の前期継続雇用者給与等支給額に対する増加割合が4%以上であるときは、税額控除率に10%を上乗せし(25%の税額控除率)、教育訓練費の額の前期教育訓練費の額に対する増加割合が20%以上であるときは、税額控除率に5%が上乗せされる (20%又は30%の税額控除率)(措法42の12の5①)。

なお、一定規模以上の大企業についてはマルチステークホルダー方針を公表し、経済産業大臣から発出される公表に関する通知書の写しを申告書に添付する必要がある。

(3) 中小企業向け賃上げ促進税制(旧所得拡大促進税制)

中小企業における賃上げ促進税制について、令和4年4月1日から令和6年3月31日までの間に開始する各事業年度において、税額控除率の上乗せ措置が次のように見直された上、適用期限が1年延長された(措法42の12の5②)。

■ 雇用者給与等支給額の前期雇用者給与等支給額に対する増加割合が2.5%以上である場合には、税額控除率に15%を加算する(30%の税額控除率)

■ 教育訓練費の額の前期教育訓練費の額に対する増加割合が10%以上である場合、税額控除率に10%を加算する(25%又は40%の税額控除率)

2. 大企業についての一定の租税特別措置の停止措置の見直し

平成30年度税制改正により導入され、令和3年度税制改正により適用期限の延長、停止対象の税額控除が拡大された大企業についての一定の租税特別措置の停止措置について、以下のいずれにも該当する場合には、継続雇用者給与等支給額に係る要件を、現行の「継続雇用者給与等支給額が継続雇用者比較給与等支給額を超えること」から、「継続雇用者給与等支給額の継続雇用者比較給与等支給額に対する増加割合が1%以上(令和4年4月1日から令和5年3月31日までの間に開始する事業年度にあっては、0.5%以上)」と強化された(措法42の13⑤、68の15の8⑥)。

■ 資本金の額等が10億円以上であり、かつ、常時使用する従業員数が1,000人以上である

■ 前事業年度の所得金額が零を超える一定の場合

この一定の租税特別措置の停止は「ムチ税制」とも呼ばれ、一定の要件を満たさない大企業について、対象となる租税特別措置が適用できないとされるものである。

具体的には、大企業が前期比で所得が増加しているにもかかわらず、賃上げ要件及び設備投資要件(国内設備投資額が当期償却費総額の30%相当額を超えること)のどちらも満たさない場合には、その事業年度については、研究開発税制その他の一定の税額控除を適用できないとされている。この見直しでは、所得が拡大しているにもかかわらず、賃上げにも投資にも、特に消極的な一定規模以上の大企業に対し、停止措置が更に強化されることとなった。

停止措置の対象制度は、以下のとおりである。

▶ 研究開発税制

▶ 地域未来投資促進税制

▶ 5G投資促進税制

▶ DX投資促進税制

▶ カーボンニュートラルに向けた投資促進税制

3. オープンイノベーション促進税制の拡充

青色申告書を提出する株式会社等が、スタートアップ企業(特別新事業開拓事業者)とのオープンイノベーションに向け、スタートアップ企業の新規発行株式を一定額以上取得する場合、取得株式の取得価額の25%相当額を課税所得から控除できる課税の特例(オープンイノベーション促進税制)について、次の見直しが行われた上、適用期限が2年延長された(措法66の13①、措令39の24の2①、措規22の13②、産業競争力強化規則2二)。

4. 5G投資促進税制の見直し

青色申告書を提出する法人が、「特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律」の規定に基づく認定導入計画に従って、認定特定高度情報通信技術活用設備を取得した場合、当該設備の取得価額の15%相当額の税額控除又は30%相当額の特別償却を適用できる課税の特例(5G投資促進税制)について、次の見直しが行われた上、その適用期限が3年延長された(措法42の12の6①②、措規20の10の2)。

5. 交際費等の損金不算入制度等の期限延長

交際費等の損金不算入制度についてその適用期限が2年延長されたとともに、接待飲食費に係る損金算入の特例期限が2年延長された。中小法人に係る損金算入の特例の適用期限についても、2年延長された(措法61の4)。

資本金の額等に応じた各種制度の適用関係は、次の表のとおりである。

6. 少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度等

次の制度について、次の表のとおり対象資産が見直され、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例については適用期限が2年延長された(法令133、133の2、措法67の5)。

7. 大法人に対する法人事業税所得割の税率の見直し

(1) 概要

法人事業税の所得割の標準税率について、改正前では3未満の都道府県において事務所又は事業所を設けて事業を行う場合に、所得金額に応じた軽減税率が適用されていた。しかし、本改正により、資本金が1億円超の大法人である外形標準課税適用法人について、以下のとおり軽減税率の適用を廃止することとされた(地法72の24の7①一ハ)。

(2) 適用関係

上記の改正は、令和4年4月1日以後に開始する事業年度から適用される。

8. 完全子法人株式等に係る配当等についての源泉徴収の廃止

一定の内国法人が支払を受ける配当等で次に掲げるものについては、所得税を課さず、その配当等に係る所得の源泉徴収は行わないこととされ、令和5年10月1日以後に支払を受けるべき配当等について適用される(所法177、212)。

■ 完全子法人株式等(株式等保有割合100%)に係る配当等

■ 配当等の支払に係る基準日において、当該内国法人が直接保有する他の内国法人の株式等の発行済株式等の総数に占める割合が3分の1超である場合における当該他の法人の株式等に係る配当等

完全子法人株式等(株式等保有割合100%)及び関連法人株式等(株式等保有割合3分の1超)に係る受取配当等については、配当等計算期間にわたる継続保有を要件に、受取法人において100%益金不算入となるが(関連法人株式等の配当等については負債利子控除後の金額)、改正前ではいったん源泉徴収をすることとされていた。これらの配当等に係る源泉徴収が不適用となる。なお、3分の1超保有する場合の判定は、あくまでも配当等基準日時点の現況により行い、継続保有要件は課されない。

9. 隠蔽仮装行為に基づく確定申告書等における簿外経費の取扱い

(1) 概要

税務調査の現場において、証拠書類を提示せずに簿外経費を主張する納税者や証拠書類を仮装して簿外経費を主張する納税者への対応として、以下の措置が設けられた(法法55③)。

(2) 適用関係

上記の改正は、令和5年1月1日以後に開始する事業年度から適用される。

10. その他

(1) 環境負荷低減事業活動用資産・基盤確立事業用資産の特別償却

農林水産業の持続可能性を確保する観点から、環境と調和した生産活動に取り組もうとする農林漁業者等を後押しすることを目的として、環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律の制定に関し、設備投資に対する税制上の支援措置が創設された(措法44の4)。

(2) 地方拠点強化税制の見直し

地方拠点強化税制について、次の表のとおり見直しが行われた上で、適用期限が2年延長された。

(3) 農林水産物・食品の輸出拡大に向けた措置の創設

農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律の改正を前提に、青色申告書を提出する法人で同法の認定輸出事業者であるものが、同法の改正法の施行の日(令和4年10月1日)から令和6年3月31日までの間に、輸出事業用資産の取得等をして、その法人の輸出事業の用に供した場合には、5年間30%(建物及びその附属設備並びに構築物については、35%)の割増償却ができることとされた(措法46の2)。

(4) 固定資産の取得等の後に補助金等の交付を受けた場合の圧縮記帳制度の適用の明確化

次の制度について、固定資産の取得等の後に国庫補助金等の交付を受けた場合等の取扱いが法令上明確化された(法法42他)。

■ 国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入制度

■ 工事負担金で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入制度

■ 非出資組合が賦課金で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入制度

■ 保険金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入制度

■ 収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例

(5) その他の租税特別措置等

その他の租税特別措置等について、次のとおり適用期限の延長及び内容の見直し等が行われた。

グループ通算制度

連結納税制度は、令和2年度税制改正により、令和4年4月1日以後開始事業年度につきグループ通算制度に改組されたが、その適用開始に当たっての最終の手直しが行われ、投資簿価修正等について一部見直された。

1. 投資簿価修正制度の見直し

(1) 見直しの概要

通算子法人の通算グループ離脱時に、その離脱子法人の株式を保有する各通算法人において、離脱子法人株式の投資簿価修正をするに当たり、離脱子法人株式の帳簿価額とされる金額(離脱する通算子法人の簿価純資産価額)にその資産調整勘定対応金額等を加算できる特例が設けられた。グループ通算制度における投資簿価修正を行うと過年度に支出した買収プレミアム相当額の損金算入機会が失われる場合があり、経済界からの税制改正要望が強まったため、これに対応したものである。

改正前のグループ通算制度における投資簿価修正の基本的な考え方は、離脱子法人への投資簿価を、その中身である離脱子法人の簿価純資産価額で測るものである。具体的には、通算グループから通算子法人が離脱する場合、その株式等を保有する通算法人において、その帳簿価額が離脱子法人の簿価純資産価額×保有割合に等しくなるように、投資簿価を修正することとされている(法令119の3⑤、119の4①)。

この投資簿価修正を行うと、通算子法人株式を外部譲渡した場合に、株主である通算法人において計上される譲渡損益は、当該通算子法人における資産・負債の含み損益相当のみになる。

そのため、過年度に業績を期待してプレミアムを付けて買収した子法人について、結果的に業績が上がらず、投資簿価がその中身に比して高くなっているような場合に、当該投資簿価修正を行うと、その投資簿価が簿価純資産に等しくなるよう株式帳簿価額が修正され、株式譲渡損がほとんど計上されない結果になる点が問題となっていた。

そこで、過年度に支出したプレミアム相当分(資産調整勘定対応金額等)の概念を導入し、その金額について投資簿価に加算できるよう、改正が行われることになった。

なお、当該措置については、連結納税制度からグループ通算法人に移行したグループの連結開始・加入法人についても対象となることとされている。

また、対象となる離脱子法人からは、主要な事業の継続が見込まれないことにより離脱等に伴う資産の時価評価制度の適用を受ける法人が除かれる。

(2) 資産調整勘定対応金額等とは

離脱子法人株式の帳簿価額とされる金額に加算できる「資産調整勘定対応金額等」の計算方法は、以下のとおりとされており、その子法人を買収したときの株式取得価額のうち、個別資産・負債の時価を超える金額として算出される。

■ 資産調整勘定対応金額等

=離脱子法人の通算開始・加入前に通算グループ内の法人が時価取得した子法人株式の取得価額のうち、その取得価額を合併対価としてその取得時にその通算子法人を被合併法人とする非適格合併を行うものとした場合に資産調整勘定又は負債調整勘定として計算される金額に相当する金額

⇒非適格合併の合併法人における受入れ処理を転用し、子法人株式取得時の買収プレミアム的な部分を次のように計算することになる

▶ 子法人株式の時価取得が段階的に行われる場合又は通算グループ内の複数の法人により行われる場合には、各通算法人の各取得時における調整勘定として計算される金額×取得株式数割合の合計額

▶ 当該通算子法人を被合併法人等とする非適格合併等が行われた場合には零

▶ 当該措置を適用するかどうかについては離脱子法人ごとに判断し、適用する場合にはそれぞれ全ての取得の時の資産調整勘定対応金額等を加算・減算する必要がある。

◇ ただし、対象株式の取得の時期が古いなどの理由により、当該取得の時における資産調整勘定対応金額等の計算が困難であると認められる場合において、以下の双方に該当するときは、課税上弊害がない限り、当該特例の適用を受けることができる(法基通2-3-21の4)。

  • 当該取得の時において計算される資産調整勘定対応金額等を零とする
  • その後に追加取得した対象株式について各追加取得の時における資産調整勘定対応金額等を計算し、その計算の基礎となる事項を記載した書類を保存する

◇ 計算が困難とした部分に負債調整勘定対応金額が見込まれる場合には、課税上弊害がある場合に該当するとされており、注意が必要である。

(3) 適用要件

当該措置の適用は、離脱子法人の株式を保有する各通算法人の全てが以下の明細書の添付を行い、そのうちのいずれかの法人が書類を保存している場合に限られる(法令119の3⑥、法規27①一)。

■ その離脱子法人に係る資産調整勘定対応金額等について離脱時の属する事業年度の確定申告書等にその計算に関する明細書の添付が必要

■ 計算の基礎となる事項を記載した書類を保存

2. 通算子法人離脱等に伴う資産の時価評価対象の見直し

通算制度からの離脱等に伴う資産の時価評価制度について、時価評価資産から除外される資産から帳簿価額1,000万円未満の営業権が除外され、営業権については帳簿価額を問わず時価評価対象とされる。

国際課税/組織再編

1. 外国法人に対する過大支払利子税制の適用範囲の見直し

(1) 概要

外国法人について、過大支払利子税制(対象純支払利子等に係る課税の特例)は、恒久的施設帰属所得の計算においてのみ適用することとされていた。今般の改正により、外国法人の法人税の課税対象とされる次に掲げる国内源泉所得に係る所得の金額の計算上も本制度が新たに適用され、適用範囲が拡大されている(措法66の5の2⑧)。

■ 恒久的施設を有する外国法人に係る恒久的施設帰属所得以外の国内源泉所得

■ 恒久的施設を有しない外国法人に係る国内源泉所得

この結果、外国法人において過大支払利子税制の適用対象となる所得は、下図の緑枠内(現行)に水色枠内(改正により追加)を加えたものとなる。

2. 子会社株式簿価減額特例の見直し

子会社からの配当と子会社株式の譲渡を組み合わせた租税回避を防止するための措置(子会社株式簿価減額特例)について、次の見直しが行われた(法令119の3⑩二)。なお、子会社株式簿価減額特例の制度の全体像については、下記リンク先の解説を適宜参照。

リンク:子会社からの配当及び子会社株式の譲渡を組み合わせた国際的なスキームへの対応 ~令和2年度税制改正:国際税務最新(Japan Tax Newsletter 2020年9月1日 デロイト トーマツ税理士法人ウェブサイト)

(1) 適用除外要件(特定支配日利益剰余金額要件)の見直し

1) 概要

子会社株式簿価減額特例は、①内国株主割合要件、②特定支配日利益剰余金額要件、③10年超支配要件、④金額要件のいずれかを満たす場合には不適用とされる。このうち、特定支配日利益剰余金額要件について、以下2)の要件を満たす場合には一定の調整計算3)が認められることとなった。

2) 要件

① 子法人の対象配当等の額に係る決議日等前に最後に終了した事業年度(以下「直前事業年度」)終了の日の翌日からその対象配当等の額を受けるまでの期間(以下「対象期間」)内にその子法人の利益剰余金の額が増加していること

② 対象期間内にその子法人の株主等がその子法人から受ける配当等の額に係る基準時のいずれかが、直前事業年度の終了の日の翌日以後であること

③ 一定の書類保存要件を満たすこと

3) 内容

特定支配日利益剰余金額要件の判定式について、下記の②の方法によることが認められる(任意適用)。

(2) 適用回避防止規定(適用除外基準を満たす子会社を経由した配当等を用いた適用回避に対するもの)の適用の緩和

1) 概要

子会社簿価減額特例においては適用回避防止規定が設けられている(法令119の3⑭)。この適用回避防止規定には、①合併・分割型分割を用いた適用回避スキームに対応するものと、②適用除外基準を満たす子会社を経由した配当等を用いた適用回避スキームに対応するものの2つがあるが、本改正では、②の規定(以下「本適用回避防止規定」)に関連し、必ずしも子会社簿価減額特例の適用回避につながらないと考えられるケースについてその適用の緩和が行われた(法令119の3⑭二)。

2) 改正内容

次のいずれかに該当する場合には、本適用回避防止規定は適用されないこととされた。

① 対象配当等の額に係る基準時以前10年以内に子法人(下図S社)との間にその子法人(S社)による特定支配関係があった法人(以下「孫法人」)の全て(A社)がその設立の時からその基準時まで継続してその子法人(S社)との間にその子法人(S社)による特定支配関係がある法人(①において「継続関係法人」)である場合

② 次のいずれにも該当する場合

(ア) 親法人(P社)と孫法人(B社)との間に、孫法人(B社)の設立の時からその孫法人(B社)から子法人(S社)に支払う配当等の額に係る基準時まで継続して親法人(P社)による特定支配関係がある場合

(イ) その基準時以前10年以内に孫法人(下記B社)との間にその孫法人(B社)による特定支配関係があった法人の全て(C社)がその設立の時からその基準時まで継続して孫法人(B社)との間にその孫法人(B社)による特定支配関係がある法人(②において「継続関係法人」)である場合

3) 適用関係

上記改正は、令和2年4月1日以後に開始した事業年度において受ける対象配当等の額について適用される(改正法令附則6⑤)。 

3. みなし配当の計算方法等の見直し

(1) 概要

みなし配当の計算方法等について、次の見直しが行われた(法令23①四、法令8①十八、119の9①一)。

① 資本の払戻しに係るみなし配当の額の計算の基礎となる「払戻等対応資本金額等」は、その資本の払戻しにより減少した資本剰余金の額を限度とされる。資本金等の額の計算の基礎となる「減資資本金額」についても同様。

② 種類株式を発行する法人が資本の払戻しを行った場合における、みなし配当の額の計算の基礎となる「払戻対応資本金額等」その資本の払戻しに係る各種類資本金額を基礎として計算することとされる。資本金等の額の計算の基礎となる減資資本金額についても同様。

(2) 改正の趣旨

利益剰余金と資本剰余金の双方を原資とする、いわゆる混合配当については、法人税法上、その全体をまとめて「資本の払戻し」として取り扱うこととされており、資本剰余金を減少した金額を基にプロラタ計算した金額が税務上の資本金等の額に対応する金額として取り扱われ、それを超える金額については利益積立金の配当(みなし配当)として取り扱われる。

払戻法人の税務上の利益積立金がマイナスの場合、資本剰余金を減少した金額を超えて税務上の資本金等の額が減額される結果となる場合があり、これについて令和3年3月11日最高裁判決では、法人税法の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効と判断された。

これに対応し、混合配当についての税務上の資本金等の額の減少額について、資本剰余金の減少額を上限とするよう改正が行われた。

資本払戻し法人側の処理(資本金等の額と利益積立金額の減少)についても、同様の改正が行われた。

(3) 過去の申告分についての取扱い

令和3年10月25日に国税庁のウェブサイトに「最高裁判所令和3年3月11日判決を踏まえた利益剰余金と資本剰余金の双方を原資として行われた剰余金の配当の取扱いについて」が公表されている。これによると、本改正と同様の取扱いが過去に遡って適用されることとされており、納税者の状況により国税通則法の規定に基づき期限内であれば更正の請求を行うことが可能である。

4. 法人事業税において損金算入の対象となる外国法人税額等の範囲の明確化

外国税額控除の適用を受け法人税の所得計算上は損金不算入となる外国法人税額等について、法人事業税の所得等の計算上損金の額に算入する場合において、外国法人税を課されたことを証する書類を保存していない等の理由により法人税額から控除できない金額等は法人事業税の所得等の計算上、損金となる金額に含まれないことが明確された。

以 上

本記事に関する留意事項

本記事は皆様への情報提供として一般的な情報を掲載するのみであり、その性質上、特定の個人や事業体に具体的に適用される個別の事情に対応するものではありません。また、本記事の作成または発行後に、関連する制度その他の適用の前提となる状況について、変動を生じる可能性もあります。個別の事案に適用するためには、当該時点で有効とされる内容により結論等を異にする可能性があることをご留意いただき、本記事の記載のみに依拠して意思決定・行動をされることなく、適用に関する具体的事案をもとに適切な専門家にご相談ください。

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