Posted: 09 Sep. 2022 2 min. read

web3とは何か?企業はどう向き合うべきか?

-加速するデジタル技術の先にある世界を見据え、今何をすべきかに関する洞察-

「web3でビジネスがどう変わるか?」これを問う企業が急増している。AIやDX同様にバズワード化しつつあるweb3であるが、まずはweb3を語る際に不可欠な2つの技術要素について触れておきたい。1つはBlockchainであり、もう1つはCross Realityである。

 

Blockchainはご存じの通り分散型データ管理を基盤技術とし、それによって暗号通貨やNFT、DeFiなど新たなサービスが次々と世に生み出されている。一方のCross Realityは、カメラやセンサー等のユーザー接点デバイスの進化、画像処理や通信高速化が生み出すVR(仮想現実)やAR(拡張現実)技術により加速する仮想と現実の融合であり、これらを取り込みながら高次元のデジタル利活用空間を実現するメタバースプラットフォームが続々と生まれている。

<参考:web3を形成する技術トレンド>

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Blockchain技術の根底にある思想は「Decentralized非中央集権」であり、旧来の中央集権的なデータ・情報管理を前提としたシステムやプロセスがこの技術により刷新されていくであろう。一方のCross Reality技術の根底にはユーザー体験の高度化があり、これは他ユーザーやデジタルサービスとの「Connected 結合・融合」の高次元化の追求に他ならないといえる。

 

ちなみにDeloitte内部においてもBlockchain技術の内部適用の検証を行ったり、メタバースの取組みを試行する取組みを進めている。一例として、日・米・英のリスクアドバイザリーおよびコンサルティング事業法人が運営の中心となりバーチャル環境を展開し、イベントや研修の実施など、社職員のクロスボーダーコラボレーションの可能性を検証している。アクセス端末やネットワークといった「インフラ面」、アバターでの会話力、バーチャル環境リテラシーなど「マインド面」、何より新しい価値をどう創出していくかの「ユースケースデザイン面」で多くの学びを得ていると感じる。新しい技術の適用に際して、戦略や目的を明確にすることは重要であるが、一方で「習うより慣れよ」でまず試してみる姿勢も重要だと感じる。それによりテクノロジーと自社が向き合うべき課題について体感することが可能となり、多くの学びが得られるからである。

 

<参考:Deloitteでの利用風景>

 

さてweb3に話を戻すと、web3とは正にBlockchainやCross Realityという技術に後押しされる、”Decentralized”や”Connected”のトレンドが重なり合い、化学反応を伴いながら新しいデジタル世界が創造される領域であると捉えている。

 

web Xの歴史に目を向けると、ユーザー体験で見た場合、wwwの黎明期であるweb1は”Read”、SNSが勃興したweb2は”Write”, “Communicate”であったといえる。来るweb3はユーザー自身がBlockchainによりトークン化された様々な価値を所有・交換し、Cross Realityがその繋がりを多次元化する”Own”, “Join”の時代といえる。暗号通貨やNFTなどデジタル資産のOwnと、DAOやVR / AR技術による様々なコミュニティへのJoinが掛け合わさることで、組織活動の在り方もトップダウン型から個人主体の自律・分散型を念頭に置いた対応が必要になるであろうし、企業の顧客戦略もweb3を織り込んだものへ適用していくことは避けられないだろう。

 

実際のところ、web3には現状はまだ厳密な定義はなく、各々の解釈の自由が認められている領域であるようにも思える。とはいえ、この1、2年で試験運用などを経て運用を本格化していく企業が増えてくることは間違いないだろう。web3はまだ黎明期で、成功事例が未だ限られている領域であり、企業としての取組みは未だ様子見とする場合が多いだろう。しかしながら、これを変革の好機と捉えて、戦略的にweb3要素を段階的に取り入れるのは決して早すぎることはない。本連載では、web3の取組みを先行するケースを紹介するとともに、世界がどのように変化していくかを考察していく。